第5話 お爺ちゃん、採掘と生産する


「ユーザー、この星系には鉱物が豊富に含まれているアステロイドベルトがあります。採掘をしましょう」


 交易クエストを終えると、チュートリアルクエストは次のタスク【採掘】に進行し、ロボが採掘を勧めてくる。


「採掘するにはマイニングカッターを船に搭載しないといけません。ブレスレットのメニュー一覧から船管理項目を選択してください」

「うむ」


 ロボの指示に従い源三郎は船管理の画面を立ち上げる。

 船管理の画面にはホワイトフリッパーの船体と各種データが表示される。


「宇宙船の種類によって武器の搭載数が違います。ホワイトフリッパーは武器を一門しか搭載できないので、今装備しているパルスレーザーを外して、マイニングカッターを装備してください」

「ふむふむ」


 源三郎が装備の換装を行うと、パルスレーザーを外した際に武器が搭載されていないと言う注意事項が表示され、マイニングカッターを搭載すると表示が消える。


「マイニングカッターでも戦闘は行えますが、射程距離と威力が低いので気をつけてください。また、装備の換装はハンガー内のみとなります」

「うっかりつけたまま出ていきそうで怖いのう」


 ロボからの注意を聞いて認知症の傾向がある源三郎はうっかりマイニングカッターつけたまま出港しそうだと心配になる。


「それでは実際に採掘を行いましょう。まず最初に先ほど手に入れた採掘のスキルチップをセットしてください」

「採掘スキルは採掘速度と採掘量が増えるのか」


 採掘のスキルチップをセットすると、スキル効果が表示される。


「次に宇宙に出てスターマップを起動してアステロイドベルトがあるエリアをタッチしてみてください」


 源三郎はロボの指示に従ってホワイトフリッパーで宇宙に出るとスターマップを展開すると、最寄りのアステロイドベルト帯が幾つか表示される。


「ほう、結構な数じゃの」

「まずは最寄りのアステロイドベルト帯へいきましょう」


 源三郎が最寄りのアステロイドベルト帯へと移動する。

 ステーションに近いアステロイドベルト帯では数多くのプレイヤーと思われるホワイトフリッパーの同型が小惑星の取り合いをしており、オープンチャットではお互いに所有権の主張や罵詈雑言を飛ばしあい、チャットの監視AIから悪意のある発言に対して注意を受けていたりする。


「混雑しとるの」

「ステルスやジャミングをしていない限り、敵対でないプレイヤーやNPCは青色でレーダーに表示されます。PKなど行い指名手配、もしくは海賊など敵対NPCは赤く表示されます」


 あちらこちらで採掘しているプレイヤーの船を源三郎が見ていると、ロボがレーダーの見方を改めて説明する。


「こりゃ採掘するにも一苦労じゃな」

「空いてる小惑星を探すか、別のアステロイドベルト帯へ移動しましょう」

「取り合うのもなんじゃし、移動するのが無難じゃな」


 源三郎はトラブルを避けて次のアステロイドベルト帯へ移動するが、次のアステロイドベルト帯も同じように混雑しており、次へ次へと移動してステーションからかなり離れたアステロイドベルト帯に辿り着く。


「ここもそれなりに人がいるがましじゃの」

「鉱石が含まれている小惑星をスキャニングしてください」


 源三郎はロボに言われるがままに小惑星をスキャニングしていくと、鉱石が含まれている率が表示される。


「この小惑星が比較的ましじゃの」


 幾つかの小惑星をスキャニングして、80%を越える小惑星を見つけた源三郎は採掘を開始する。


「カッターを照射すると鉱石資源が自動的に船の格納庫に収納されます。採掘中は移動できないので、襲撃などに気をつけてください」

「カッターの照射を止めないと動けないのか」


 源三郎は試しに採掘中に移動しようとするが、視界に採掘を中止しないと動けませんと注意書が表示される。


 カッターが照射され続けていると、数秒に一個の割合で船の格納庫に鉱石資源が運ばれていく。


 採掘中はやることがないので源三郎はチャット一覧を表示して適当なチャンネルに入室する。


「将来惑星開拓や企業戦争を視野にいれたカンパニー設立中、メンバー募集」

「特に規定も何もない緩いカンパニーです。だらだらしたい人、おしゃべりしたい人来てください」


 ふらりと入室したチャットルームはカンパニーメンバー募集系のチャットルームだったのかカンパニーと言う団体のメンバー募集のコメントが次々と流れていく。


「のう、ロボや、このカンパニーと言うのはギルドみたいなものかの?」

「はい、その認識であっています」


 源三郎もVRではないネトゲの経験はあるのでギルドの概念は理解していた。

 ロボは源三郎の質問に対して回答する。


「ところで惑星開拓や企業戦争とはなんじゃ?」

「運営が今回の正式サービスアップデートで追加された大型コンテンツです。詳しくは公式のロードマップをご確認ください。ユーザー、鉱石が指定数集まりました。ステーションに戻りますか?」


 源三郎がチャットルームで聞いた惑星開拓や企業戦争について質問すると、ロボは公式サイトで確認してくれと答え、クエストが完了したことを教えてくれる。


「ちと試したいことがあるので、もう少しここにいさせてくれ」

「了解しました」


 源三郎はそう言うと、スキルチップを外して採掘を続ける。

 スキルアリなら5秒前後で1つ鉱石を手に入れたが、スキルなしは10秒で1つだったり、採掘に失敗したテキストコメントが発生する。


「なるほどの」


 続いて源三郎は再度スキルチップをセットして周囲の小惑星をスキャニングしていき、今度は7%と鉱石率の低い小惑星にカッターを照射して、違いを検証する。


「こりゃ効率が悪いどころじゃないわい」


 実時間で十分近く照射続けてやっと鉱石1つが格納庫に送られていく。

 さらに照射を続けると五分もしないうちに小惑星が消滅してしまう。


「検証はこれぐらいにして帰るとするか」


 検証を終えた源三郎は早々にアステロイドベルト帯から出ていき、タウ星系の宇宙ステーションを目指す。


「採掘した鉱石はそのままでも売れますが、ステーションの生産施設で合金に加工も出来ます。端末にアクセスして合金を作成してください」


 宇宙ステーションに帰還すると採掘のクエストが終了してクレジットと製造のスキルチップを取得し、同時に次のチュートリアルクエストが発生する。


「その前に売値だけ確認させてくれ」


 源三郎は製造のクエストを始める前にステーションマーケットで先ほど採掘してきた鉱石の売値を調べる。


「チュートリアルのマテリアルより高く売れるの」


 買取価格100%でチュートリアルクエストで売ったマテリアルよりも倍近い値段がついていた。


「金策の候補になりそうじゃな、ロボ待たせたの、製造のクエスト始めるぞい」


 源三郎はロボに人声かけてステーションの端末にアクセスする。


「このゲームの生産はスロットと時間制か」

「はい、ユーザーはメンバーシップクラスなので本来5枠の所、10枠の生産スロットを所持しています。課金でスロットをさらに5枠増やせます」


 ステーションの端末で生産項目を選ぶと、貴方に許可されている生産スロット数というのが表示され、生産物一覧には完成までの所要時間が掲載されていた。


「この所要時間も課金とかで減らせるのかの?」

「はい、5分、10分、30分、60分短縮アイテムが別途有料であります。ユーザーはメンバーシップに加入しているので生産時間も短縮されています」

「まあ、今は急いでおらんし、合金は30秒じゃからいいじゃろ。取り敢えずこの製造のスキルチップをセットしてみるかの」


 源三郎が製造のスキルチップをセットすると製造時間が短縮され、製造品の個数や品質アップ確率が上昇する。


「生産系ならこれは必須じゃな」


 源三郎は製造のスキルチップの検証をしながら採掘してきた鉱石を消費して合金に加工する。


「鉱石2つで合金1つか。製造数増やすと所要時間も増えるシステムか。こりゃあれじゃな、時間かかる製造している間に別のクエストや作業したほうが効率良さそうじゃの」


 試しに1つ作ってクエストを終わらせ、次に10個纏めて製造しようとすると製造時間も10倍になったのをみて源三郎は独り言を呟きながらうんうんと頷く。


「初歩的な生産物は最初から覚えていますが、マーケットで販売されている設計図を購入して覚えないといくら生産系のスキルレベルを上げても新たな生産物を作ることは出来ませんので気をつけてください」


 最後にロボから生産の設計図の注意事項を聞いて製造を終わらせるとチュートリアルクエストはクエストクリアとなった。


 クエスト報酬としてクレジットとピストルと近接攻撃のスキルチップ、M3ピストルと言うSFデザインのハンドガンと専用のカードリッジ、単分子カトラスと言う近接武器、開拓者の宇宙服、ヘルメット、ジェットパックを手に入れた。

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