第15話 お爺ちゃん、生存者と話す
「銃口を向けてすまない、モノレールに何が乗ってるかわからなくてな」
スキンヘッドの黒人が一歩前に出て源三郎達に謝罪の言葉を述べる。
「俺の名はラーリス、ここのセキュリティ部隊の隊長だ。所で君達は何者だ? 我々の救援要請に応じた救助隊か?」
「アルファケンタウリの連邦ステーションから連絡がないから様子を見てきてくれと軍から言われてきたんじゃが、何があった?」
ラーリスと名乗ったスキンヘッドの黒人は源三郎達の所属を問い合わせてくる。
源三郎は依頼を受けてやってきた経由をラーリスに話す。
「先週、ホットラボが何者………いや、何かに襲われた。生存者は研究者のオーラだけだが、未だに意識不明で何もわかっていない」
源三郎はラーリスに研究所で何が起こったのか聞くが、ラーリスも未だにわかっていないと答える。
「こちらに来る途中昆虫系のクリーチャーに襲われたんじゃが、何か知らんかの?」
「こちらも司令部を奇襲されて隊員と外部への通信設備がやられた。正体については俺は宇宙生物学の専門家じゃねえ。わかっているのは酸を吐き出して頑丈で数が多いってことだ」
源三郎は道中で戦ったクリーチャーについても質問するが、ラーリスも正体はわかっていないようだった。
「うーん、宇宙生物学のスキルとるんだったかな?」
「でもアルファケンタウリのステーションマーケットでは売っていませんでしたよ」
「それに何レベル必要かわからないしね」
ラーリスの話を聞いていた彼方が宇宙生物学のスキルを買うべきだったかと呟くと、鈴鹿とノエルが彼方に声をかける。
「もし調べる気があるならこのカードキーでホットラボにいけるぞ」
ラーリスは源三郎達にカードキーを渡して来る。
「それから物資が欲しいならこの後ろの通路を通れば俺達のキャンプ兼シェルターでクレジットで取り引きが行え━━━くそっ! 周囲を固めろっ!!」
「クリーチャーの鳴き声!」
「皆さん、バリケードの所に!!」
ラーリスが物資との取り引きについて話すと、クリーチャーの鳴き声が周囲に響き渡ると同時にクエストタスクがラーリスと協力して襲撃から生き延びろと言うクエスト内容に変わる。
ラーリスと兵士が銃を構えて周囲を警戒し、クエスト内容を確認した彼方達はラーリスに合流するようにバリケードに駆け寄る。
「キシャーッ!!」
「射て射て射てっ!!」
周囲の配水管や通気ダクトを破壊してクリーチャーが現れ、背中から生えた触手をうねらせて威嚇の声をあげて襲いかかってくる。
ラーリスと兵士、そして彼方達がバリケードで遮蔽をとりながら弾幕を貼るが、クリーチャーを倒しても次から次ぎへと穴から這い出てくる。
「キイィィイエェェェイッッ!!」
そんな中1人猿叫びをあげてクリーチャーの集団に突っ込んで行く源三郎。
レーザーブレードスキンのブォンと言う効果音と共に武器を振り回し、クリーチャーを切り裂いていく。
新しい装備とスキルによって強化された源三郎の攻撃はまるで熱したナイフでバターを切るように容易にクリーチャー達を両断し、源三郎自身にヘイトが向くように動き回る。
「お爺ちゃん! グレネード投げるから戻って!!」
「あいわかった!」
彼方が声をかけると源三郎は対峙していたクリーチャーを蹴り飛ばして、その勢いを利用して後方にバク転しながらバリケードに戻る。
「えいっ!」
「それ!」
「このっ!」
源三郎が戻るタイミングにあわせて彼方達の可愛い掛け声と共にグレネードがクリーチャー達の集団に向けて投げ込まれると轟音と共に盛大な爆発が起きてクリーチャー達は全滅し、クエストタスクが【ホットラボを調べる】とオプションで【シェルターで物資を確認する】が表示される。
「ふう、協力に感謝する。あいつらどんなに撃退してもひっきりなしに攻撃してくるからまいってたんだ」
「ん? 何度も?」
「ああ、酷い時は数時間おきだぜ。ホットラボとかのエレベーターを封鎖してからは交代で睡眠と食事がとれるようになったがな」
「ふむ………」
「お爺ちゃん、どうしたの?」
源三郎はラーリスの話を聞いて考え込む。
彼方は源三郎の考え込む姿をみて、様子を聞いてくる。
「いや、ゲームだからかも知れんが………生物なら何度も撃退されたらここを危険な場所と認識して避けそうなんじゃが………」
「さあな、外は文字通り凍りつくほど寒いから暖かい場所求めてやってくるんじゃないのか?」
源三郎は彼方に自分が感じた疑問を述べると、源三郎達の話し声に反応したのかラーリスが持論を述べる。
「これからどうするかの?」
「オプションのシェルターを見に行きたいな」
「そうですね。ステーションで売ってない物もあるかもしれません」
「オプションクリアして追加報酬とか欲しいし」
源三郎がこれからの行動をどうするか聞くと、彼方達はオプションタスクのクリアを提案する。
「ここがシェルターか」
ラーリス達の防衛拠点を通り抜けてシェルターキャンプにたどり着く。
大きな会議室みたいな場所に人と物資が詰め込まれており、研究者と思われる白衣の人達やセキュリティと思われる兵士達がいた。
「見かけない顔だな、救援か?」
「連邦軍から研究所から連絡がないから様子を見に行けと依頼を受けただけだ」
「そうか………もし物資が欲しいならあいつに声をかけろ。仕事が欲しいなら医務室のドクターが仕事を依頼したいそうだ。俺達はここを守ることで手一杯でな。クローン登録するならあそこだ」
源三郎達がシェルターギャンプに足を踏み入れると、セキュリティの1人が話しかけてくる。
源三郎が来訪目的を述べるとセキュリティは物資の売買ができる場所とクエストをくれる人物、そしてクローニングの機械がある場所を紹介して別れる。
「まずはクローニングの登録変更しておくか」
「そうだね。また搬入口まで戻されたらたまらない」
源三郎達はクローニング登録を終えるとシェルターキャンプの中を歩き回る。
「すまんが、よいかの?」
「何か用か?」
源三郎が物資を売ってくれる男性に声をかける。
在庫確認でもしていたのか手にはタブレットをもって積み上がったコンテナの中身を数を数えていた男性は源三郎の方に振り向く。
「物資を見せてくれんかの?」
「………あまり多くは提供できない」
源三郎が物資の売買を求めると、男は手元のタブレットを操作してこちらに渡してくる。
タブレットには販売できる商品の一覧が表示されていた。
「うん? 名前の色が違うのがあるのう? なんか異常に高いし」
「あ、これレアリティが高いやつだ」
商品一連を見ると一部の商品名の文字色が青や紫、金色だったりする。
同じ商品でも青色表記の物は倍近い値段で販売しており、金色は100万単位の値段だった。
横からタブレットを覗き込んだ彼方がレアリティと叫ぶ。
「レアリティ?」
「うん、レア、エピック、レジェンドの3種類があって、同じアイテムでも攻撃力が高かったり、オプションと言う追加効果あったりするよ」
源三郎がレアリティについて聞き返すと、彼方はカメラに向かって源三郎と視聴者にレアリティについて解説する。
「うーむ、ここで物が買えるならステーションで装備更新しない方が良かったかのう?」
「お金貸してあげようか? といちで」
「お断りする」
タブレットを操作しながら源三郎が呟くと、彼方が指でマネージェスチャーしながらといちの利子で貸してあげると言ってくる。
「あんた達、手が空いてるならドクターを手伝ってくれないか? ドクターを助けてくれるなら俺の権限の範囲で割り引いてやる」
お金が無いと言う言葉がトリガーだったのか、物資担当の男性からドクターを助けたら割り引きすると言ってくる。
「ふむ、これは願ったり叶ったりじゃ、早速そのドクターとやらの所にいくかの」
「ドクターならあっちの隔離部屋にいる」
物資担当の男性からドクターがいる場所を教えて貰い、隔離部屋に向かう。
「ここは隔離部屋だ、用がないならすぐに出ていけ」
ドクターがいると言う隔離部屋に源三郎達が入室すると、中で大型の機械を操作していた白衣の中年に怒鳴られる。
大型の機械の回りにはカプセルがあり、中には人が眠っていた。
「人手が欲しいと聞いてやってきたんじゃが」
「セキュリティの奴らやっと人を寄越してくれたか」
最初は目をつり上げてイライラした様子で声を荒げていたが、手伝いに来たと源三郎が伝えると落ち着く。
「その人達は?」
「クリーチャーの毒を受けた。数時間前までは危篤状態だったが、メインフレームが復旧したお陰で持ち直した」
彼方がカプセルの中にいる人達のことを聞くと、ドクターは毒を受けたと答える。
「手伝って欲しいのは閉鎖されたホットラボにある我々の研究データだ。あれがあれば適切な解毒薬を作れる」
「あのクリーチャーが何なのか知っているのか?」
「それは機密事項だ」
ドクターが手伝って欲しい内容を伝える。
ドクターから仕事の内容を聞いた源三郎が質問すると、ドクターは動揺したように視線を反らして答えをはぐらかす。
「うん?」
源三郎がドクターのリアクションを見ていると、視界に【説得スキルがあればドクターから真相を聞き出せます】と言う文章が書かれたテキストウィンドウが表示されるが、説得スキルを持っていないので源三郎は真相を諦める。
「私達これからホットラボに向かうので一緒にとってきます」
「ありがたい、頼んだ」
彼方が手伝いを承諾すると、クエストタスクに新たなオプションとして研究データを回収するが表示された。
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