第7話
「きっとそれは魂に触れた事によるものね。とはいえ、勿論人間の医療で分からないだけの病気の可能性は否定できないけれど」
葵の見舞いの後、オレは一人『Alice』に来ていた。グランマは人間の姿で答えてくれた。
「だとすれば、葵の性格は大きく変えられたのか?」
「それは分からないわ。まだ起きていないのでしょう?個人的には、『魂に強く触れてしまった事によるショック症状』だと思うけれど」
「魂は繊細ニャから、加減を間違えると、一時的に意識混濁するニャ。本当は魂を変えるのにそれほど強く触れる必要はないのニャ。だから、今回、犯人は加減を間違えたということニャ」
「魂の改変に必ず意識混濁が伴う訳じゃないってことか…。魂の改変したら、何か簡単に分かる物なのか?例えば、その人間とそれほど親しくなくても」
「人間の世界では分からないわ。ただ鏡の世界でなら、私たち、魂を見慣れた者が見れば分かると思うわ」
「そうか…。そうだ、"鍵"で鏡の世界に入ったときは、人間界にその痕跡は残るのか?」
「"鍵"を使ってから少しの間なら分かるニャリよ。鏡の鏡面が波の様に揺れているはずニャリ」
「つまり、今となってはどこの鏡から入ったかわからないってことか…」
「でも、アナタの学校で、アナタの学校の生徒を対象に行われた」
「葵と話したのは、下校時刻になってすぐだった…。部活をしていた生徒が救急車が来たのを見たという話だ。十五時半から十九時頃までの間に犯行が行われたと仮定すると、もう一日以上経ってしまったし、"鍵"の痕跡は…」
「なさそうニャリね…」
シャム猫は、オレの代わりにガックリと項垂れた。シャム猫と言っても、今は二十代のハーフっぽい女性の姿をしているが。彼女の名前は、メリーという。グランマは穏やかに微笑みながらこちらを見た。
「ところで、今日は美人のお連れさんはいないのかしら?」
「ああ」
「優しいのね」
「へっ?アイツゴリラですよ」
「ふふっ。アナタのことよ?」
「そうですか?あまり言われた事ないですけど」
「やっぱりアナタで良かったと思うわ」
それから少ししてオレは『Alice』を去った。魂の改変が危ないものであることを知ったオレは、次の日からどう行動するかを考えながら、暗い夜道を注意散漫に帰った。
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