第22話 お爺ちゃん、密輸に挑戦する
「視聴者の皆さんこんにちわ! 彼方達のチャンネルへようこそ!」
「今日は土曜日だからお昼から配信です」
「今日も1日よろしくおねがいします」
翌日、学校が午前中で終わった彼方達は昼から配信を始める。
「今日はタスケン星系にあるバベルステーションの探検です!」
「表通りは目がチカチカするほど派手で明るいですね」
「何か面白いアイテムやクエストがあるといいな」
彼方、鈴鹿、ノエルが中心に配信は進んでいき、バベルステーションを探索する。
因みに源三郎は彼方達に呼ばれるまでカメラに映らない位置から3人を見守っている。
「私達プレイヤーがアクセスできるのはここ商業エリアと下層部の2つ。まずは商業エリアを探索するね」
町歩き系の動画のように彼方達3人がメインとなってバベルステーション商業エリアを探索する。
「ステーションマーケット以外にもお店があるのは珍しいね」
バベルステーションはアルファケンタウリにあったステーションと同じく総合ロビーエリアに端末があり、ミッションやマーケットにアクセスできるが、それ以外にもNPCのベンダーがいる店舗タイプの店もある。
「ステーションマーケットと違って、店舗は専門店って感じですね。宇宙船の装備を売ってるところは宇宙船装備のみと言う感じで」
「下手なステーションより品揃え凄いよね。お値段もだけど」
鈴鹿やノエルが言うようにバベルステーションの店舗は専門店になっており、品揃えは豊富だった。
「あっ、ここ密輸系のスキルチップ売ってる!!」
何件か店にはいっては商品一覧を見て騒いでいた彼方達。
スキルチップの専門店で彼方が密輸系のスキルチップを見つけて興奮する。
「このスキルチップをセットすることで受けられるクエストやアクセスできる場所が増えるだって!」
「これは買うしかないね」
「まずは密売と隠蔽のスキルチップから試してみましょう」
行方不明になった宇宙船を探す探索ミッションをクリアして資金に余裕があった彼方達は密輸と隠蔽のスキルチップを購入して早速セットする。
源三郎も密輸のやり方に興味があったので同じように購入する。
「なんかクエストが発生した!?」
「ええっと、バベルステーション下層部にあるアフターライフと言うクラブにいけだって」
「私達入れるのでしょうか?」
源三郎達が密輸系のスキルチップをセットするとクエストが発生する。
クエスト内容はここバベルステーション下層部にあるアフターライフと言うクラブで密売人を見つけろと言うもの。
「とりあえずそのアフターライフに行ってみようよ」
彼方がそう言うと、ステーション中央にあるエレベーターで下層部エリアへと向かう。
「うわぁ………」
エレベーターが下層エリアに到着して扉が開いた瞬間、彼方が引き気味の声を漏らす。
バベルステーション下層部は一言で言うとスラムだった。
積み上げられたごみ山、スプレー落書きだらけの壁、酔いつぶれたのか薬中か寝そべって動かない人々。
通路にはモヒカン頭や全身刺青だらけのいかにもアウトローな感じの人が銃を片手に獲物を物色するように源三郎達を見ている
「お爺ちゃん、前歩いて」
「お願いします」
「何かあったら守ってくれるよね?」
彼方達3人は源三郎の後ろに隠れて背中を押す。
「あいよ」
源三郎は臆した様子もなく堂々と歩き、その後ろを彼方達が身を縮めて進んでいく。
結局こちらを物色していたアウトロー達はそう言う演出てしかなかったのか、源三郎達にちょっかいはかけてこない。
クエストマーカーに従ってスラムのような下層部を進んでいくと、急に道が綺麗なエリアに足を踏み入れる。
「ここ、ゴミもないし、壁に落書きもない」
「路上で寝てる人もいませんね」
「でもこっちを見てる人は増えたような?」
急に綺麗なエリアになったことに彼方達3人は戸惑う。
更にクエストマーカーに従って道を進んでいくとアフターライフと書かれた電光看板と踊る男女の巨大ホログラムが目立つクラブにたどり着く。
アフターライフの入り口には黒服のボーイと武装した用心棒がいて来店客をチェックしている。
「見かけない顔だな」
「いまさっき到着したばかりだからな。ここは紹介なしの一見さんは駄目かい?」
源三郎達も列に並んで順番を待っていると、黒服が話しかけてくる。
「いや、ここはクレジットさえ持っていれば来る者拒まずだ。ただ、シニアや子供割引はないぜ?」
黒服のボーイはそんな軽口を言いながら源三郎達を店に通す。
アフターライフ内部に入るとまず薄暗く細長い通路が見える。
両サイドには等間隔でソファーが置いてあり、何人か寛いでいたり、酒を飲んでいる。
「うるさっ!?」
「これは………かなり騒がしいですね………」
「そう? こんな感じだと思うけど」
細長い通路を通り抜けてドアを開けると、全身にぶつかってくるような重低音、大音量のクラブミュージックが襲いかかってくる。
彼方と鈴鹿には騒音にしか聞こえないのか両手で耳を塞ぎ、ノエルは逆に身体でリズムを刻む。
アフターライフの店内は目がチカチカするほどフラッシュがたかれ、スモークで足元が見えない。
店の中央は円形のダンスホールになっており、客達がクラブミュージックにあわせて踊っている。
ダンスホール中央にはお立ち台があり、店側の妖艶な衣装のダンサーがポールに絡み付きながら激しく踊り、DJが客を盛り上げる。
「さて、目的の人物は………あそこか」
クエストマーカーはアフターライフの壁際にあるボックス席の1つに延びている。
「クレジットが稼げる特別な仕事が欲しいのかい?」
ボックス席に近づくと、1人の男性が酒を飲んでおり、源三郎達に声をかけてくる。
スーツ姿で一見真面目そうに見えるが、それが源三郎には逆に怪しく見える。
「ああ、そうだ」
「まず船を見せて貰おうか」
源三郎が同意すると、男は船を見せろと言ってくる。
「彼に船のスペックを見せますか?」
「頼む」
源三郎達がどうやってNPCに船を見せればいいのか戸惑っていると、サポートロボット達が同意を求め、同意するとスーツ姿の男のブレスレットにでーたが転送される。
「おいおい、どいつもこいつも偽装用の格納庫やスキャンジャマー搭載してないじゃないか。この仕事は初めてか?」
スーツ姿の男は源三郎達の船を見てオーバー気味に驚く振りをする。
「せっかく来てくれたんだ。まずはこいつをレオン星系にあるプラザステーションのボイスと言う男に渡せ。小遣い程度だが金は稼げる」
スーツ姿の男は一つのデータストレージを渡してくる。源三郎達がデータストレージを受けとると、ミッションが発生して目的地であるレオン星系にいけと表示される。
「あと、クレジットに余裕があるならここで装備を整えろ」
男がブレスレットを操作すると、オプションクエストとして密売装備を整えると言うのが発生し、バベルステーション下層部にあるとあるエリアにクエストマーカーが表示された。
「話は以上だ。仕事が終わって装備を整えたらまたこい。もしくはマーケットでは売れないものを手に入れたらもってこい」
スーツ姿の男はそれだけ言うと酒を飲み始め、源三郎達が話しかけても同じ台詞しか言わない。
「仕方ない、密売装備を売ってくれる店にいくとするか」
「そうだね」
「ドキドキしますねえ」
源三郎達はクエストマーカーに従って密売装備を売ってくれる店に向かう。
「なんか寂れてるね………」
「こんなところに船の装備を扱うお店があるの?」
新しいクエストマーカーの場所は下層部にある閉鎖された採石用の搬入エリア。
放棄されたリフトや錆びたコンテナ、不法占拠して暮らしているホームレスっぽい人ぐらいしか見るものはないように見えた。
「迷子か? ここには観光するものなんてないぞ」
クエストマーカーの終着点は大きなコンテナが積み上げられたエリア。
コンテナの前ではホームレス達がたむろしており、源三郎達の姿を見ると追い払うように声をかける。
「アフターライフでここにいけば特別な船の装備が手に入れられると聞いたんじゃが?」
「………ブレスレットのアクセスに同意しろ」
源三郎がアフターライフでの出来事を言うと、ホームレスの一人がブレスレットを操作する。
「あいつの紹介か………クレジットはもってるんだろうな」
源三郎のブレスレットにアクセスしたホームレスが手を上げて合図を送ると、クレーンが動いてコンテナの一部を持ち上がり、コンテナの壁の向こうには船を改造隠しドッグが現れた。
「こいつが改造のリストだ」
「高っ!?」
源三郎達は宇宙船に施せる改造リストを見るが、どれもTR2の戦闘ミッション数回分の報酬額並みの値段だった。
「今はやめとくよ」
「なんだ、買わないのか。気が変わったらいつでもこい」
手持ちが全然足りなくて源三郎達は購入を諦める。
「この後どうしようか?」
「うーん、何かストーリークエスト無いか探さない?」
「そうですね、密輸ミッション以外にも何か無いか探索してみましょう」
「なら一旦アフターライフに戻ってみぬか? あそこなら何かイベントかクエストあると思う」
「じゃあ、それで」
源三郎達は一旦アフターライフに戻ることにした。
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