第12話 お爺ちゃん、無双してメインフレーム復旧する
「ここがメインフレームルームか」
クエストマーカーに沿って研究所の通路を進んでいくと、大小様々な発電設備が置かれた部屋にたどり着く。
「キシャー!」
「ここにもクリーチャーがっ!」
復旧のための操作盤を探そうと源三郎達が足を踏み入れると、昆虫系クリーチャーが機械の隙間や排水溝の蓋を押し退けて襲いかかってくる。
彼方達三人はアサルトライフルで応戦する中、源三郎だけがレーザーブレードスキンの近接武器で応戦する。
源三郎の戦闘方法も独特で、メインフレームルームにあるオブジェクトを駆使して蜻蛉返りや三角飛びなどパルクールをしたり、クリーチャー達を踏み台にして死角から攻撃したり、同士討ちを誘うように蹴り飛ばしたり巧みな足裁きでクリーチャーを翻弄していく。
「彼方のお爺さんって何者? 動きがあり得ないんですけど」
「VRゴーグルでは出せないレスポンス速度ですし、ご本人の身体捌きもスタントマン並みですよ」
源三郎の戦闘を見ていたノエルが驚いた声で彼方に話しかけ、鈴鹿も感嘆の声を漏らす。
配信のコメント欄でも老人の動きじゃないとか、絶対アクション俳優かスタントマンが老人アバターでプレイしているなどコメントが次々と書き込まれていく。
「お爺ちゃんはVRゴーグルじゃなくて、最新型のフルダイブVRカプセルだよ。あと確かなんか古武術の皆伝免許持ってて、昔は警察に武術指導や映画かドラマのアクション指導したり、スタントマンとして出演してたことあるとか言ってた」
「いや、リアルでチートな人じゃん」
彼方がそう言うと、ノエルはあきれた顔で源三郎を見つめる。
鈴鹿も憧れのこもった視線で源三郎の戦いを見つめている。
「これで全部のようじゃな」
「お爺ちゃんおつかれー!」
「お疲れ様です」
「ほとんどお爺さん1人で無双だったね」
クリーチャーのほとんどを1人で倒し、一汗かいたように袖で汗を拭う仕草をする源三郎。
戦闘が終了すれば彼方達3人が労いの言葉を掛ける。
「凄い動きだったけど、お爺さんのRTP値いくつ?」
「RTP値? なんじゃそれ?」
ノエルが呆れた顔で源三郎にRTP値を聞いてくるが、聞きなれない単語に困惑した様子で聞き返す源三郎。
「正式名称はReaction Time Pointと言いまして、どれだけプレイヤーの神経伝達速度が早いのかを表す数値です」
「うん? VR機器のレスポンスとは違うのか?」
「RTP値はプレイヤーからの発信速度、レスポンスは受信してプログラム実行する速度だと思ってくれたらいいかな?」
鈴鹿がRTP値の正式名称を述べて、彼方がレスポンスとの違いをざっくりと説明する。
「一般人の平均が100前後で、プロゲーマーといわれる人は300~500。VRFPSの世界大会で優勝した海外のプロゲーマーで580だったはずだよ」
「どこで測れるんじゃ?」
「ベンチマークみたいにVR機器で測定できるから、ゲーム終わったら測ってみたら?」
そんな話をしながら源三郎達は倒したクリーチャーの死体からドロップ品を回収していく。
コメント欄でも源三郎のRTP値の予想で盛り上がっている。
「どうやって電源を復旧すればいいんじゃ?」
クリーチャーの襲撃を押し返してメインフレームルームで電源を復旧する方法を探す源三郎達。
「あ、ここの端末から復旧できるようですよ」
鈴鹿が壁掛け式のパソコンを見つけて知らせる。
「屋上の施設と地下のメインジェネレータを直接修理するかドローンアビオニクススキルが1レベルでここから直接修理するか選べるのか?」
「あ、お爺ちゃん、このゲームスキルがあればクエストの過程ショートカットとかできるんだよ」
壁掛パソコンを起動するとメインフレームの再起動方法が表示され、直接現地に向かうか、スキルが必要だがここからドローンを派遣して遠隔で修理できるようだ。
「あ、私ドローンアビオニクス持っています」
「なら、頼めるかの?」
「はい」
鈴鹿が手を上げてスキルを持ってることを申告し、遠隔操作で修理を開始する。
「メインフレーム再起動しました」
電子音声が聞こえたかと思うとブウンと機械が起動する音が聞こえて非常灯だけだった室内に明かりがつく。
「こちらは施設管理AIハイダです。あなた方は地球連邦施設に無許可で立ち入りしています。速やかに退去してください」
メインフレームが復旧すると同時に、源三郎達の前にホログラムの女性が現れ退去を命じ、天井からタレットが現れる。
「まっ、まって! 私達ゲストパスコード持ってるよ!!」
彼方が慌てて地球連邦の兵士から貰ったゲストパスコードが刻まれたカードキーをホログラムの女性に見せる。
「スキャニング開始……スキャニング完了。ゲストコードを確認できました。ようこそゲストユーザー。当研究施設は現在シャットダウン中です」
「えっと、私達連邦から連絡つかなくて様子を見てきて欲しいって言われたんだけど、何があったの?」
彼方が見せたカードキーをホログラムの女性がスキャニングしてゲストユーザーであることが確認されると、タレットが天井に収納されていく。
タレットが収納されたのを確認すると、ノエルが来訪目的を伝えて、研究所の現状を問い合わせる。
「当研究施設で行われていた研究内容に関しては機密事項に抵触するため、ゲストユーザーのセキュリティクリアランスではアクセス出来ません。現在施設全域に生命活動中の有害物質による施設内の汚染を確認。暖房空調機能シャットダウンにて排除中」
「つまり寒さや息苦しさで汚染を何とかしようと?」
「その認識であってます」
ホログラムの女性は研究内容については機密事項としか教えてくれなかったが、施設全体がシャットダウンの理由は教えてくれた。
「あ、クエストが更新されたよ」
「このまま施設を調査してシャットダウンの原因を究明するのと、オプションでステーションの連邦軍に報告するというタスクが出来ましたね」
源三郎達が施設の人工AIと会話していると、クエストが更新される。
彼方と鈴鹿が配信視聴者にもわかるようにクエストの更新内容を伝える。
「そろそろいい時間だし、ステーションに戻って報告して今日は終わろっか」
「ふむ、お主らは明日も学校じゃしな」
ノエルがリアルの時刻を確認して落ちようと提案し、源三郎も時間を確認してステーションに帰還することに同意してステーションへと戻る。
「なんだって!?」
アルファケンタウリの宇宙ステーションにある地球連邦エリアでオプション項目である研究所の現状を報告すると、NPCの兵士が大袈裟に驚く。
「うーむ、すぐにでも部隊を派遣するべきなんだが、色々あって編成が滞っているんだ。君達、追加報酬出すから先行部隊として調査を続けてくれ」
報告を受けた兵士はその場でうろうろしながら爪を噛んで悩んでいたかと思うと追加報酬を提案して調査の続行を指示してくる。
「今回はオプションタスクをクリアすると追加報酬が追加されるみたいだね、お爺ちゃん」
「あのままオプションタスクを無視してたら追加報酬貰えなかったかもしれんの」
「それから今回の依頼限定で君達の立場を正規軍にする。これで研究所でもある程度融通は利くだろう」
追加報酬の確約と正規軍パスコードを貰えたことでオプションタスクがクリア扱いになる。
「それじゃあ今日の配信はここまで」
「配信お付き合い誠にありがとうございます」
「良かったらチャンネル登録と高評価お願いします」
彼方達が締めの挨拶をして、スパチャしてくれた個人名を読み上げたりコメントを返したりて配信は終了する。
「皆おつかれー」
「お疲れ様です」
「おつー」
「お疲れさん」
配信を終了すると彼方達は伸びをしながらお互いを労う。
「じゃあお爺ちゃんまた明日。私達に内緒で勝手にクエスト進めたりしないでよ」
「わかっておる」
「あ、できましたら合流迄にRTP値測定してくださると嬉しいです」
「そだね、視聴者さんも気になってそうだし」
「わかった、わかった。低くても文句言わないでくれよ」
軽く明日の予定をミーティングしあい、配信前にRTP値を測定することになった源三郎。
「あの動きで数値低いとかあり得ないよ」
「ないですね」
「ないわー」
RTP値が低かったらと予防線を張る源三郎。
だが彼方達3人は呆れたようなジト目で源三郎を見て数値が低い可能性を否定する。
「ともかく、夜も遅い。さっさとログアウトしなさい」
「はーい、それじゃあおやすみー」
「はい、良い夢を」
「おやすー」
そう言って源三郎達はログアウトした。
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