第3話 お爺ちゃん、宇宙に旅立つ
「コクピット内はかなり狭いのう」
ホワイトフリッパーの船内はかなり狭く、コクピット以外にほとんどスペースがない。
「まずはコクピット席に座ってください。操縦方法をご説明します」
「ふむ………操縦桿とかないんじゃが?」
源三郎はコクピットに座ると操縦桿など船を操作する器具がないことに気付く。
「肘置きの先にある球体を握ってください」
「こう………なっ、なんじゃ!?」
源三郎が球体を握ると突然視界に計器などのHUDが浮かび上がる。
「操縦方法は脳波による思考操作です。まずはHUDについて説明します」
ロボは源三郎の視界に映るレーダー、速度メーター、カーゴ容量など説明していく。
「レーダーは搭載されたレーダーの種類で感知距離やジャミングを見破ったりします」
「ふむふむ」
「特に重要なのはこちらの半円形の計器です。これは上からバリア、アーマー、船体HPとなっており、攻撃を受けるとバリア、アーマー、船体HPの順に減っていきます」
「結構覚えることがおおいのう………」
源三郎はロボから宇宙船操縦のレクチャーを受けるが、計器の種類の多さに辟易し始める。
「バリアは減少してもジェネレータからエネルギーが補充される限り時間経過で回復します。ジェネレータの出力が低いと回復時間が延びたり、場合によっては回復しません」
「すまんが覚えきれん、その都度質問してもいいかの?」
「はい、その為のサポートロボットです。遠慮なく質問してください。またブレスレットのメニュー項目にヘルプ機能が搭載されていますので、それをご確認ください」
「助かる」
メモをとりながらならなんとかなりそうだが、流石に口頭だけでは覚えきれない。
源三郎がギブアップを伝えると、ロボはブレスレットに説明書があると教えてくれた。
「説明を再開します。アーマーと船体HPはステーションで代金を払って修理するか、リぺアキットやリペアビームが必要となります。修理は即座に回復しますが、リペアキットやリペアビームは徐々に回復していきます」
「ほう、色々やり方があるんじゃな」
ロボは宇宙船の修理の仕方を説明する。
「それではマスター、実際に出航して宇宙空間を飛行してみましょう」
ロボが出航を促すと、支給船を手に入れるクエストが終了したとクエストジャーナルに表示される。
同時に【スキャニング】のスキルチップとクレジットを手に入れたとクエストジャーナルにメッセージが表示された。
「ロボよ、スキャニングのスキルチップとはなんじゃ?」
「それは操縦の後でご説明します。まずは宇宙船の動かし方を覚えてください」
「よし、なら出航じゃ!」
「ドッキングロック解除、エアー排出」
ガコンとホワイトフリッパーを固定していたアンカーが外され、ハンガー内の空気が抜かれて真空状態になる。
「ゲート解放、ナビゲートビーコンに沿って発進してください」
「本格的じゃの」
何重にもロックされたゲートが次々と解放されて源三郎の前に宇宙空間が広がる。
安全にステーションから発進出来るように無数の点の光が道を作る。
「ホワイトフリッパー発進」
源三郎の掛け声と同時にホワイトフリッパーのエンジンが起動し、宇宙ステーションから発進する。
「おお………」
コクピットから見える宇宙は広大で、同じクエストを受けてると思われる同型のホワイトフリッパーがあちこちを飛び回っている。
「ユーザー、宇宙船操縦の練習をしてみましょう。次のマーカーに移動してください」
ロボがそう言うと、宇宙空間にピコンとクエストマーカーが現れる。
源三郎はマーカーを追いかけるように前進や右折左折、上昇や下降を繰り返し操縦訓練を続ける。
「次はアフターバーナーの使い方です。アフターバーナーはジェネレーターのエネルギーをかなり消費しますが、かなりのスピードを出すことができます」
「ぬおっ!?」
サポートロボットのロボの指示にしたがって、アフターバーナーを起動する。
グンッと体にGを感じたかと思うと、源三郎はホワイトフリッパーの速度計に視線を向ければ倍近い速度で宇宙を飛んでいることがわかる。
ジェネレーターのエネルギー残量を確認すれば勢いでエネルギーを消費していることがわかる。
「エネルギー切れによるジェネレーターのオーバーヒートです。冷却されるまでお待ちください」
源三郎はアフターバーナーの止め方がわからず、エネルギー切れになるまで飛び続ける。
ジェネレーターがオーバーヒートするとガクンとスピードはおち、視界にジェネレーターの冷却完了時間が表示された。
「ジェネレーター冷却中はシールドが回復せず、レーザーなどエネルギー武器も撃てません。ジェネレーターのエネルギー残量はよく確認してください」
サポートロボットのロボがジェネレーターがオーバーヒート状態になった際の注意をする。
「凄いGを感じたのう……最近のVRはここまで再現出来るんじゃな」
「おや、あそこに漂流物がありますね」
源三郎がアフターバーナーのGに感心していると、クエストタスクが更新され、今度はサポートロボットのロボが見つけた漂流物に近づけとクエストが表示される。
クエストマーカーに近づくと、宇宙空間にポツンと貨物コンテナが浮かんでいた。
「まずはスキャニングして罠がないか、中身がなにか調べましょう。ユーザーは【スキャニング】のスキルチップを手に入れてましたね。それではスキルのセットからご説明しましょう」
サポートロボットのロボは漂流物である貨物コンテナのスキャンの仕方と先ほどのクエスト報酬で手に入れたスキルチップの使い方の解説を始める。
「ブレスレットのメニュー一覧からスキルチップを選んでください」
サポートロボットのロボの指示に従って源三郎がブレスレットを弄ると、スキルチップの一覧が表示される。
「ユーザー、貴方はメンバーシップに加入していますのでスキルチップ上限が100になっています。また課金アイテムで一定期間、最大150まで拡張することができます」
「まだシステムとかよくわかっとらんから、課金はせんぞ」
スキルチップ一覧には未活性化にスキャニングがあり、右下にはスキルチップ上限0/100と言う数字があった。
「スキャニングをタップしてください」
「こうか?」
源三郎がロボの指示に従ってタップすると、スキャニングのスキルが活性化し、スキル上限が1/100に変化する。
「フリーパイロットの皆さんは、ブレスレットにスキルチップをセットすることでスキルが使えます。スキルレベルは1から始まり、最大で10レベルです」
サポートロボットのロボがスキルの説明をする。
「ふむ、つまり1レベルのスキルを100個とか、10レベルのスキルを10個とかできるのじゃな」
「ユーザーの認識であってます。それでは実際にスキャニングしてみましょう。スキャニングは船に搭載された機器とパイロットのスキルで解析距離や解析速度が変化します」
ロボに言われるまま、宇宙空間に漂う貨物コンテナをスキャニングする。
「貨物コンテナの中に入ってるのは鉱石資源のようですね。回収しましょう」
「ちょっと待ちな! その荷物は俺たちの物だ!」
スキャニングを終了して貨物コンテナの中身が鉱石資源とわかった瞬間、割り込む声が聞こえる。
同時にクエストタスクが更新されて、海賊を撃退しろと表示される。
「ユーザー、荷物を狙った海賊の襲撃です! 戦闘の準備を!!」
「ふむ、ここで宇宙船の戦闘チュートリアルか」
レーダーに敵を知らせる赤いマーカーが二つ表示される。
メインモニターには海賊と言うネームが表示されたホワイトフリッパーが2機、こちらに向かってくる。
「ユーザー、この船にはパルスレーザーが搭載されています。これで応戦しましょう! 火器管制システムオンライン!」
ロボの言葉と同時にメインモニターにターゲットサイトが表示される。
「ユーザー、武器によって有効射程距離があります。またこちらの船に搭載している火器管制システムの性能、相手の船に搭載されているジャミングシステムでロックオンの時間や数が変わります」
「ええいっ! 覚えることが多すぎるんじゃ!!」
源三郎は不満を漏らしながらも宇宙船を操縦して、海賊船との相対距離を詰めていく。
「ユーザー、有効射程距離です」
メインモニターに表示されるターゲットサイトが海賊の船を捉えてロックオン状態になる。
「撃てっ!」
源三郎が叫ぶと、ホワイトフリッパーの先端から赤いレーザーが射出されて、海賊の一機に命中する。
だが初期装備のせいか、一発で落ちる気配はなく、相手のバリアが削れたぐらいだ。
「ぬぐっ!?」
お返しとばかりに海賊達から反撃を受けて、こちらもバリアを削られていく。
一進一退………いや、相手が二機いる分、源三郎側が不利になる。
戦闘はドッグファイトのように、宇宙空間をぐるぐる回り合う。
「ええいっ、ちょこまかと!!」
お互いに追いかけあいレーザーを撃ち合う。
「む? こいつらもしかして…………」
戦闘を繰り返していると、源三郎は海賊船の動きに一定のパターンがあることがわかってきた。
「こうきて、こうくるから……ここっ!!」
相手のパターンがわかればこっちのものとばかりに源三郎の攻撃が次々と命中していき、ついには2機バリアとアーマーを削りきる。
「トドメじゃ!」
ホワイトフリッパーから放たれたレーザーが海賊船に命中すると、海賊船が爆発四散して宇宙空間に残骸が漂う。
「戦闘お疲れさまでした。海賊達の残骸をスキャニングしてみましょう。何かいいものが手に入るかもしれません」
「ふむ、どれどれ?」
ロボに言われて源三郎は海賊船の残骸にスキャニングをかける。
両方の海賊船の残骸からスクラップというアイテムが見つかる。
「宇宙船の基本装備であるトラクタービームでドロップ品を回収しましょう。これも船の装備やスキルで回収距離が伸びます。またメンバーシップ加入者なら範囲内のアイテムを纏めて回収できます」
「おお、それは便利じゃの」
ホワイトフリッパーからトラクタービームを発射すると、海賊船のドロップ品が吸い寄せられ貨物室へと運ばれていく。
「宇宙船には積載量が設定されています。積載量を越えては回収できないので気をつけてください」
「うむ、わかった」
ドロップ品とを回収すると、ロボが船の積載量について説明する。
「それでは回収したアイテムをステーションで売りましょう」
ロボが回収したアイテムを売ることを提案すると、一連のクエストが終了し、クリア報酬としてクレジットが貰えた。
「そうそう、今回は勝利出来ましたが、万が一ユーザーが撃沈された場合どうなるか教えます」
「ふむ、確かにそれは気になるの」
ステーションに戻ろうとすると、ロボがこちらの船が撃沈された場合の話を始める。
「ユーザーの船が撃沈された場合、最初に支給された船なら、格納庫の荷物だけその場にドロップ、最寄りのステーションハンガーにユーザーと宇宙船が戻ります。それ以外の船はユーザーだけステーションに戻り、船は破壊されて荷物も装備もその場にドロップされます」
「かなりきついデスペナルティーじゃな」
ロボがデスペナルティーについて説明する。
「正確には30分間残骸としてその場に残ります。30分間以内に残骸を回収すれば、修理しないといけませんが、同じ船に搭乗できます」
ロボが船を破壊された後の回収方法について動画付きで説明する。
ステーションまで戻された後にそのステーションハンガーに置いてある別の船で時間以内に回収すればいいとのこと。
「30分過ぎますと、誰でもその残骸を回収することができます。回収が間に合わない場合は有料ですが、ステーションのサルベージサービスを利用してください。船のサイズや距離で料金は変わります。ユーザーはメンバーシップ加入者なのでドロップ保護時間が1時間に延長されて、サルベージ料金が半額に割り引きされます」
「それはお得じゃな」
ロボが有料の回収方法を説明する。
「もし取りに行く船がなくて、サルベージするお金もない場合はどうすればいいんじゃ?」
「その場合幾つか方法があります。他のプレイヤーに回収依頼をする。もしくは量子ハンガーに初期船など停泊させた船で取りに行くかです」
「ああ、そういえばそのシステムがあったな」
ロボの回答を聞いて源三郎はなるほどと膝を叩く。
「船のデスペナは理解したが、地上でのパイロットの死亡とかはどうなる?」
「その質問は惑星上で行うチュートリアルクエストでご説明します」
「わかった。ではステーションに戻るとしよう」
宇宙空間での宇宙船の操縦や戦闘、ドロップ品の回収クエストを終えた源三郎はステーションへと戻った。
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