第4話
宝石であろう鉱石や、リーフをイメージさせる銀細工、そして扉ほどあろうとても大きな鏡面。中世の西洋を思わせるその高級そうな全身鏡に、言われるがまま全身を投げ込むと、真っ暗な洞窟の様な空間に繋がっていた。
「ここが鏡の世界に繋がる門」
黒猫が足元で喋る。オレは右肩に乗るシャム猫の指示に従い、慎重に歩き出した。すると暗闇の中から渋く低い男の声が黒猫に向かって発せられた。
「グランマ、その方が占いの…」
「ええ、そうだと思うわ」
「でも、良かったので?」
「ええ。こうでもしないと信じてくれないようだったから。ふふっ、結構いい性格している。探偵向きだわ」
「だと、良いのですが…」
暗闇で見えない男猫が言い淀む。オレはそこに警戒心があることを察して、逆に少し安心した。相手も見せたくない手を見せているという事だ。男猫の発言は、とても演技には思えなかった。しかし、気になるところがある。
「"探偵"ってどういうことですか?」
「それは私から説明するニャ」
右肩のシャム猫が嬉しそうに喋り出す。オレは暗闇で光るシャム猫の目を見た。
「数日前に私たちのお店から盗まれた物を取り返して欲しいのニャリ」
「それはとても大事な物なの」
グランマと呼ばれる黒猫が静かに補足する。
「オレ、警察じゃないんですけど」
「だから、"探偵"さんにお願いしようと思ったのよ」
「いや、探偵でもないですけど…」
「いいえ、アナタは選ばれた。そして…」
「出口です」
男猫がそう言ってぶっつりと話を切った。オレは逆光でよく見えない出口から一歩踏み出して、"鏡の世界"に足を踏み入れた。
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