第9話 お爺ちゃん、金策に走る
正式サービス2日目の午前、朝食と洗濯物など家の用事を終えた源三郎がギャラクシースターオンラインにログインする。
「まずは船やスキル強化の為に金策するのがお勧めじゃったな」
源三郎がログアウトした後、孫娘の彼方からゲームをどう進めたらいいかメールでアドバイスが届いており、まずは端末でミッションを繰り返してお金を貯めて装備を強化することと書かれていた。
「ほう、色々あるんじゃのう」
アルファケンタウリ宇宙ステーションの総合ロビーにある端末でミッションを確認する源三郎。
端末に表記されるミッションの数は軽く100を越える。
「ユーザー、ステーションで受けられるミッションには戦闘、輸送、探索、生産、採掘の5種類があります」
ミッション一覧を見ていたらサポートロボットのロボがミッションについて解説を始める。
「戦闘はチュートリアルクエストで行った宇宙船同士、もしくは人間同士の戦闘で、指定対象やグループの殲滅がメインです。またミッションにはTRが設定されており、TRが高いほど難易度が高いです」
「うむ、このTR10なんて軍の艦隊殲滅とかだしの」
源三郎がTRの難易度がどれくらいか見てみるとTR1はアウトローやスペースギャング等雑魚っぽいが、TR5以上から軍隊崩れや傭兵など戦闘訓練を受けた本職が討伐対象になる。
「ミッションは各地のステーションで異なりますので、気に入ったミッションが見つからない場合はステーションを変えるのも手です」
「なるほどの」
源三郎はそう言いながらついでにと輸送など他のミッション内容も確認する。
「輸送ミッションは荷物を受け取って指定されたステーションなどに運ぶミッションです。TRが高いほど貴重品だったり、距離が遠かったり、襲撃が激しかったりします」
「この指定時間と制限時間と言うのはなんじゃ?」
輸送ミッションを適当に選ぶと、ミッション項目に指定時間と言うのがあり、源三郎はロボに質問する。
「輸送ミッションには指定時間と制限時間があります。指定時間は指定された時間より早くミッションを完了するとボーナスが加算されます」
「ほう………こっちの制限時間と言うのは過ぎると報酬が減るのかの?」
「いいえ、ミッション失敗になります」
「ふむ、距離と船の速度を考えないといかんのう………うん? 輸送ミッションには人を運ぶのもあるのか」
「はい、ユーザーの船を客船仕様にしないと受けれません。また内装や提供する食事や娯楽で報酬が変わります」
源三郎が輸送ミッションを流し読みしていると、タクシー的なミッションもあった。
「探索は………なんか難しそうじゃのう」
「探索は指定された惑星や宙域で指定された物質や兆しを調べます。ミッションによっては高性能のレーダーや専門装置が必要です」
他のミッションはどんなものがあるかと源三郎は探索ミッションを調べる。
何処其処の惑星で生命反応を見つけろとか、TRの高いのになると宇宙クジラの群れを見つけろというのもあった。
「生産は指定された生産物を作って納品で、採掘も指定された鉱石を納めればいいのか」
源三郎はミッション一覧を一通り見ると、自分が受けられる戦闘ミッションを見繕う。
源三郎が受けたのはアステロイドベルト帯で採掘者を襲うパイレーツシップの討伐。
ミッションを受託するとクエストジャーナルにミッション内容が表示され、目的地までのクエストマーカーが表示される。
「ふむ、ホワイトフリッパーよりは早いの」
チュートリアルクエスト報酬で貰った戦闘船アメンに乗り換えて目的地まで移動する。
「ユーザー、目標のパイレーツシップです」
ミッション目的地のアステロイドベルト帯に到着すると、レーダーに3機のパイレーツシップが表示され、ロボも警告を出してくる。
「アメンにはミサイルが搭載されていますが、ターゲットをロックしないと追尾しません。ロック数や速度は装備とスキルで変わります」
源三郎が戦闘に入ろうとすると、ロボがアメンに搭載された新たな兵装について解説する。
「わかった」
ロボが解説している間にパイレーツシップも源三郎の存在に気づいたのか襲いかかってくる。
「ミサイルロック完了!」
「発射じゃ!」
パイレーツシップの1機をターゲットスコープに捉えると、ロック完了とロボが報告し、ミサイルを発射する。
アメンの下腹部に搭載されたミサイルランチャーからミサイルが発射されて、推進材の放物線を描きながらパイレーツシップに吸い込まれるように飛んでいき命中する。
「一発では倒せんか」
「敵のバリアがオーバーヒートしました、攻撃のチャンスです」
「うむ!」
2機のパイレーツシップの攻撃を避けたり、バリアで受けたりしながら、アステロイドベルト帯に浮かぶ無数の小惑星を掻い潜り、源三郎はバリアを失ったパイレーツシップを執拗に攻撃する。
「よし、撃破じゃ!!」
「パイレーツシップにロックオンされました! ミサイル来ます!!」
1機目のパイレーツシップを破壊したかと思うと、追いかけてきたパイレーツシップが源三郎のアメンに向けてミサイルを発射する。
「ミサイルアラートとか本格的じゃの! くっ!?」
ミサイルが接近するアラートが船内に鳴り響き、源三郎が感心していると、避けきれなかったのかミサイルが命中して衝撃が走る。
「バリア、60%まで低下しました」
「お返しじゃ!」
源三郎は上昇して大きくUターンして追いかけてきたパイレーツシップの後ろに回り込むと、レーザーを撃ち込む。
「ミサイルロック完了!」
「発射!」
レーザーを受けてシールドが減退していたパイレーツシップはミサイルの直撃を受けて爆発四散する。
「敵残り1機」
「あそこか!」
ロボが残存するパイレーツシップの数を報告すると、源三郎はレーダーに視線を向けて最後のパイレーツシップの位置を探す。
残り1機となったパイレーツシップは戦意を喪失した様子もなく、源三郎が操縦するアメンに向かってレーザーを撃ち込んでくる。
「1対1なら当たらんよ!」
源三郎はレーザーが見えているのか右へ左へ船を動かしたり、近くの小惑星を盾にして回避していく。
「バリアが回復しました」
「仕掛けるか」
そうやって逃げ回ってある間にミサイルやレーザーで減退していたシールドが回復し、攻撃に移る。
源三郎と最後のパイレーツシップはアステロイドベルト帯を飛び回り、互いに後ろをとろうとドッグファイトを繰り返す。
「とった! ミサイル発射じゃ!!」
アメンの性能がパイレーツシップを上回ったのか、背後をとったのは源三郎。
ミサイルロックが完了すると、レーザーを撃ち続けながらミサイルで止めをさし、宇宙の藻屑に変える。
「ミッションクリアです」
「うむ、ドロップ品を回収したら帰還するかの」
3機のパイレーツシップを破壊するとミッション完了扱いになり、クレジットが振り込まれる。
「うーむ、スキルチップはドロップしないか」
パイレーツシップの残骸から回収できたのは雀の涙ほどのクレジットと少量の鉱物資源。
もしかしたらと期待していたが、源三郎はドロップ結果を見てため息をつく。
「そう言えばスキルチップとかいくらするんじゃろう?」
アルファケンタウリ宇宙ステーションに帰還した源三郎はふと思い立って、端末からマーケットを選び、売り出されているスキルチップの種類と値段を確認する。
「量も多いし、1レベルで最低1万クレジットからじゃと!? 先ほど受けた戦闘ミッション10回分はさすがに暴利じゃろ」
マーケットで表示されるスキルチップの種類と値段に源三郎は驚愕して声をあげる。
「メンバーシップ加入でスキル枠100は多いとおもったが、これだけスキルチップの種類が多いと枠少ないかもしれんのう」
宇宙船関連のスキルだけでもマーケットで販売されているだけで50種類もある。
更に生産系や個人戦闘に探索系と数えるのも嫌になるスキルの量だった。
「ふーむ、このゲームで何がしたいか決めないとずっと悩みそうじゃのう………彼方がログインしたら、ちと相談してみるかの」
源三郎はスキルの多さに辟易し始め、ただ認知症予防にいいと聞いただけなので、特にこのゲームがしたかったわけではないのでゲームプレイがめんどくさく感じてきた。
孫娘の彼方がプレイしていなければ多分数日で飽きてフルダイブ式のVRカプセルも使うことなく埃を被らせ他かもしれないと源三郎は思った。
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