第18話 お爺ちゃん、試運転する


正式サービス四日目、源三郎はいつものように食事を済ませてゴミ出しなど家の用事を終えると、ギャラクシースターオンラインにログインして、クエスト報酬で手に入れたグラップラーシップの試運転を行っていた。


「ふむ、この悟堂というグラップラーシップは船同士の近接戦闘を想定してバリアよりアーマーの方が厚いのか」


 グラップラーシップ悟堂の見た目は、十字架のような形の船体に二本のアームががあり、宇宙船サイズの剣と盾をもつ。


 船のステータス画面を表示すると、悟堂の説明文には宇宙船同士の近接戦闘を想定していると書いてあり、HDUに表示される各種パラメーターを見ればアーマー値がシールド値よりも多いのがわかる。


「近接戦を想定しているだけあって、スピードと旋回力は中々じゃな」


 源三郎は悟堂を操縦して、ステーション近くの宙域を飛び回る。


 スピードや旋回力はチュートリアルクエストで手に入れたアメンを上回っており、源三郎としては悟堂の方が操縦しやすく感じる。


「武器はシップブレードとシールドとアサルトアンカーのみか………潔いほど近距離特化じゃな」


 悟堂の武器はアームが握る剣と盾、船の中心部が射出されるアサルトアンカーと呼ばれる相手の船にアンカーを突き刺し、アンカーが外されるまで一定の距離から相手が離れないようにする物だった。


「ふむ………ロボや、船の装備スロットに種類があるが説明してくれんかの?」

「はい、ご説明します。スロットにはウェポン、シップ、センサー、アイテムの4種類があり、船によってそれぞれのスロット数が変わります」


 源三郎が悟堂のステータス画面に表示されるスロットについてサポートロボットのロボに質問すると、ロボが説明を始める。


「プレイヤーが生産スキルで船を製造すると、市販品より基本性能やスロット数が増える可能性もあります」

「そう言う違いがないと作る意味があまりないからのう」


「まず、ウェポンスロット。こちらは船に装備できる武器の数です。本来はスロットの数だけ装備出来るのですが、グラップラーシップは少々特殊です」

「うん? どういうことじゃ?」


 ロボはウェポンスロットについて説明をするが、ここでグラップラーシップが特殊と追記する。


「グラップラーシップはまずアームでウェポンスロットを1つ使用しますが、右手と左手に持った武器などはスロットに換算されません」

「なるほど、手に持ったとして扱われるのじゃな」

「その認識であっています」


 ロボはグラップラーシップの特殊性について説明する。


「悟堂の場合、ウェポンスロットは4つです。現在はアーム、アサルトアンカー、トラクタービームで3つ埋まっています」

「ふむ、悟堂はあと1つ追加武装させることが出来るのじゃな」

「その通りです」


 源三郎が悟堂のウェポンスロットを確認すれば、ロボがいうようにスロット3つが搭載している武器のアイコンで埋まっている。


「次にシップスロットですが、ここはエンジンやシールドやアーマーなど船を運行するのに必要な装備が該当します」

「悟堂のシップスロットは全部埋まっているから追加は出来ず、既存の装備を組み換えるぐらいか?」

「その通りです」


 悟堂のシップスロットは少なく、エンジン、シールド、アーマーの3つで全てのスロットが埋まっている。


「次にセンサースロットですが、敵を感知する距離やミサイルのロック、ジャミングなどレーダーに関連します」

「こっちはレーダーのみで、スロットには余裕があるの」

「注意して欲しいのですが、ウェポンスロットにミサイルを搭載している場合、センサースロットにミサイルロック関連の装備を搭載しないと機能しません」

「それはやらかしそうじゃのう………」


 ロボはウェポンスロットのミサイルと、センサースロットのミサイルロックの関連性について注意する。


「最後にアイテムスロットですが、こちらは宇宙船に関する消費アイテムの搭載数になります。船を修理するリペアキット、センサーを騙すダミーバルーンなどが該当します。説明は以上となります」

「ふむ、だいたい理解したと思う」

「わからない時は遠慮なく質問してください」


 ロボから各種スロットについて説明を受けた源三郎は悟堂の試運転を終わらせてステーションに戻る。


「ふーむ、船の装備も色々あるのう………」


 源三郎はステーションマーケットで宇宙船装備を物色する。

 無駄に種類が多く、どれがいいのかよくわからず髭を弄りながら画面とにらめっこを続ける。


「うん? フレンドからのテキストメッセージ?」


 源三郎が宇宙船の装備をどれにするか悩んでいると、フレンドからテキストメッセージが送られてきましたとお知らせが表示される。


「メタボーマンさんか、何の用じゃろ?」


 孫娘の彼方達はまだ学校で、他にフレンドで誰がいたかと確認すると、採掘ミッションで護衛したメタボーマンさんからだった。


 メッセージの内容は暇ならまた採掘ミッションの護衛をして欲しいとのこと。


「そういえば、メタボーマンさんは生産メインとかいってたのう………ちと相談してみるかの」


 源三郎は護衛を承諾し、ついでに船の装備についても相談したいと返事を返せば、メタボーマンからすぐに返事が届き合流する。


「ミッション前に時間作ってくれて悪いのう」

「いいって、源三郎さんが強くなれば採掘が安全に出来るしな」


 源三郎は総合ロビー中央にある噴水でメタボーマンと合流する。


「で、近接特化のグラップラーシップだっけ? ステータス見せてくれるか?」

「どうやるんじゃ?」

「チーム組んで、情報公開設定を開示にしてくれ」


 源三郎はメタボーマンに言われるままチームを組んで悟堂のシップステータスを見せる。


「潔いほど近接特化だな。スロットの空きも1つだし………源三郎さんはパイロットスキルや宇宙船武器のスキルもってるか?」

「いや、まだもっとらんの」


 メタボーマンは悟堂のシップステータスを見てパイロットスキルなどを聞いてくる。


「プレイヤー自身の射撃の腕前は?」

「得意とは言えんのう………」

「うーん………となると、俺のお勧めはオートタレット系だな」

「オートタレットとはどんな武器じゃ?」


 メタボーマンはあれこれ源三郎に質問してオートタレットという武器を勧めてくる。


「射程距離範囲内にいる敵を自動的に攻撃してくれる武器だ。デメリットは威力が低いのと、ジェネレーターの残量とか関係なく範囲内に敵がいたら撃ち続けるから、シールドの回復速度とかに気を付けないといけない」

「ほう、悪くない武器じゃの」


 メタボーマンはオートタレットの性能について説明をする。


「源三郎さんが悟堂をメインにするなら下手に手動で狙い続けるより、射撃はオートタレットに任せて距離を詰めることに専念したほうがいいかなと思ったんだが、どうだ?」

「ふむ、確かにそっちのほうがわしの性にあってる気がする。マーケットで探してみるかの」


 メタボーマンのお勧めを聞いて源三郎はオートタレットを搭載することを心に決める。


「なんなら俺が作ってやろうか? スキルは低いから市販品に毛が生えた程度の性能だが」

「作れるなら頼んでもいいかの?」

「だいたいこの値段でどうだ? 市販品よりは安いぞ」

「ならそれで頼む。支払いはどうやれば?」

「トレード申請するから同意してくれ」


 メタボーマンはそう言うと端末を操作してオートタレットの製造し、トレード申請をする。


「助かる」

「こういうやり取りやりたくて生産メインでやってるからな」


 トレードを完了させると、源三郎は悟堂にオートタレットを搭載する。


「クレジットにまだ余裕があるなら船も改良したらどうだ?」

「何がいいかのう?」

「近接特化だから、エンジンやアフターバーナー強化して少しでも敵に近づけるのがいいんじゃないか? あとはシールドとアフターバーナー関連で容量か回復速度の早いジェネレーター」


 メタボーマンはかなりゲームに関する知識があるのか源三郎の悟堂強化にあれこれアドバイスをする。


「せっかくの時間を相談に使わせてすまんの」

「こういうのも楽しいし、MMOの醍醐味の1つでいいんだよ。それに源三郎さんが強くなって護衛をしてくれれば今後は安心して採掘出来るし、もちつもたれずだよ」


 気がつけば相談や買い物、悟堂の強化に熱中して採掘ミッションを受ける時間がなくなってしまった。


 源三郎が頭を下げて謝罪するとメタボーマンは笑って許す。


「この埋め合わせは必ず」

「そこまで深く考えないでいいって、俺も源三郎さんも長く楽しく遊べるのが一番なんだから。んじゃおちるわ」


 メタボーマンはそう言うと笑いながらログアウトした。


 

 


 

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