第10話 お爺ちゃん、孫娘と相談する


「うーん、このゲームの目的かあ………」


 学校が終終わり、ギャラクシースターオンラインにログインした彼方に源三郎はゲームプレイについて相談する。


「たまにいるよね、自由すぎて逆に何をすればいいのかわからない人とか」

「私も彼方さんとノエルのお二方がいなければ何をすればいいかわからなくて戸惑っていたか、そもそもゲームプレイしていなかったかもしれません」


 宇宙ステーションの総合ロビーの一角にカフェテリアエリアがあり、そこで彼方とクラスメイトのノエルと鈴鹿も源三郎の相談に乗って話を聞いていた。


「こればっかりは自分で見つけないとダメだからねえ。まずは出きること全部試してみるとか、お爺ちゃんは私たちが来るまで何してた?」

「取り敢えず彼方に勧められた戦闘ミッション繰り返してある程度お金貯めてたが、何を買えばいいのかいまいちわからなくてのう………」


 源三郎は彼方がログインするまでの間、食事や炊事洗濯の時間以外はログインして戦闘ミッションを繰り返していた。

 クレジットはある程度貯まったが、何を買えばいいのかわからず取り敢えず溜め込んでいた。


「そうだ! お爺ちゃんも私たちと一緒にストーリークエストやろうよ」

「ストーリークエストとはなんじゃ? 端末で受けられるミッションとは違うのか?」


 彼方はいいこと思い付いたように指を鳴らして源三郎に一緒にストーリークエストをやろうと提案する。


「ストーリークエストとは、このゲームのNPCから受けられたり、たまたま訪れた場所で発生するストーリーがあるクエストです」

「ミッションみたいに何処其処いって敵を倒せば終わりじゃなくて、倒した結果物語が進行して真相がわかったりとか色々あるよ」


 源三郎がストーリークエストについて聞くと、彼方達3人がストーリークエストについて説明する。


「ほー、ミッションみたいに単調にならなくて良さそうじゃの」

「私達ベータテストでもストーリークエスト中心にプレイしてたんだ。正式サービスでストーリークエストもいっぱい増えたらしいから、配信でいろんなストーリークエスト紹介していこうって学校で決めてたの!」


 彼方は大袈裟にジェスチャーしながら、ストーリークエストに参加するのを勧めてくる。


「そうじゃな、面白そうだし、わしもやってみるかの」

「じゃあさ、また配信に一緒に出てくれる?」

「構わんが………わしみたいな爺さんが配信に出ても面白くないじゃろ?」


 彼方はまた配信に出演してほしいとお願いしてくるが、源三郎は自分の歳や性別から遠慮しようとする。


「配信映えと言うよりは、ナンパ避けかな」

「ファンの皆様は善意だと思うんですけど、クエスト手伝うなど、少々強引に声かけしてくることがありまして………」

「ファンじゃなくても、女の子三人で遊んでると声かけてくる人多くてさあ………このゲーム、ちょうど4人チーム制だからお爺ちゃんが入ってくれたらそれを理由に断れるの」


 彼方達は苦笑したり困った顔でそんなことを言ってくる。


「昔のネトゲてもそう言うことあったからのう………ワシでどこまで壁になれるかわからんが、そう言うことならやらせて貰うかの」


 源三郎は三人達の話を聞いてナンパ避けを買ってでる。


「それじゃあどのストーリークエストやろうか?」

「取り敢えずアルファケンタウリで受けれるのでいいんじゃないかな?」

「それでは地球連邦軍のストーリークエストなどどうでしょうか? クリアするとTRも上がりますし」


 彼方達3人はどのストーリークエストから始めようか話し合い、鈴鹿が地球連邦軍と言う組織のクエストを提案する。


「あ、それがあったね!」

「彼方のお爺さんもそれでいい?」

「わしは別に構わんぞ」

「それではチームを組んでクエストをくださるNPCの所へ参りましょう」


 源三郎は彼方達3人とチームを組むと共にクエストをくれるNPCの元へと向かう。


「ここから先は地球連邦軍のエリアだ」


 源三郎達がたどり着いたのはアルファケンタウリ宇宙ステーションの一角にある地球連邦軍の区画。

 区画の境界線には屈強なボディアーマーに身を包んだ兵士が歩哨にたっており、源三郎達が近づくと話しかけてくる。


「それじゃあ配信始めるね」


 彼方がそう言うと、ブレスレットを操作して配信用のカメラを呼び出し、撮影を開始する。


「皆さんこんばんわ! 彼方です!」

「鈴鹿です」

「ノエルだよ」


 撮影開始と同時に3人がカメラに向かって挨拶する。


「ほら、お爺ちゃんも!」

「わしもか? どうも、源三郎です」


 源三郎はカメラに映らないように一歩離れて3人の様子を見ていたら、彼方から挨拶するように手招きされて、慌ててカメラに向かって挨拶する。


 コメント欄ではお爺ちゃんキターと喜んでる人もいれば、ジジイ邪魔!とか、男は映すななど否定的なコメントを書き込んでいる人もいた。


「今日は私達とお爺ちゃんでギャラクシースターオンラインのストーリークエストをやっていきたいと思います」

「ネタバレ要素もあるので、純粋にストーリークエスト楽しみたい人はここで配信止めてブラウザバックしてね」


 彼方が配信企画を説明し、ノエルがネタバレ要素があることを告知する。


「今回はアルファケンタウリ宇宙ステーションにある地球連邦軍のストーリークエストを受けてみたいと思います」


 鈴鹿がどのクエストを受けるのか告知して、歩哨中の兵士に近づく。


「君達はフリーパイロットか。何か仕事を探しているのなら1つ仕事を頼まれてくれないか?」


 鈴鹿が近づくと歩哨の一人が話しかけてくる。


「アンタレオス星系にある惑星トレビンにある研究施設との連絡が取れないんだ。上層部は連絡が取れないことに戸惑い、我々現場は編成に手間取っていてすぐ調査に向かえない状態なんだ。そこで君達フリーパイロットが先発隊として研究所の様子を見に行ってくれないか?」


 歩哨が仕事内容をはなすと、源三郎の視界にクエストを受けるかウィンドが表示されるので承諾する。


「助かるよ。これが目的地の座標データと、現地の研究所に入れるゲストパスコードだ」


 ストーリークエストを承諾ると惑星トレビンの座標データを渡されスターマップが更新される。


「それでは早速目的地である惑星トレビンへと向かいまーす」


 彼方達も同じクエストを受け、宇宙船に乗って惑星トレビンへ向かう。


「彼方達もアメンか」


 ステーションから出港すると彼方達の船もチュートリアルクエスト報酬である戦闘船のアメンだった。


 彼方達の船は一緒でもカラーリングや昨日のガチャ配信で当てたデカール等で個性を出していた。


「ワープドライブ起動! 目標は惑星トレビン!」

「チームを組むとメンバー1人が作ったワープゲートに突入することでワープできます」


 彼方がスターマップを操作してワープゲートを発生させると、鈴鹿が配信視聴者に向かって解説をしながらゲートに突入する。


ゲートを潜ればアンタレオス星系宙域にワープアウトし、目的の惑星トレビンを目指す。


「そうそう、惑星をスキャンするとスキャンレベルによっては地層に埋もれている資源や生態系など惑星情報が手に入るからね」


 惑星に着陸する前に彼方が配信視聴者に向かって解説をする。


 源三郎も試しに惑星にスキャンをかけるが、まだスキルレベルが低いために惑星の名前や大気と地球と同じ重力、惑星全土が氷河期ということぐらいしか分からなかった。


「お爺ちゃん、惑星に近づくと自動的に着陸できる場所教えてくれるから、私達についてきて」

「わかった」


 彼方から通信で惑星の着陸方法を教えて貰った源三郎は彼方達の船を追尾する。


「あれが研究所かな? スターステーションがあるからあそこに着陸しよう」


 分厚い雲を通り抜けると、猛吹雪に襲われる。

 吹雪で視界が悪い中、うっすらと遠くに建物が見えた。


 建物は2つあり、巨大な氷の浮島にある施設とその施設とモノレールで繋がっている大陸側の施設。


 スターステーションと言う宇宙船の着陸場は大陸側の施設に隣接するように作られていた。


「うひゃあっ!? ハザードレベルがヤバい!!」


 惑星に着陸して地上に降り立つと、源三郎の視界に『貴方の宇宙服はハザードレベル3に耐えられません。早急に船に戻るか、環境から保護されたエリアに避難してください』と言う警告画面が表示される。


「ユーザー、惑星にはハザードレベル0から3まであります。ユーザーが現在装備している宇宙服はハザードレベル0なので現在の環境に長時間耐えられません」


 サポートロボットのロボも警告してくる。


「皆! 早く施設に!!」


 彼方が叫びながら研究所と思われる施設を指差し、吹雪に逆らうように走り出す。

 施設に近づくとエアロック式の扉があり源三郎達がエアロックを解放して施設の中に飛び込む。


「ふう、助かった~」

「皆さんはこのクエスト受ける時はハザードレベル3の宇宙服など購入してから挑みましょう」


 施設内に飛び込んだ彼方はその場に座り込んで、ヘルメット越しに額の汗をぬぐう仕草をする。

 鈴鹿はカメラに向かってクエスト受注の際の注意を視聴者に向かって話していた。


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