第17話 お爺ちゃん、死に戻りする
「お爺ちゃん、今どこ?」
赤いクリーチャーと戦っていたはずなのに、気がついたらシェルターキャンプにいた源三郎。
何が起こったのか戸惑っていると、ビデオチャット画面が表示されて彼方が話しかけてくる。
「今シェルターキャンプにいるんじゃが………何が起きたんじゃ?」
「お爺ちゃん、死んじゃったんだよ」
「いや、わしはまだ死んどらんぞ?」
いきなり孫の彼方に死んだと言われてぎょっとする源三郎。
「リアルじゃなくてゲームキャラのお爺ちゃんが! あの溶解液持続ダメージがあって相討ちみたいな感じになったの」
源三郎の誤解を解くようにゲームキャラのと告げる彼方。
「ああ、じゃからクローニング機械の前にいたのか………」
彼方からクリーチャーとの戦いの顛末を聞いた源三郎は自分がなせクローニング機械の前にいるか理解する。
「特に問題ないなら早くこっち来て。お爺ちゃんが倒れた場所にお爺ちゃんの持ち物とか落ちてるから」
「うむ、すぐに向かう」
ビデオチャットを終了すると源三郎は大急ぎで彼方達と合流する。
「おかえりー」
「お帰りなさいませ」
「死んだけど問題なかった?」
「特に問題ないの」
源三郎は自分が落とした荷物と赤いクリーチャーからのドロップ品を回収する。
「こやつからレア等級のブラストハンドガンが出てきたの」
「おー、おめでとう」
赤いクリーチャーはボスかレアエネミー扱いだったのかドロップ品のレアリティは全体的によく、源三郎はレア等級の武器を手に入れる。
「ふむ、熱線銃でレジェンダリー効果は相手を炎上させて持続ダメージか」
「おー、悪くないね」
源三郎はレアドロップ品のデータをカメラに撮しながらレジェンダリー効果を解説する。
「それじゃあ、先に進むかの」
「GO! GO!」
クリーチャー達からのドロップ品を回収した源三郎達は氷のトンネルを進んでいく。
「………なんじゃこりゃ………」
「うぇっ………」
氷のトンネルを通り抜けてるとついにホットラボの最深部にたどり着いたが、そこはクリーチャー達の巨大なハイヴになっていた。
天井や壁は粘液が凝固されたような物に覆われ、所々に卵が張り付いており、そのいくつかの卵から殻を割ってあのクリーチャーの幼虫が産まれる。
「同族を食べてる!?」
「ここは氷に覆われた生命のない惑星じゃからな……そりゃ餌を求めて間引きも含めてキャンプをしつこく攻めてくるはずじゃ」
卵から孵ったばかりのクリーチャーに大人サイズのクリーチャーが群がりバキバキと音を立てて貪り屠られ、またその幼虫を食べた成虫のクリーチャーも上空から突如現れた巨大な節足に貫かれ、天井につり上げられるように連れていかれる。
「これはわしらで対応できんぞ………」
源三郎が巨大な節足に貫かれた成虫のクリーチャーの行方を追いかけた源三郎の視線の先には女王種と思われる卵管から次々と卵を排卵している宇宙船サイズのクリーチャーが張り付いていた。
女王種の姿が配信用のカメラに捉えられると、コメント欄では無理ゲーとかバランス考えろ!などコメントが滝のように書き込まれていく。
女王種を確認した源三郎達のクエストタスクが【ここから脱出して報告しろ】に更新される。
「よかった、戦わなくてすむみたいだね」
「でも、お約束ならこっちに気づいてとかありそう」
彼方が戦わなくて済むと分かってホッとしていると、ノエルがボソリと呟く。
それがトリガーになったのか、ハイヴを徘徊していたクリーチャー達が一斉にこちらに気づく。
「ノエルさん、ちょっとお話があります」
「まって! お願い、話聞いて!!」
鈴鹿が笑顔でノエルに話しかけるが、声色はとても冷たいと源三郎は感じた。
ノエルは必死に首を振って鈴鹿に言い訳しようとする。
「その話は後にして、にげるぞい!」
「退却ー!!」
じわじわとクリーチャー達が距離を詰めてくるのを見て源三郎達は来た道を走って戻る。
其をスタートの合図にクリーチャーの大群が追いかけてくる。
「追い付かれそう!」
「とりあえず射って!」
足の早いタイプのクリーチャーに距離を詰められそうになり、源三郎達は銃を乱射し、追い付いて来たクリーチャー達を迎撃する。
「おおっ! 本当に燃えた!!」
源三郎がブラスターガンを撃ち、熱線が命中したクリーチャーが火だるまになる。
「あそこに災害用のシャッターが!」
排気ダクトまでたどり着くと、またクエストが更新されて、ダクト内に災害時に有毒な空気などを遮断するシャッターを起動するボタンを押せと表示され、クエストマーカーが表示される。
「お爺ちゃん早く!!」
先頭を走っていた彼方が災害用シャッターの起動ボタンを押すと警報が鳴り響き、シャッターがおり始め、最後尾にいた源三郎を急かすように彼方達が叫ぶ。
シャッターの閉じる速度は早く、彼方達の姿も膝下しか見えなくなる。
「うおおっ! 間に合えーっ!!」
源三郎は力を振り絞って全力で走り、閉じかけるシャッターにスライディングで飛び込む。
源三郎が通り抜けたと同時にシャッターは完全に閉じて、追いかけていたクリーチャー達が勢いよくシャッターにぶつかっていく音が響く。
「さっさと離れるぞ」
「うん!」
源三郎達は急いで氷のトンネルを通り抜けてシェルターキャンプへ向かう。
「君達無事だったか」
源三郎達がシェルターキャンプに戻ると、今回のクエストをくれたアルファケンタウリの宇宙ステーションの連邦兵士がいて声をかけてくる。
周囲ではパワードスーツなどで武装した兵士達が待機しており、シェルターキャンプに避難していた生き残り達が保護されてモノレールに向かっていく。
「やっと編成を終えてこの星まで大急ぎで飛んできたんだ。ここで何が起こったのか報告してくれるかな?」
連邦兵士が報告を求めてくると、源三郎達の視界にテキストウィンドが現れて全部話すか、説得スキルが必要だが報酬の値上げ交渉をする選択肢が表示される。
「誰か説得スキルもっていたかの?」
「ううん、もってないよ」
「取る予定ですけど、今はないです」
「いまいち重要性が分からなくて後回しにしてた」
源三郎が彼方達に説得スキルの有無を聞くが、誰一人として持ってないことが分かると普通に真相を話す選択肢を源三郎は選んだ。
「ご苦労だった。ここは爆破して氷河の底へと放棄するから、君達は自分達の船に避難してくれ」
兵士の返事を聞くと、宇宙船に戻って結末を見るとクエストタスクが更新される。
「あとは爆発を船から見たらクエストは完了かの?」
「ホラー寄りのストーリークエストだったね」
「配信が長引いていますがもうしばらくお付き合いください」
「できれば虫系は事前に告知してほしい」
クエストも終盤に近づいたと思った源三郎達がほっと一息つきながら船へと戻る。
宇宙船で惑星から離れると、源三郎達の宇宙船の10倍はありそうな戦艦が数隻、惑星を囲んでいた。
戦艦の主砲が惑星へと発射されて、あのクリーチャーのハイヴになりかけていた研究所が破壊されて氷河の底へと沈んでいく。
「フリーパイロットの諸君、君達の活躍がなければ被害は甚大になっていたかもしれない」
戦艦の一隻から通信が来て、源三郎達の宇宙船のメインモニターに将校服姿の中年の姿が映る。
「君達への報酬だが、クレジットとは別に軍の払い下げになるが船を感謝の気持ちとしてプレゼントしたい。リストから選んでくれるか?」
将校が手元のパネルを操作すると、源三郎達の宇宙船モニターに報酬の宇宙船の一覧が表示される。
「探索、輸送、戦闘………どれも性能がいいのう」
各種の宇宙船の性能を確認すれば、チュートリアルクエストで貰える船よりも性能はいい。
「私はこの船!」
「私はこちらにします」
「うーん、私はこれかな?」
彼方達はそれぞれ好みの船を選んで確定していく。
「うん? この特殊船はなんじゃ?」
源三郎が船リストを下にスクロールしていくと、特殊船と言う項目が見つかる。
「それね、採掘船とか一部に特化してたり、チームでは強いけどソロでは弱いとかピーキーなのがあるよ」
彼方が特殊船について軽く説明する。
特殊船の一覧を見ればメタボーマンが操縦していた採掘船のアドベンチャーもこの項目にカテゴリーされていた。
「グラップラーシップ?」
「え? 何それ?」
「正式サービスから追加された船だってさ」
源三郎は特殊船の一覧で1つの船を見つける。
彼方は聞いたことのない船種に興味をもち、ノエルが外部サイトで検索して正式サービスから追加された事を教えてくれる。
「船にアームがついており、それで格闘や近接攻撃とかできると書いておるな」
「特殊すぎない?」
源三郎がグラップラーシップの説明を読み上げると彼方がつっこみをいれる。
「武器も搭載されておるな、これにしよう」
「お爺ちゃん大丈夫?」
「これはこれで配信映えするじゃろ?」
源三郎がグラップラーシップを報酬に選ぶと彼方が心配して聞き返してくる。
源三郎は軽くウィンクしながら報酬の受け取りを確定する。
「そうそう、今回の出来事は機密事項にあたる。口外しないように」
「私達配信してるんだけどなぁ………」
源三郎達全員の報酬の受け取りが完了すると、将校は今回のクエスト出来事は機密だと伝えてくる。
将校の話を聞いていたノエルがボソリと配信中だと呟くが、将校はその言葉には反応しない。
「全機帰還せよ。君達もここで依頼完了だ。ご苦労」
将校がそう言うと戦艦が次々とワープしていき宙域から消えていく。
「それじゃあ、いい時間だから配信はここまで。長い間お付き合いありがとうございました」
「宜しければチャンネル登録と高評価宜しくお願いします」
「また次の配信で~」
クエスト完了と同時に彼方達が締めに入り、スパチャコメントのアカウント名を読み上げてお礼をのべたり返信したりする。
「それじゃあ、次の配信は今回の報酬で貰った宇宙船のお披露目で」
「はい、そろそろお風呂の時間なのでこれにて失礼します」
「私も親がうるさいから落ちるね」
彼方が次の配信の打ち合わせをし、3人はログアウトしていく。
源三郎も3人を見送った後にログアウトして、遅めの夕食についた。
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