#335 最先端の技術

「ほお〜、これが最先端技術の結晶か」

 と、一人の年老いた博士が言った。

「そうですよ。この結晶があれば、人類は常に最先端の技術を得ることができる」

 結晶を見つけた男は、とても興奮した様子で語る。

 顎に手を当て、結晶をまじまじと観察した博士は、やがてゆっくりと男の方を見た。

「それで、これのどこが最先端技術なんじゃ?」

「これを『最先端技術の結晶』として世に広めれば、他の研究者はこぞってこれを欲しがる。そして、そのなかで一番高い金額を出したとこに譲る。我々のとこには大金が手に入る」

「それでは奴らに『最先端技術の結晶』を渡すことになるぞ?」

「いいんですよ。これはただの。本当はにあります」

 男は自分の頭をトントンを指で叩く。

 老いた博士は驚きで目を見開く。

「まさか、お主……」

「ええ。その通りですよ。最先端技術の実現には莫大な金額が必要です。それがこの結晶で手に入るんですから、これは文字通り最先端技術の結晶ですよ」

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