第16話 お爺ちゃん、真相を知る
「ホットラボに行くのか、死ぬなよ」
シェルターキャンプでの買い物やオプションクエストの消化を終えた源三郎達がホットラボへ向かおうとすると、ラーリスが見送ってくれる。
「ルートが2つあるね」
「直通エレベーターで直接向かうか、非常用階段で行くのか………エレベーターはやめとかない? 絶対途中で止まるとか狭い中で戦うことになると思う」
ホットラボのロックを解除するとクエストタスクが更新されて、エレベーターか非常用階段でいくかルートを決めることができる。
ノエルはエレベーターよりも階段で向かうことを勧めてくる。
「そうですね、私も階段が宜しいかと」
「お爺ちゃんはどっちがいい?」
「ふむ、階段じゃな。エレベーターで襲われたら叶わん」
チームで話し合い、非常用階段でホットラボへ向かう。
非常灯意外明かりのない薄暗い中、カンカンと音を立てて非常用階段を降りていく。
「ひっ!」
「逃げ遅れた研究者か?」
非常用階段を降りていくと、途中の踊り場で死体を見つけ、彼方達が悲鳴をあげる。
「この死体、アイテムが回収できるな………データチップ?」
孫娘達が死体に悲鳴を上げてる中、源三郎が死体に近づくとルートコマンドが表示されたのでアイテムを回収する。
「これは再生できるのか?」
「ユーザー、ブレスレットに再生機能があります」
鈴鹿からデータチップを受け取った源三郎が悩んでいるとロボがアドバイスしてくれる。
「あ、お爺ちゃん、再生するなら皆にわかるように設定して」
「どうやるんじゃ?」
「ブレスレットのオプション項目にあります」
彼方が視聴者にもして欲しいと指示し、源三郎がやり方を聞き返すとロボが答える。
「これか」
源三郎がブレスレットを弄ってデータチップの内容が周囲にもわかるように設定して再生する。
「うわぁ……よくあるパターンだ」
データチップはこの死体の日記になっており、ここで何が研究されていたか、この研究者がプロジェクトや職場にどんな感情を抱いていたかが書いてあった。
「この氷河の底で冬眠状態だった未確認生物を回収して、生態と生物兵器に転用できないか研究していたのか」
「この研究者さんは次期所長を狙っていたが、別人が所長に抜擢されて逆恨み、研究データを盗んでソロモン自由同盟に亡命しようと考えたみたいですね」
「よくあるお約束で盗む際に他の良心的な同僚にバレて、慌てた結果バイオハザード起こして本人は実験クリーチャーに殺されたと」
研究者の日記を読み終えるとクエストが更新されて盗まれた研究データを見つけると言うタスクが発生する。
「とにかく下まで降りてみるかの」
「そうだね、お爺ちゃん先頭お願いね」
更新されたクエスト目標を確認して先に進む源三郎達。
「ここが研究エリアか?」
最下層までたどり着くと、様々な検査機械やサーバー施設にパソコンなどがあった。
「これが解毒薬のデータかな?」
机の上に無造作に置かれたデータチップにクエストマーカーが向かっており、彼方が回収すると解毒薬のデータ回収のクエストが【ドクターにデータを渡す】に内容が更新される。
「肝心のクリーチャーに関するデータはあっちなんじゃが………どうやって行けばいいのかのう?」
メインクエストである盗まれた研究データがある場所向かうようにクエストマーカーが延びているが、途中で通路が崩落しており先に進めるルートがない。
「うーん、秘密の通路とかも無さそう━━━あれ?」
彼方が崩落した通路手前をうろうろして通れそうなルートを探していると、クエストが更新される。
更新されたクエスト内容は【向こう側にたどり着くルートを知ってる人物を探す】と、【ここまでの状況をステーションに報告する(クエストが終了します)】と2つのパターンが表示される。
「クエスト分岐したけど皆どうする? 私は続けたい」
「私は最後までやり通したいです」
「私も、最後までやった方が報酬も良さそうだし」
「わしも最後までやりたいのう」
彼方がチームメンバーにクエストの方針を聞く。
源三郎達全員が続投の意思を示し、ルートを知っている人物を探してシェルターキャンプへ戻る。
「結局クリーチャーは襲ってこなかったね」
「エレベーター動かしてたらどうなったのかな?」
クリーチャーの襲撃を警戒して帰りも階段で戻った源三郎達。
結局襲撃はなくシェルターキャンプに帰還すると【崩壊したルートについて】クエストが更新されて、ラーリス、物資担当、ドクターにクエストマーカーが表示された。
「この3人の誰から聞けと言うことか?」
「じゃあクエスト報告も予てドクターに聞こうよ」
彼方の提案で源三郎達はドクターにクエスト報告に向かう。
「ドクター、言ってたデータはこれ?」
「それだ! 助かった」
彼方がドクターが求めていたデータチップを渡すと、ドクターはブレスレットを弄ってデータを確認する。
「わずかだがクレジットを用意した。受け取ってくれ」
ドクターがブレスレットを操作すると、源三郎達にクエストクリアの報酬が振り込まれる。
「ドクター、ホットラボの奥に続く通路が崩落で通れなかったんだけど、他のルート知らない?」
「………私が言ったと言わないでくれよ。氷山をくり貫いたメンテナンス用の通路がある。多分そこからならたどり着けるかもしれない。あそこだ」
ドクターは周囲を確認して小声で壁際にある通気孔を指差す。
クエストタスクもメンテナンスルートを通ってホットラボ深部へ向かうに更新される。
「それじゃあ、物資担当さんの商品見てから進もうか」
ドクターのクエストが完了したことと、メインクエストのホットラボの進行の確認が取れた源三郎達は物資担当の商品を買いに向かう。
「ドクターと俺の家族助けてくれてありがとうな」
「え?」
物資担当に話しかけようとすると、向こうから話しかけてきて礼を言ってくる。
「毒を受けてカプセルにいた一人が俺の妻なんだ」
「そうだったんだ」
「こっそり値引きしておいた。他の奴にバレないうちに買い物してくれ」
軽い裏設定を暴露しながら物資担当がタブレットを渡してくる。
商品は全体的に10%前後割引されており、彼方達はここで装備を更新する。
「バグキラーのレジェンダリー効果のあるレーザーガンがあったから買っちゃった」
彼方達はカメラの前でハンドガンタイプのレーザーガンを構えてポーズを取る。
「バグキラーは今回みたいな虫系に分類されるクリーチャーに追加ダメージを与えます」
鈴鹿がバグキラーの効果を説明し、ある程度装備のお披露目が終わればメンテナンスハッチを開けて通路を進んでいく。
「道が変わったな」
メンテナンス通路をある程度進むと氷山をくり貫いたトンネルにたどり着く。
申し訳程度の標識と破壊された工業用のライトが放置されており、長い間人が通ってない様子が伺える。
「キシャーッ!」
「むっ? 赤い皮膚のクリーチャー?」
進行方向の通路からクリーチャーが数匹現れるが、その中の1匹の皮膚が赤かった。
「隊長的な存在かな? 多分通常の3倍強いと思うよ」
「彼方、お前いくつだ?」
「???」
赤いクリーチャーを見た彼方が3倍は強いと叫ぶと、源三郎が呆れた顔で年齢を聞く。
ノエルと鈴鹿は元ネタがわからないのか首を傾げており、コメント欄でもネタが古いなどコメントが書き込まれていた。
「皆、まずはバグキラーの効果を確認するよ!」
「はいっ!」
「よーっし!!」
彼方達がレーザーガンを構えて引き金を引く。
キュンと独特の発射音と共にレーザーが発射されてノーマルタイプのクリーチャーが次々と絶命していく。
「うわっ!? 威力凄くない?」
「初期のハンドガンだと5発は当てないと死ななかったですよね」
ノエルと鈴鹿がレーザーガンの威力に驚く。
「よーし、お爺ちゃんは後ろに控えてて。あの赤いのも私がケチョンケチョンにしてやるから」
彼方がそう言って前に出て赤いクリーチャーに向けてレーザーガンを射つ。
「えっ!?」
だが赤いクリーチャーはレーザーが命中しても怯む様子もなく、逆に攻撃を受けてヘイト値が溜まった彼方に攻撃しようと跳躍して襲いかかる。
「彼方っ!」
「お、お爺ちゃん!?」
間一髪源三郎が彼方の前に出てカバーリングに入ってダメージを身代わりする。
「ぬう、防具を新調してもこのダメージか」
赤いクリーチャーの攻撃を受けた源三郎のHPバーは半分近く減っている。
「回復します!」
鈴鹿が咄嗟にメディジェルと言われる回復アイテムを源三郎にぶつけてHPを回復させる。
「キシャーッ!」
「あっ………」
「お前の相手はわしじゃ!」
鈴鹿が回復を行ったことでヘイト値が変更されたのか背中から生えた触手を鞭のようにしならせて鈴鹿を攻撃しようとするが、源三郎が迎撃に入り触手を弾く。
「ふむ、たかがゲームと思っていたが、滾るのう………」
源三郎は腰を落とし、蜻蛉の構えと呼ばれる武器を右肩上段に構える。
赤いクリーチャーも源三郎の強さに警戒しているのか、二本の触手をしならせて威嚇する。
ザリ………ザリ………と摺り足の音を立てて距離を徐々に詰めていく源三郎。
「きぃいいええああっ!!」
「キシャーッ!」
必殺の間合いまで詰めたのか、源三郎が猿叫びをあげて赤いクリーチャーに突っ込む。
赤いクリーチャーは迎撃するように口から溶解液の塊を吐き出す。
「チィィエエエストオォォッ!!」
源三郎は溶解液を回避せず正面から浴び、HPゲージが一気に減っていく。
源三郎はダメージを受けながらも突進の勢いは劣ることなく裂帛の気勢をあげて跳躍し、落下に伴って上段から武器を振り下ろす。
「ギィエエエエ!!!」
赤いクリーチャーに武器を振り下ろすと、クリティカルの文字とダメージの数値が表示され赤いクリーチャーは死体に変わっていく。
「ふう、何とか倒………おろ?」
源三郎が振り返って孫娘達の顔を見ようとすると、視界が暗転する。
「ここは………シェルターキャンプ?」
視界が戻ったかと思うと、源三郎はシェルターキャンプのクローニング機械の前にいた。
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