第19話 お爺ちゃん、ゴブリンと戦う


「まだ彼方達が帰ってくるまで時間があるし、悟堂でミッション受けてみるか」


 メタボーマンと別れた源三郎は戦闘ミッションを受けて彼方達がログインするまで時間を潰すことにした。


「おや? TRが2になっとる」


 ミッションボードで受けられるミッションを確認すると、いつの間にかTRが2になっていた源三郎。


「ん? ロボや、このゴブリン退治とはなんじゃ?」

「ゴブリンとは戦争時に使用されたドローン兵器の1つで、現在野生化して深刻な問題になっています」


 TR2のミッションでゴブリン退治と言うミッションを見つけた源三郎は一瞬表記バグか何かかと思い、ロボに質問すると、ロボはゴブリンについて説明する。


「リアル社会の地雷問題みたいな感じかの? どんな兵器だ?」

「自立型で味方信号のない宇宙船を無差別に襲います。問題化している理由は襲った船の残骸で自己修復、自己拡張、自己増加を行うことです。また1機見かけると30機はいると言われ、広範囲に生息しています」

「台所のGか何かか?」


 ゴブリンの性能を語るロボの話を聞いて、源三郎はGのようなイメージを受ける。


「まずはいつも通り海賊退治で慣らしてから挑戦してみるかの」


 源三郎はTR1の戦闘ミッションにある海賊退治を受注してミッション目的地に出発する。


「エンジンも新調したからなかなか速いの」


 メタボーマンと相談してエンジンなど足回りを強化した悟堂は更に速さを増し、財布の中身もかなり軽量化に成功した。


「パイレーツシップを捉えました」

「よし、戦闘開始!!」


 目的の宙域に到達すると悟堂のレーダーがミッション対象のパイレーツシップを捕捉する。


「先手必勝じゃ!」


 アフターバーナーを稼働させて一気に距離を詰める源三郎と悟堂。

 パイレーツシップも自分達の攻撃範囲に入った源三郎が操縦する悟堂に向けてレーザーを発射する。


「なんのっ!」


 源三郎は姿勢制御用のサイドブースターを噴射させて回避したり、グラップラーアームが持った盾で防御する。


「こりゃ、楽じゃ!」


 オートタレットは攻撃範囲に入ったパイレーツシップに向けて自動で攻撃を開始する。


「まずはお前じゃ!」


 近接攻撃範囲に入ったパイレーツシップの1機にアサルトンカーを撃ち込むと、シールドを貫通して機体に突き刺さる。


 アンカーのロープが巻き上げられ、強引に引き寄せられたパイレーツシップをグラップラーアームにもった剣を振り下ろす。

 剣での攻撃が命中すると、パイレーツシップのシールドを一瞬で破壊し、船を両断する。


「うむ、中々の威力じゃ! ぬおっ!?」


 ほぼ一撃で倒せたことに源三郎は満足するが、残り2機のパイレーツシップの攻撃を受けて悟堂のシールドが減退する。


「お返しじゃ!」


 攻撃を受けた源三郎は大きくカーブして残りのパイレーツシップとの距離を詰め更にもう1機を袈裟斬りして破壊する。


「オートタレット1門じゃ牽制にしかならんのっ!」


 オートタレットは3機目を攻撃しているが未だにシールドが削りきれておらず、源三郎の言う通り牽制にしかなっていない。


「くうっ!!」


 アフターバーナーと姿勢制御用のサイドブースターで強引に向きを変えてパイレーツシップ3機目を通り抜けると同時にパイレーツシップが二つに割れて爆発する。


「ふーむ、ソロだと多数相手にはしんどいか?」


 パイレーツシップとの戦闘を振り返り源三郎は髭を弄りながら反省点を出していく。


「次はゴブリンに挑戦してみるか」


 ドロップ品を回収した源三郎は宇宙ステーションに帰還すると、ゴブリン退治のミッションを受ける。


「ゴブリンを発見しました。敵はこちらを認識しております」

「いや、数多いって!!」


 ミッション目的宙域に到着すると、唐突にポップするゴブリン達。

 その姿は鉄骨やフレームなど宇宙船の廃材を寄せ集めした機械のみの虫みたいな外見だった。


 レーダーで捕捉できる範囲だけでも10機は越えており、一斉にこちらに向かってくる。


「ぬううっ! しっ、シールドが持たんっ!!」


 ゴブリン達は遠距離攻撃能力があるのか、源三郎の攻撃範囲外からレーザーを次々と撃ち込んでいき、悟堂のシールド残量がごりごりと減っていく。


「シールド消滅しました」

「こりゃかなわん! 撤退じゃ!!」


 悟堂とゴブリンは相性が悪いのか一方的に削られていき、シールドが消滅してアーマーHPが削られていく。

 反撃しようにもゴブリンまでの距離は遠く、オートタレットも届かない。


 悟堂が持っている盾は一方向しか攻撃を防げず、囲むようにバラけて四方八方から撃たれると遠距離攻撃を持たない悟堂は案山子の的でしかない。


 源三郎はアフターバーナーを起動して戦闘宙域から一気に離れる。


 幸いゴブリンは足が遅いので、アフターバーナーを展開した悟堂のスピードには追い付けず無事に撤退できた。


「ふう、ひどい目にあったわい」


 戦闘宙域を脱出してゴブリン達が追いかけて来ないことを確認した源三郎はほっと一息つく。


「アーマーHPの修理費いくらかかるやら………TR2ミッションは一筋縄ではいかんの」


 アーマーHPの残量を確認しながら源三郎は愚痴る。


「お爺ちゃん、ログインしたよー」


 宇宙ステーションに帰還して、悟堂の修理をしていると彼方からビデオチャットが送られてくる。


 ゴブリンにやられて不機嫌ぎみだった気分も孫娘の顔を見れば吹っ飛んだのか目尻が垂れて笑みになる源三郎。


「へー、そんなことあったんだ。じゃあ、新しい宇宙船のお披露目のあとはお爺ちゃんの仇討ちしようよ!」

「わしまだ死んどらんぞ」


 ログインした彼方達と合流した源三郎はゴブリンとの戦いを伝えると、彼方が仇討ちを提案する。

 源三郎はジト目で彼方にツッコミ、鈴鹿とノエルは二人の漫才を見て笑っている。


「その前に買い物だね。パイロットスキルとか宇宙船関連のスキルチップも充実させたいし」

「それでは配信は買い物など終えてからがよろしいかと」

「んじゃそうするね」


 ノエルと鈴鹿の提案を聞いて彼方は配信時間をいつもより遅めの時間から開始すると告知。

 そこから彼方達3人はスキルチップや宇宙船の装備を買い始める。


「おーい、そろそろ配信時間じゃぞ?」


 ベンチに座って彼方達の買い物を見守って源三郎はリアルの時間を確認して声をかける。


「えっ、嘘っ!?」

「購入した装備品を早く宇宙船に搭載しましょう」

「ええっと、買い忘れないよね?」


 買い物に夢中になっていた彼方達は時計を確認してあわてて買い物を切り上げて購入したスキルや宇宙船の装備をセットしていく。


「ゴホン………皆さんこんばんわ、彼方です! 今日もギャラクシースターオンラインの配信をしていきたいと思います」


 彼方は配信用の撮影カメラを準備すると軽く咳払いして笑顔を作り配信の挨拶をする。


「今回は前回のストーリークエストで手に入れた宇宙船のお披露目をしたいと思います。せっかくなのでお爺ちゃんの仇討ちもかねてTR2の戦闘ミッション、ゴブリン退治を受けたいと思います」

「いやだから死んでないって、ちょっとボコられて逃げただけじゃから」


 彼方がお爺ちゃんの仇討ちというと、源三郎がカメラに映るように入り込んで生きてるとアピールする。


「ゴブリンというのはこのギャラクシースターオンラインの世界の野生化したドローンで、敵味方関係なく襲ってるらしい」


 コメント欄ではゴブリンと言う単語に反応した視聴者達が質問を書き込み、源三郎がゴブリンについて説明する。


「それじゃあ、早速ミッションを受けてきまーす」


 ある程度ゴブリンについての説明を終えると彼方達はTR2のゴブリン退治ミッションを受ける。


「ミッション宙域に行く前に私達の船を紹介します! まずはノエル!!」

「わっ、私からっ!? 私が選んだのはケレンと言うミサイル船。船自体にミサイルロック補助機能があって、多数の敵を同時にロックできるの」


 ノエルが搭乗するケレンの見た目はサーフボードみたいな平べったい宇宙船。

 多数のミサイルポッドを内装しており、集団戦ではかなり力を発揮できる。


「鈴鹿ちゃんの船よろしくっ!」

「はい、私の船はホーネットと呼ばれるドローン戦闘特化です。船自体の戦闘能力は自衛レベルですが、搭載したドローンによって戦闘も補助もお任せください」


 鈴鹿が搭乗するホーネットはその名前の通り蜂の形をしており、下腹部から無数のドローンを射出する。


「次はお爺ちゃん!」

「わしか? わしのはグラップラーシップの悟堂。みた通りアームがあり、こんな風に物を持って攻撃ができる」


 グラップラーアームに握られた剣で素振りしてアピールする。


「最後に私! 私の船はシューティングスターっていう高い運動性能とスピードに特化した強襲離脱型! これで戦場をかき回すぞー!」


 彼方が搭乗するのは流線型の美しいフォルムの宇宙船で、装甲と武装は少ないが回避能力が高い。


「この新しい宇宙船でお爺ちゃんの仇討ちだー!」

「おーい、じゃから死んどらんぞー!」


 彼方は天丼ネタのように仇討ちと連呼し、源三郎がツッコミをいれる。

 そんな漫才を繰り広げながら源三郎達はゴブリンがいるミッションエリアへと向かった。

 

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