「お前が思っているより、人間って脆くて弱いんだよ」
□□□(ママ) + エマ
焚火の向こう、ハーピーの羽毛に包まれご満悦そうなエマを頬杖ついて眺めていた。また一人、家族が増えた。今度は女だ。人型に近いからか感情も読み取りやすく、エマも彼女のことを気に入っているようだった。
次の卵が産まれるのはいつになるだろう。できるだけエマに負担は掛けたくないが、より多くの家族をつくらねば。今度はどこへ向かうとするか……
「ねぇ、ママ?」
気付くと、ハーピーの羽繕いをしてあげていたエマが、こちらをじっと見つめていた。どうしたのかと聞くと、ハーピーに凭れていた身体をゆっくりと起こす。
「彼女はどうして、死のうとしたの?」
その表情、声にはまるで感情はこもっていなかった。ただ純粋に、素朴に、疑問に思ったことを口にしているだけ。本当に、分かってはいないのだ。何が彼女をああも憤らせ、最終的に死へと追いやったのか。
「……おいで、エマ。
そちらへ手を伸べると小さく頷き、焚火を回り込んで私の隣へ座ったエマを、思う限り優しく抱きしめる。それは到底、あたたかな羽毛には敵わないだろうが、人肌同士の触れ合いでしか得られないものがあることを、私はよく知っている。
「ママ?」
彼女は私の腕の中、どうして自分がハグされているのかと不思議そうにこちらを見上げている。ああエマ。本当の母から愛されなかった
何も答えないまま、しばらくの間そうして彼女を抱きしめていた。彼女もまた、ただ黙って私に抱かれていた。……抱き返すこともないまま。
「──さぁ、横になって。今日は何を聞かせてやろうか……」
膝を枕にするよう促すと、言うままに頭を膝に乗せてこちらを見上げてくる。なかなか表には出さないが、彼女はこの時間を楽しみにしてくれているようだった。
パチ、と爆ぜて火の粉が上がる。夜闇にひらと舞い上がり、まるで溶けるように燃え尽きる。
二つ目の話、その半ば程で健やかな寝息をたて始めた彼女の頭を、しばらくの間撫で続けていた。
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