第14話 お爺ちゃん、クエストの続きを孫娘達とする


「いやはや、採掘船はすごいのう………二人の採掘ミッション合計3回分の納品量を1回で集められるんじゃから」

「その分足は遅いし戦闘は皆無だし、あくまで鉱石の積載量が緩和されるだけだから交易輸送にも使いにくいし、襲われたらほぼ一発アウトのピーキー仕様だからな」


 メタボーマンと共に宇宙ステーションに帰還した源三郎は採掘船のスペックに舌を巻いていた。


「しかし、こんなに貰っていいのかの?」

「いいって、護衛がいないと今回の半分以下も稼げないし、平日のこの時間帯だとなかなかプレイヤーいないし、長時間付き合って貰えもしないからな」


 源三郎はミッションの報酬、パイレーツシップのドロップ品、納品して余った端数のマテリアルまで貰っており恐縮していた。


 メタボーマンからすればリアルの仕事の関係で平日の朝や昼の時間帯しかログインできず、その時間帯に長時間ログインできる源三郎がありがたい存在だった。


「フレンド登録いいか? また時間があったら護衛して欲しい」

「別に構わんが、そんなにマテリアル集めてどうするつもりじゃ?」


 メタボーマンから送られてきたフレンド申請を承諾しながら源三郎はマテリアルを集める理由を聞く。


「俺生産系やるの好きでさ。武器防具船大抵のアイテムの原材料にマテリアル使うから、今のうちに在庫確保しておこうと思ってさ」

「なるほどのう」 


 メタボーマンはマテリアルを集まる理由を源三郎に告げる。


「んじゃ俺これから仕事だから落ちるわ。おつかれー」

「おつかれー。さてせっかくだし生産に挑戦するかの」


 源三郎はメタボーマンを見送った後、生産系のスキルチップと設計図を購入しようとマーケットにアクセスする。


「ぬおっ!? 日本刀の設計図があったが、1000万クレジットじゃと!? 野太刀に至っては5000万!!」


 なにげなしに近接武器の設計図一覧を流し読みしていたら日本刀と野太刀のレシピがあったが、その値段に目が飛び出そうになる。


「ハザードレベルの高い宇宙服も高いのう………」


 今後の惑星探索も視野にいれてハザードレベルの高い宇宙服の設計図も調べると設計図で100万単位だった。


「今は手が届く範囲の設計図で我慢するか………」


 今回源三郎が購入したのは単分子カトラスより性能のいい連邦仕様の超硬度片手剣と、装甲が強化された連邦軍用宇宙服の設計図。


「購入したが、どうやって使うんじゃ?」

「ユーザー、購入した設計図はブレスレットにインストールできます」

「この項目か」


 マーケットで手に入れた設計図の使用方法に悩んでいると、ロボが教えてくれる。


「ほう、あのクリーチャーから手に入れたドロップ品が材料か」


 早速設計図をインストールして、図面を起動するとホログラムウィンドウに製作に必要な材料一覧が表示される。

 その中には今進行中の研究所で倒したクリーチャーから手に入る素材も材料だった。


『お爺ちゃん、いまどこー?』

「ぬおっ!?」


 生産中、ログインした孫娘の彼方からのビデオチャットが唐突に送られ驚く源三郎。


「彼方か、わしは今アルファケンタウリスの宇宙ステーションで装備の生産中じゃよ」

『わかったー! そっちいくねー!!』


 源三郎が居場所を伝えると、彼方はビデオチャットを終了する。


「おじーちゃーん!」

「こりゃ、年頃の女子が不用意に抱きつかない」

「いーじゃん、家族なんだし。それよりも、なに作ったの?」


 5分ぐらいで彼方は源三郎がいるステーションのロビーにやってきて後ろから抱きつく。

 周囲にいた別のプレイヤー達が事案かパパ活かと疑惑の目を向けるが、彼方がお爺ちゃんと呼ぶ声で家族かと疑惑を解く。


 彼方は源三郎の背中に抱きついたまま生産中のアイテム画面を覗こうとする。


「新しい武器と防具じゃよ。大人のわしがお前達の矢面てに立たねばならんからのう」

「あ、新しい装備にアバター付け替えてね」

「いや、もういいじゃろ」


 装備を覗き込んでいた彼方は新しい装備にアバタースキンを付け替えるように指示してくる。

 源三郎は困った顔で遠回しにアバター姿になるのを拒否する。


「だーめ! 配信的にもお爺ちゃんのメタルヒーロースキンははずせないの!」

「仕方ないのう………」


何だかんだで源三郎は孫娘に甘く許してしまう。


「あ、鈴鹿とノエルも来たみたい」


 彼方はフレンドリストを見て、二人がログインした事を確認すると、ビデオチャットでこちらに集まるように伝える。


「彼方とお爺さん、やっほー」

「本日もよろしくお願いします」

「それじゃあストーリークエストの続きをやろう!」


 三人が合流すると彼方が元気に号令をかけて惑星トレビンへと戻る。


「それじゃあ配信するから皆はこっち、お爺ちゃんは装着してそこで待機。呼んだら来てね」

「はいはい………装着!」


 研究所はメインフレームを再起動した時から変わらず、シャットダウンの警報が未だに鳴り響いている中、彼方はブレスレットを操作して撮影用のカメラを呼び出す。


「皆さんこんばんは~! 彼方です!」

「鈴鹿です、本日もよろしくお願いします」

「いえーい、ノエルでーす!」


 撮影開始と共にいつもの3人の挨拶が始まる。


 源三郎もブレスレットを操作して彼方達のチャンネルを視聴すると、コメント欄では普通に挨拶のコメントが流れていく。


「お爺ちゃんもいるよ、お爺ちゃーん!」


 コメント欄でお爺ちゃんは?と質問する人がちらほらといて、それに答えるように彼方が源三郎に呼び掛けて手招

「どうも、源三郎です」

「違う! やり直し!!」

「なっ、何がじゃ!?」


 呼ばれたのでカメラの前にでて挨拶すると、急に彼方からダメ出しを食らう源三郎。


「何の為のメタルヒーロースーツなの! 呼ばれたらヒーローらしくとうじょうしなきゃ! バク転とかさぁ!」

「えぇー………」


 更に無茶振りまでされて戸惑う源三郎。

 配信のコメント欄では源三郎に同情する人もいれば、前回の戦闘を見た人達はそれぐらい簡単でしょと言っている。


「リテイクするよ、お爺ちゃーん!」

「はいよー!」


 少し距離を取った源三郎は彼方に呼ばれると連続前転から最後に空中捻りからヒーロー着地をしてカメラに視線を向ける。


「おー、お爺ちゃん凄い!」

「本当」

「惚れ惚れするキレのある動きです」


 源三郎のスタントアクションでの登場を見て、彼方達は盛大に拍手して興奮したようにはしゃぐ。


 配信のコメント欄でも凄いと誉めてる人もいれば、絶対中の人はアクション俳優かスタントマンで老人じゃないと持論を添えて否定している人がいた。 


「そう言えばお爺ちゃん、RTP値計った?」

「なんかの間違いか500と出た」

「はぁっ!?」

「それぐらいないとあの動きは出来ませんよねぇ」


 思い出したように彼方がRTP値の測定結果を聞いてきたので、源三郎は困った様子で頭をかきながら測定結果を報告する。


 ノエルは驚いたような声をだし、鈴鹿は納得したようにうんうんと頷く。

 配信のコメント欄では嘘松など否定的なコメントが多く、次にやっぱり老人がプレイしてない、最後に少数ながらRTP値が500ならあのプレイも納得と書き込んでるコメントもあった。


「さて、雑談はこれくらいにして、前回のストーリークエストの続きやっていきたいと思います」

「前回のお話は概要欄にリンクを張ってますのでお時間のある時にご確認ください」


 彼方と鈴鹿が配信視聴者達に説明しながらメインフレームの人工AIのホログラムに近づく。


「お帰りなさいゲストユーザー。何かご用ですか?」

「連邦軍からの追加依頼であっちの研究所の様子も見たいんだけど」

「申し訳ありません、ゲストユーザーのセキュリティクリアランスでは立ち入りが許可されていません」


 ノエルが氷山側にある研究所へ行きたいと伝えると、人口AIは拒絶する。


「私達正規のパスコードを貰いました」

「確認します………正規パスコード認証しました。メインユーザーはモノレールでリフトステーションにアクセスできます。モノレールは再稼働しています。トラムに搭乗してください」


 彼方が連邦軍から貰ったパスカードを見せるとアクセス許可をもらい、トラムに搭乗する。


「うわぁ、ここで襲撃受けたら逃げ場ないね」

「彼方、フラグみたいなこと言わないで」


 トラムに搭乗した源三郎達はリフトステーションと呼ばれた氷山側の研究所に向かう。


 トラムは氷河の上を移動しており、窓から外の様子を見ていた彼方が不吉な一言を述べて、ノエルがうんざりした様子で周囲を見回しながらツッコミを入れる。


「無事に到着できたな」


 特にクリーチャーからの襲撃などなく、トラムはリフトステーションに到着する。


 リフトステーション内も人気は無く、非常灯意外明かりはなかった。


「殆どの扉がロックされてるね」


 リフトステーションを探索していると彼方が言うように殆どの扉がシャットダウンでアクセス不能となっており開けられない。


 非常用と書かれている扉だけがアクセス可能で進んで行くが、人もクリーチャーも今のところ見かけなかった。


「リフトステーションの人達全滅したとか?」

「それならそれでクエストが更新されるはずです」


 ノエルが全滅の可能性を伝えると、鈴鹿がクエストの変化を根拠にあり得ないと答える。


「まあ、進んだらわかるでしょ! オープンセサミ!」

「っ! 人だ! 双方撃つな!!


 彼方がまた非常用の扉を開けると、扉の向こうには机や植木などで即席のバリケードを構築して銃を構える武装集団がおり、隊長と思われる年配のスキンヘッドが両手を上にあげて、双方に攻撃しないように呼び掛けていた。

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