第4話 お爺ちゃん、マーケットで交易する。
源三郎がステーションハンガーに戻ると、【ステーションマーケットで鉱石資源を売却する】と言うクエストタスクが発生し、クエストマーカーは中央ロビーにあるあの総合端末に伸びていた。
「ふーむ………ロボや、このステーションマーケットとギャラクシーマーケットというのはどう違うのかの?」
源三郎は空いてる端末の一つを操作してマーケットにアクセスすると、ステーションとギャラクシーと言う二種類のマーケットが表示され、ロボに二つのマーケットの違いを質問する。
「ステーションマーケットはこのステーションに存在するNPCベンダーから売買を行えます。ギャラクシーマーケットはプレイヤー同士で離れた場所でも売買が可能です。またメンバーシップに加入していると、ユーザーが求めるアイテムのオファーメッセージも行えます」
ロボからマーケットの違いを説明する。
「オファーメッセージとはなんじゃ?」
「はい、例えばユーザーが鉱物資源を100個必要としたとします。ですが手元にもステーションマーケットにもない場合、ギャラクシーマーケットで鉱物資源100個をこの値段で買い取るなどオファーメッセージを出せます」
「いちいちあちこちのステーションを駆け巡って買い漁らなくても良さそうじゃの」
源三郎は顎髭を弄りながらロボの解説を聞く。
「今回はステーションマーケットで手に入れた鉱物資源を売りましょう。商品名の横に%があるのがわかりますか? 100%が適性価格、100%以下が適正価格以下、以上が適正以上の値段で買取りしています。%はこのサーバーにログインしているプレイヤーがアイテムの売買を行うと増減します」
「ほう、そこは相場市場みたいになっとるんじゃな」
源三郎がステーションマーケットを開いて、手に入れた鉱石資源の売却手続きをしようとすると、ロボが言うようにショップウィンドウに表示される商品名の横に%が表示されている。
今回手に入れた鉱石資源はチュートリアルの品物だからか、買取価格は100%固定と表示されており、売却しても100クレジットほどとたいした額ではなかった。
手に入れた鉱石資源を売ると、クエストが完了してクエスト報酬のクレジットが振り込まれる。
「それではユーザー、今度は交易をしてみましょう。交易品を購入してください」
売却を終えると次のクエストが発生する。
クエストタスクではここで交易品を購入して、別の星系で売却すると言うもの。
「交易品はレアメタル、電子パーツ、生鮮食品、種々、貴金属、燃料、日用品、医薬品です。酒、煙草、ドラッグは違法品なので手をださないでください」
「酒と煙草が?」
酒と煙草が違法品と聞いて、源三郎は思わずロボに聞き返す。
「この連邦では禁止なんです。ステーション、ギャラクシーマーケットどちらにもその項目はないでしょう?」
「うむ、確かに」
源三郎はマーケットの検索システムで酒と煙草を調べるが、該当なしと表示される。
「密売のスキルチップをインストールすれば商品を扱えますが、治安機構に目をつけられるのでお勧めしません」
「リスクがあるなら手を出さないほうがいいの。しかし、交易品の食料の項目には代用食と天然食の二種類があるが、なんでこんなに天然食は高いのじゃ?」
源三郎はステーションマーケットの交易品一覧を指差しながらロボに値段の違いを聞く。
「ステーションなどでは天然食の栽培が難しく、農業に適した惑星も少なく地球連邦やソロモン自由同盟の人民全員の食事を完全に賄えません。このため天然食は嗜好品贅沢品扱いになります」
「ほう、そういう設定か………しかし高いのう、手持ちじゃ一つも買えん」
源三郎は端末から浮かび上がるホログラムをスライドして手持ちで買えそうな商品を探す。
「日用品を購入することをお勧めします」
「それが無難かの」
交易品の中では一番安い値段の日用品を貨物の限界まで購入する。
「それでは隣の星系で購入した交易品を売りましょう」
交易品を購入すると、ロボが今度は隣の星系まで売るように言う。
同時にクエストタスクも更新されて隣の星系まで売りに行けと出る。
「ステーションに戻ってきたと思ったら、もう出ていかないといけないとは………せわしないのう」
源三郎は無意識に腰を叩きながらまたハンガーへと向かい、ホワイトフリッパーに搭乗して出航する。
「ユーザー、隣の星系へ行く方法ですが、ワープドライブを使用します」
「ワープドライブと言うと、あの火星で見つかった異星人の宇宙船にあったやつじゃな」
「はい、プロトタイプのワープドライブです。人類は永い年月をかけて解析改良して現在のようにホワイトフリッパーにも搭載できる小型化に成功しています」
宇宙空間に飛び立ち、クエストマーカーに向かって飛んでいると、ロボが隣の星系へ行く方法を教えてくれる。
「このワープドライブも性能とスキルによってワープ距離やワープモードへの移行スピードが変わります。では、実際にワープドライブを起動しましょう。まずはそのボタンを押してスターマップを開き、ワープ目的地を設定してください」
「このボタンか?」
ロボに指定されたボタンを押すとコクピットのフロントガラス部分にスターマップが表示される。
「現在我々がいるのはアルファケンタウリ星系です。隣のタウ星系をタッチしてください」
ロボに言われるようにボタンを押すと、コクピットのディスプレイにスターマップが表示され、源三郎が画面に触れるとスターマップが拡大縮小する。
タウ星系と言う場所をタッチすると、タウ星系のマップが拡大される。
「タウ星系の宇宙ステーションをタッチしてください。ここにワープしますかと文字が表示されるので同意してください」
「こうか?」
源三郎はロボの指示に従って画面操作すると、ワープまでのカウントダウンが始まり、数字が0になるとホワイトフリッパーの前にリング状のワープゲートが発生する。
「そのリングに飛び込んでください」
「あいわかった」
ホワイトフリッパーがワープゲートを潜ると、眼下にタウの宇宙ステーションが現れる。
「ふむ、ステーションは見えているが、船足が遅いのか遠いのう」
コクピットから見えるステーションはすぐそこにあるようにみえるが、計器に表示される目的地までの距離は1000キロ単位で離れている。
「しかし、移動している間暇じゃな」
「でしたらブレスレットの操作一覧にあるチャットチャンネルに入ってみてはどうでしょうか?」
「ふむ?」
ステーションへ向かうが代わり映えしない宇宙空間の風景に退屈し始めた源三郎が独り言を呟くと、ロボはチャットチャンネルについて説明する。
「ほう、色々あるのう」
源三郎がブレスレットを操作してチャットチャンネル一覧にアクセスすると、源三郎の視界に雑談部屋など現在設立されているチャットルーム一覧が表示される。
「テキストチャットはどうやるんじゃ? 操縦しながら文字を打ち込むのか?」
「基本は音声入力タイプで喋った内容がテキストになりますし、バーチャルキーボードで打ち込みも出来ます」
源三郎がテキストチャットのやり方をロボに質問するとロボはやり方を説明する。
「音声チャットの方は参加人数制限があったり、ルーム作成者が喋ったり歌うのを聴くだけとか色々あるのう」
音声チャットでは有名人かわからないが何々のカラオケ垂れ流しやラジオ番組設定でルーム作成者が一方的に喋るなど色々なコンセプトの音声チャットルームがあった。
「初心者ルームなどお勧めですよ」
「ではそこにするかの」
ロボのお勧めを聞いて源三郎は初心者ルームに入室する。
「ぬおっ!?」
源三郎がチャットルームに入室すると歓迎の挨拶のテキストが滝のようにながれきて驚きの声をあげる。
「どうも、初めまして今日から始めた初心者です」
源三郎の当たり障りのない挨拶から初心者チャットでは雑談が始まる。
初心者ルームではオープンベータ組などが正式サービス開始組の質問に答えたり、ステーションまでの移動の間の時間潰しの雑談などで盛り上がる。
「ユーザー、ステーションドッキング可能距離です」
「おっと、もうついたのか」
源三郎が雑談に夢中になっている間に宇宙船はステーションに辿り着いていた。
「ステーションに到着したので一旦抜けます、お疲れさまでした」
初心者ルームから退室する旨を伝えると、また見送りの挨拶文が滝のように流れていく。
「ほう、アルファケンタウリのステーションとは内装がちがうの」
ステーションハンガーにドッキングして内部に足を踏み入れると打ちっぱなしのコンクリートや金属構造の壁といった殺風景な内装が源三郎の目につく。
「はい、星系毎に内装が違います。ユーザー、交易品の売却を行いましょう」
タウ星系宇宙ステーションの中央ホールは緑が広がる自然公園風だった。
公衆電話ボックスタイプの端末が自然に溶け込むように設置されており、源三郎はその端末の一つでアルファケンタウリから持ち込んだ日用品を売却する。
「チュートリアルクエスト限定で相場100%固定か。そりゃそうじゃな、従来の相場システムだと出遅れてチュートリアルクエスト始めたプレイヤーとか、相場が大幅に下落して赤字じゃからのう」
源三郎が売却しようとすると【チュートリアルクエスト交易品は100%固定です】と注意書が表示されていた。
日用品を売却すると、交易のクエストが完了し、クエスト報酬としてクレジットと採掘のスキルチップ、そしてマイニングカッターと言う宇宙船に装備する武器が貰えた。
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