第2話

第2話


池袋駅東口。

俺と元カノの初デートの待ち合わせ場所でもあった。


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彼女のことを好きだった俺は、ダメ元で映画に誘った。そしたら即「良いんですか!??」とLINEが来た。しかし彼女はバイトがあるので、6時には解散。一緒に居れる時間は3時間ちょっとだけになるけれど、俺は嬉しくて嬉しくて、天にも昇りそうな気分だった。6年間男子校に通っていたので、ちゃんとしたデートは初めてだった。


待ち合わせ場所には十分遅れてしまった。それでも彼女は笑顔で迎え入れてくれて、さらに好きになった。最初の沈黙は身体中が痒くなる感じがあったけど、何故か心地良かった。

彼女は元々家が池袋に近いので、ミニシアターの情報も沢山知っていた。新文芸坐、シネマロサ、シネリーブル池袋。彼女は全部に行ったことがあるらしい。俺も一緒に行きたいと思った。


映画の内容は、グロいとかは無いけれどびっくりする系のホラー。ぐわっ!とお化けがスクリーンに映し出される時、彼女もビクッ!となっていた。結構ビビりなんだろうか。可愛い。


映画を見終わったあと、感想を話し合うために喫茶店に行こうとしたがなかなか見つからない。「そういえば前ミスドの話してましたし、ちょうどあそこにあるので行きません?」と彼女が機転を聞かせてくれた。

彼女はちょっと天然で、聞き間違えが多い。ドーナツを頬張る姿がとても可愛らしかった。帰る時には音楽の話もした。AppleMusicのプレイリストを見せたら、山下達郎と岡村靖幸に反応した。「私もめっちゃ好きなんです!」と目を輝かせた。


俺は完全に彼女の虜だった。帰る時、彼女と離れるのがとても心苦しかった。あの胸の高鳴りは、20年生きて初めてだった。「愛しい」という感情を初めて知ったのだ。

その日から彼女のことしか頭になかった。LINEが苦手なはずなのに、彼女と会話をしたすぎて沢山どうでも良いLINEを送った。今思えば、あれは迷惑だったかもしれない。けれども、それくらい必死になるくらい、彼女を自分の物にしたいとあの時は思っていたのだ。


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「お待たせー!」


過去に漂っていた意識を、懐かしいあの声が今へと呼び戻してくれた。

5年振りの、あの子が目の前に現れた。

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