第4話 生死すら不明な辞めかたをしたシャヒリ(後編)
女にモテるシャヒリ。
選ぶ側の人間ってのは、ちょっと嫌なことがあるだけですぐ捨ててしまうみたいなんですね。いい気なもんですよ。
いつの間にか他の女の部屋に通っていて、通勤時間が短くなったり長くなったりで遅刻する事もありました。
「日本人と付き合っている」
と聞いていたのに、一ヵ月もすると
「日本人じゃないよ中国人」
とか言われて、軽くパニックになった覚えがあります。
で、その中国人の女の子も短期間で捨てられるわけですが……。
なんと、思い詰めてしまったのか、うちの店の外まで追って来てしまいました。
仕事中ですがしかたなくシャヒリに行かせて対応させます。
何十分たっても店内に戻ってこないので、私はチラッと相手の様子をうかがいました。
小柄で可愛らしい女の子でした。
ただ目つきがね。
激怒していただろうから当然かも知れませんが、すごくキツかったですよ。
そこからさらに数十分。合計一時間ぐらいですか。
とりあえずシャヒリは戻ってきました。
そして無理な要求をしてきます。
「ちゃんと話すために彼女の家に行ってきていいですか?」と。
いやちょっと待てよと。
その日のこいつ、ずーっと外でしゃべりっぱなしで、ほとんど働いていないんですよ。
一人抜けたぶん仕事はたまっているわけですよ。
そんな状況で何時間かかるかわからないような外出がしたいって言うんですよ。
ふざけんじゃねーよって話ですよ。
テメーの下半身の問題をこっちに持ち込むなっていうんです。
当然スタッフの誰もシャヒリの味方なんてしない。
彼がそれを女の子に伝えに行ったら、なんかよく分からないけれど彼女は帰っていったそうです。
仕事が終わってから修羅場かなーなんて思っていた私は、甘かった。
あの野郎、スキをみて店から逃げ出しました。
本当に自分勝手で非常識な野郎です。
そのままバックレて帰ってこないなら日本人のメンタルとしても理解できるのですが、朝方になって帰ってくるのがシャヒリという男。
もうあきれるばかりですよ。マジで精神構造が理解できません。
んで、例の中国人の女の子との問題。
解決したのかと聞いてみても、やっぱり未解決のままだと。
そりゃそうだろうけど、だったら抜け出した意味なかったじゃん……。
心の底からバカバカしいと思いながら、その日のお仕事終了。
馬鹿のせいで本当にキツい夜だった。
「おつかれさまでしたー」
などと言葉をかわし、私とは違う道を帰っていくシャヒリ。
しかしそれが彼を見た最後だった。
私が家帰って、飯食って、爆睡していたころ、シャヒリのLINEアカウントから店長へ「仕事を辞めたい」という内容の文章が送られてきたそうです。
しかしシャヒリには書けるはずのないとっても
絶対にこれを書いたのはシャヒリではない。
店の誰もがそう言いました。
じゃあこの日本語は誰に書かせた?
あるいは「誰かがシャヒリのスマホを使って送ってきた」?
そもそも修羅場真っ最中だったあいつ、いま無事なわけ???
何もかもが闇に
あいつ生きているのかなあ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます