第13話 お爺ちゃん、RTP値を測ってみた
「えーっと、RTP値を測るには………」
翌日、朝食を済ましてゴミ出しなど家の用事を終えた源三郎は老眼鏡を装備してVR機器の分厚い説明書片手にRTP値の測定方法を調べている。
「まずは測定モードの設定をして………」
何度も説明書を確認しながらVR機器をいじる源三郎。
あまりにも細かい文字に、複雑な操作に投げ出したくなるが、孫娘達と約束したしと必死に操作を続ける。
「あとは中で横になるだけじゃな」
四苦八苦して測定の設定を終えた源三郎はVR機器のカプセルの中に横たわる。
「測定を開始します。そのまま動かないでください」
測定が始まると、モニターに測定中と言う文字が表示される。
「測定完了、ユーザーのRTP値は500です」
「へ? ご、500!? 何かの間違いではないのか?」
測定結果の数値を聞いて源三郎は思わず聞き返す。
500と言えば孫娘の学友が言っていた世界チャンピオンのRTP値に近い数値だ。
「わしのRTP値そんなにあったのか………信じて貰えるかのう?」
測定モードを終えて意外な測定結果に驚く源三郎。
「そう言えばその世界チャンピオンとやらはどんな人なのかのう?」
なんとなく気になった源三郎はRTP値580のプロゲーマーをネットで検索してみる。
「わし、こんな風に動けんぞ」
ネット検索で見つかったのは島に集められた100人が殺し会うバトルロイヤル式のFPSの世界大会の動画。
件の世界チャンピオンはハリウッドのアクション映画のような無駄のない動きで他のプレイヤー達を倒していく。
銃撃すら見えているのか、相手と撃ち合いになっても遮蔽物に隠れることなく自分に向かってくる弾丸だけを避けて、自分が撃った弾丸に相手が当たりに行くような華麗でスタイリッシュなプレイで勝ち抜いていく。
「80も違えば動きも変わるじゃろうて」
世界チャンピオンのプレイ動画を見終えた源三郎はそこまで魅せれるようなプレイは自分には無理だと思い、孫娘達がログインするまでの間にゲームキャラの装備を整えようとギャラクシースターオンラインにログインする。
「さて、まずはスキルチップを買わんとな」
源三郎は宇宙ステーションのマーケットで近接戦闘や防御に回避など戦闘系のスキルチップを幾つか購入していく。
「次はスキルの合成っと………」
購入したスキルチップを合成してスキルレベルを上げていく。
「ふむ………戦ってみないとどう変わったかわからんのう」
メインである近接戦闘は3レベルまであげ、防御や回避などは2レベルまで上げてブレスレットにセットする。
スキルセットした後に素振りなどしてみるが、源三郎はスキル効果による違いが良くわからなかった。
「さて、装備も整えるかのう」
源三郎はまたステーションマーケットで人間用の装備を検索する。
「思ったより商品の種類が少ないのう………他のステーションも巡るべきかな?」
「ユーザー、一定レベル以上の装備は生産のみとなりますのでギャラクシーマーケットなどで探すか、オファーをかけたりしましょう」
「ふむ………どうするかのう?」
正式サービス3日目で生産系のアイテムも数えるほどしかギャラクシーマーケットに出品されていない。
「近接武器は種類が少ないのかの?」
「このステーションでは完品は少ないですが、近接武器も豊富です」
ステーションマーケットでは単分子カトラスより上の近接武器は全く販売されておらず、ほとんど銃ばかりだった。
「ユーザー、設計図を購入してご自身で作ってみてはいかがでしょうか?」
「ふーむ………それもアリじゃな」
ロボの提案を受けて源三郎はマーケットで設計図を検索する。
「設計図は豊富じゃな」
「関連する生産系スキルをセットして作成すると市販より性能が良くなります」
「そうなると………ちと手持ちが足りんのう」
設計図や生産系スキルチップの値段を計算すると予算が足りない。
「まだ彼方達は学校じゃし、戦闘ミッションで稼ぐかの」
源三郎は現実時間を確認して、彼方達がログインするまでまだ余裕があることを髭を弄りながら確認する。
「なあ、あんた。良かったら俺のミッション手伝ってくれないか?」
「うん?」
源三郎が金策に戦闘ミッションを検索していると、隣の端末を操作していたプレイヤーが声をかけてくる。
「あんた声でかいから独り言聞こえてきてよ」
「こりゃすまんの、気が散ったのなら謝罪する」
源三郎が声の主に視線を向けると、中年メタボハゲな外見の男性プレイヤーがいた。
中年メタボハゲの頭上にはメタボーマンと言うプレイヤーネームが表示されている。
「いや、気にしてないよ。それよりもミッションの話聞いてくれないか?」
「ふむ、時間もあるしの。そこで良いか?」
「ああ、いいぜ」
源三郎は噴水近くのベンチを指差し、移動する。
「それでミッション手伝って欲しいとのことじゃが………わし正式サービスから始めた組でのう、どこまで役に立てるか」
「そこまで難しいミッションじゃねえよ。受けたい採掘ミッションの採掘エリアがモブの海賊が多くて護衛が欲しいんだ。俺はアドベンチャーと言う採掘専門の船で行くから足も遅いし、攻撃も防御もほぼ皆無なんだ」
「なるほどのう」
メタボーマンは採掘中の護衛をして欲しいと提案してくる。
「あんたも同じクエスト受けてくれよ。そっちのノルマも俺が引き受けるからよ」
「格納庫の積載量とか大丈夫なのか?」
「元々採掘専門の船は鉱石の重さを10分の1にする特殊能力があるし、シップビルダーのスキルで格納庫を拡張してるから積載量なら中堅輸送船クラスだぜ」
「ほう、そんなことも出きるのか、このゲームは。ならその護衛承った」
「助かるよ」
源三郎はメタボーマンの話を聞いて護衛を承諾すると早速アメンに搭乗して宇宙に出る。
「それがアドベンチャーと言う船か」
「俺の自慢の船さ」
メタボーマンが操縦するアドベンチャーはスフィンクスみたいな形だった。スフィンクスの顔に当たる部分にコクピットがあり、前足部分にマイニンクカッターが2門搭載されている。
「それじゃあよろしく頼む」
「こちらこそ」
メタボーマンからチーム申請が送られ、源三郎は承諾してチームを組むと目的地であるアステロイドベルト帯までワープする。
「ぬお、早速敵か!」
「俺は邪魔にならないように後ろに下がる」
目的地であるアステロイドベルト帯にワープアウトすると、レーダーに敵機の反応と警告音が響く。
メタボーマンのアドベンチャーは戦闘の邪魔にならないように後ろに下がり始める。
「船もいずれは強化せんとなあ」
敵はパイレーツシップが3機。
作戦もなにもなくまっすぐこちらに突っ込んできて正面から襲撃しようとするが………源三郎の戦闘船にとっては驚異ではなくあっという間に撃破していく。
「俺はスキャニングするから、また敵が来たら迎撃よろしく」
「任され━━━ん?」
突如、源三郎が操縦するアメンのレーダーに周囲の小惑星のマテリアル埋蔵率が表示されて戸惑う源三郎。
「どうした? 敵か?」
「いや、スキャニングもなにもしてないのに急に周囲の埋蔵率が表示されて」
「ああ、それは俺のスキャニングスキルの効果だ。チーム組んでると事前に非公開設定とかしない限り、スキャニングなどのデータはチームで共有されるんだわ」
「そうじゃったのか」
源三郎の疑問にメタボーマンが笑いながら答える。
「いい具合の小惑星を見つけたから採掘始めるぜ」
「おおっ! すごい出力だな」
メタボーマンは小惑星の1つに船首を向けると、マイニングカッターを照射する。
チュートリアルで源三郎が使ったカッターよりも出力が大きく、あっという間に資源が枯渇して小惑星がなくなり、別の小惑星に照射を始める。
「わしの方も仕事が来たの」
採掘中のメタボーマンと雑談しながら待機していると、リポップしたのかパイレーツシップが現れたので迎撃に向かった。
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