第20話 お爺ちゃん、ゴブリンにリベンジする


「あれがゴブリンか」

「すごい数ですね」

「というか、多くない?」

「どうやらミッションを受けた人数×10機といったところか?」


 TR2のゴブリン退治の戦闘ミッションを受けた源三郎達がミッション目標宙域に到着すると、源三郎1人の時よりも大量のゴブリンがポップする。


「ノエル!」

「任せて!!」


 彼方が叫ぶと、ノエルが操縦するミサイル船のケレンに搭載されたミサイルが次々と射出されていく。


「花火みたいですね」

「ゴブリンはシールドもってないし、HPも低いみたい」


 ミサイルがゴブリンに命中していくとまるで無数の花火のように爆発が起きて宇宙を照らす。


「ジャミングドローン展開します」


 鈴鹿が操縦するホーネットの下腹部部分からアンテナに足が生えたようなドローンが射出されていく。

 ジャミングドローンが展開されると編隊を組んで移動していたゴブリン達の列に乱れが現れ、ゴブリン同士ぶつかり合ったり、なにもない方向に攻撃したりする。


「彼方いっきまーす!!」


 彼方はアフターバーナーを点火してゴブリンの群れに近づくと、シューティングスターに搭載されたレーザーでゴブリン達を破壊していき群れを突き抜ける。


「うーむ、船の相性が悪かったのか、このミッションはチーム前提の難易度だったのかのう?」


 数が勝るゴブリン達を彼方達が次々と倒しているのを見て、一方的に遠距離からやられてた源三郎は複雑な気分になる。


「お爺ちゃんも突っ込んで!」

「あいよ!」


 大きく弧を描いてUターンしてサイドゴブリンの群れに突っ込む彼方。

 彼方からの発破を受けた源三郎も悟堂のアフターバーナーを点火して突っ込む。


「おりゃあああーっ!」

「うおおおおっ!!」


 彼方のシューティングスターがゴブリンの隊列を乱し、源三郎の悟堂の剣がゴブリンを両断し、盾で叩き潰し、オートタレットが撃ち落としていく。


「ミサイルロック完了! 彼方とお爺さんはゴブリンから離れて!!」

「了解!」

「うむ!」


 彼方のシューティングスターと源三郎の悟堂が離脱すると雨あられのようにミサイルが降り注ぎゴブリン達を駆逐していく。


 ノエルのミサイルシャワーで粗方片付けたが元々母数の多いゴブリン達はまだまだ健在だった。


「ドローンの稼働時間がそろそろ限界なので帰還させます。皆さん、ゴブリン達の反撃に気をつけてください」


 鈴鹿のホーネットに帰艦していくジャミングドローン達。

 混乱していたゴブリン達が徐々に落ち着きを取り戻し、編隊を組んで遠距離からのレーザー攻撃を仕掛けてくる。


「うひゃあっ!? 一撃は弱いけど、狙いが正確すぎる」

「塵も積もればって感じでダメージがヤバい」

「ドローン再稼働にはまだまだ時間がかかります! 皆さんなんとか耐えてください!!」


 いくつかのグルーブに別れて編隊を組んだゴブリン達が彼方達に攻撃を仕掛ける。

 彼方のシューティングスターはその機動力で避けていくが、ゴブリン達は体当たりしたり、集中砲火したりと徐々に範囲を狭めて追い込み、回避範囲を狭めていく。


「ああもうっ! 纏わりつくな!!」


 ノエルのケレンはミサイルしか攻撃手段がなく、一定の距離に近づかれると攻撃手段を塞がれて逃げることしか出来ない。


 鈴鹿は離れていた事とジャミングドローンを使っていただけなのでヘイト値は比較的低いのか余裕はある。


「ノエル、今行く!」

「お願いします!」

「ちょっ!? お爺ちゃん、私はっ!」

「彼方はもう少し耐えてくれ。ノエルの範囲ミサイルが優先じゃ」

「むーっ! もうちょっと頑張る!!」


 源三郎もゴブリン達の攻撃を受けてシールドが削られながら剣と盾とオートタレットを駆使して迎撃していき、ノエルに纏わりつくゴブリン達を駆逐していく。


「粗方片付けたから、わしは彼方の助力に向かう。ノエルも迎撃できる武装した方がいいかもな」

「おっけー! 今回の報酬でミサイル以外の兵器なんか積む」


 ノエルに纏わりつくゴブリン達を粗方片付けると、源三郎は彼方の救援に向かう。


「うりゃー! お返しだっ!!」


 散々ゴブリンにやられてフラストレーションが溜まっていたのか、ノエルはそう叫ぶとケレンに搭載している全てのミサイルポッドが展開してミサイルを発射していき、ゴブリン達を宇宙の藻屑に変えていく。


「おじーちゃーん、はやくー!!」

「任せろっ!」


 彼方が操縦するシューティングスターの背後にゴブリン達がくっつき、攻撃を受けて悲鳴をあげる。


 源三郎が操縦する悟堂が彼方とゴブリン達の間に割って入り、剣や盾を振り回して叩き落とし、アサルトアンカーを突き刺してジャイアントスイングの要領で振り回して別のゴブリンにぶつける。


「ドローン充電完了しました! 展開します!!」


 鈴鹿のホーネットからジャミングドローンが再度展開されたことでゴブリン達の動きが阻害されて、勝負に決着がついた。


「アーマーにまでダメージが入ってる~」

「こっちもだよ。ゴブリンの戦闘バランスおかしくね?」


 特にゴブリン達の攻撃を集中的に受けたノエルと彼方が愚痴る。


「鈴鹿のドローンが無かったら下手すれば誰か撃墜か全滅していたかもしれんのう………」

「ほんと鈴鹿の船のチョイス最高!」

「お役に立てて幸いです。ですが、私個人では攻撃能力がなかったので皆様とのチームワークが功をなしたと思いますよ」

「でも結構ジャミングとかクラウドコントロール大事かも?」


 源三郎が鈴鹿のドローンを誉めると、鈴鹿は照れながら皆の功績だと述べる。


 彼方達の配信コメント欄では鈴鹿のドローン戦法の有用性を考察していた。


「とりあえず一旦修理のために帰還するね。その後はリクエストにあった探索ミッションに挑戦しまーす、お楽しみにっ!」


 戦闘ミッションを終えた彼方は配信視聴者に報告して宇宙ステーションへと戻る。


「それじゃあ、ミッションを選ぼうか」


 船の修理を終えた彼方が探索ミッションを選ぶ。

 探索ミッションの内容は何処其処の星系で空気のある惑星見つけろとか、惑星にある植物を指定数調査しろ等々。

 各ミッションには必須スキルが掲載されていて、そのほとんどが調査系スキルだった。


「あ、これ面白そう!」


 彼方がチョイスしたのは聞いたことのない星系で行方不明になった宇宙船の調査だった。

 必須スキルがスキャニングのみだったので難易度も低そうだ。


「えーっと、ヘルクニア星系って何処だろう?」

「アルファケンタウリ星系の近くにはないですね………」


 ミッションを受けた彼方達はスターマップを表示してミッション目的地を探す。


「なんだか腰が痛くなりそうな名前じゃの」

「それはヘルニアじゃ?」


 一緒にスターマップを凝視して探してる源三郎が腰を叩きながら呟くとノエルと配信視聴者達がつっこむ。


「あった!」

「てか、とおっ!?」

「ソロモン自由同盟の国境にある星系ですか」

「そこだと連邦軍では捜索できないよねえ」


 スターマップとにらめっこし合うこと数分、目的のヘルクニア星系の場所を見つけるが、そこはソロモン自由同盟と地球連邦との境界線だった。


「とりあえずヘルクニア星系まで行ってみよう!」


 ヘルクニア星系の場所を確認した源三郎達は修理を終えた宇宙船に乗ってヘルクニア星系へワープしようとするが………


「ワープドライブの出力と燃料が足りなくて一直線に迎えないね」


 アルファケンタウリ星系からヘルクニア星系までかなりの距離があり、今源三郎達が搭乗している宇宙船では一回のワープでは向かえなかった。


「何処かの星系のステーションで燃料補給しないとダメみたい」

「何処にステーションがあるかはスターマップではわかりませんねえ」


 彼方達のサポートロボットが途中ステーションを中継してワープ燃料を補給してくだいと伝えてくる。


 スターマップでは星系の名称だけで、直接現地に飛ぶまではどんな星があるのか、ステーションがあるのかは不明。


「え? タスケン星系にステーションがある?」


 彼方達が困っていると、配信視聴者の一人がスパチャを添えてヘルクニア星系に近いタスケン星系にステーションがあるとコメントで教えてくれる。


「あ、ここまでならギリギリ行ける!」

「しゃしゃまるさん、スパチャとステーション情報ありがとう~!」


 彼方がスターマップでワープルートを調べれば、メンバー全員がワープ距離ギリギリでたどり着けることが判明する。

 ノエルがスパチャコメントをしたアカウントの人の名前を呼んでお礼をいうと、早速タスケン星系へとワープする。


「タスケン星系は採掘資源が豊富な星やアステロイドベルト帯が多く、銀河戦争時代は地球連邦とソロモン自由同盟両勢力がその資源を求めて争いました」


 タスケン星系にワープアウトすると、唐突にサポートロボット達がタスケン星系について解説始める。


「バベルステーションは空洞化した小惑星を再利用したステーションです。国境に近いことから様々な無法者集団が無計画に増改築拡張を続けて、内部は迷路化しています」


 タスケン星系にある宇宙ステーションの名前はバベルはサポートロボットのロボが解説するように、金属小惑星にバベルの塔を連想するような違法な増改築で歪になったタワー型のステーションが突き刺さっていた。

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