#337 作画

 少年が目が覚めた時、世界が平坦に見えたことで「あ、今日は作画が危うい日か」と思った。自分の体についている色も、どこかのっぺりとしている。タンスを開けて今日着ようと思う服を取り出してみると、どれも一色に染め上がっている。

 ──大丈夫かな、今日体育あるんだけど。

 着替えながら、ふと思った。今日は学校の授業で体育がある。しかもマット運動だ。作画が危うい日だと、いいパフォーマンスができない。もちろん、それは先生たちも承知しているのだが、授業のスケジュールを変更するわけにはいかないとか言って、マット運動をすることになるだろう。

 はぁ、とため息が出る。

 この世界はいつしか日によって作画が変わるようになってしまった。数週間に一度だけ、神作画の日が来るのだが、その日以外は全くと言っていいほどのっぺりとしている。

 ──今日が神作画の日なら、英子ちゃんにかっこいいとこ見せられたのに。

 好きな子にかっこいいとこを見せたいのに、作画が危うい日だとそれが叶わない。

 気分が上がらないまま、少年は学校へ向かった。

 そして、体育の時間。



 急に作画のレベルが跳ね上がった。

 今まででありえないレベルで体が動く。

 なぜか、バク転ができてしまった。


 ──ここに力入れる日かぁ〜。

 この世界は不便だと、少年は改めて思った。

 

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