#293 気になるあの子
僕のクラスには、この学校で一番人気だと言ってもいい、いや、下手をすればこの町で一番人気だと言ってもいい女の子がいる。その子は、まるで漫画の世界から出てきたような、大袈裟ではなく、本気でそう思ってしまうほどに整った容姿を持ち、逆に性格は酷い、とかなく、まるで容姿とリンクしているかのような真面目で綺麗な性格をしている。
彼女からは『邪』を全く感じない。漫画でしか聞いたことのない『男子からも女子からも人気』を現実で体現している女の子。
努力家で真面目で、とても人気と、クラス中、いや、町中の男子から好意を寄せられている。
訂正。女子からも、だ。とにかく、信じられないほどに、彼女は綺麗だ。名は体を表す、というがまさに名前の『白』は彼女にぴったりだろう。いらない色が何一つない、真っ白な彼女。
ただ、僕にはわからない。わからないのだ。彼女の何がそんなに美しいのか。彼女がなぜそんなにも町の人を惹きつけるのか。
それは、僕がこの地球とは別の星からやってきた、つまり地球人から見れば宇宙人という存在だからかもしれない。いずれこの地球を侵略するために、偵察部隊として送り込まれた僕は、現地の人間と呼ばれる生物と同じ感覚を持つよう観察をしている。
ただ、趣味『人間観察』はどうやら人間からするとあまり付き合いたくはない人種に分類されるらしい。おかげで、僕はこの学校では一人で行動している。
まあ、偵察行動をするには一人の方が楽なのでいいのだけれど。
──話を戻そう。きっと彼女の魅力がわからないのは、僕が地球人とは違う感覚をしているから。地球人であれば、彼女の魅力に惹きつけられ、目を離せなくなるのだろう。一体何が彼女の魅力なのか、なぜ地球人は彼女に惹きつけられるのか、それを観察しているうちに、少々厄介なことになってしまった。
「
昼休み、彼女が僕の名前を呼んできた。
見れば、彼女の手には小包、いわゆる弁当がある。
おそらく、次に出る言葉は──。
「お昼、一緒に食べよう」
そう、彼女はきっと、自分に惹かれない僕を許せなくて、あの手この手で自分に惚れさせようとしてきている。こうしてお昼を食べるのも、自分に靡かない人間が許せないのだろう。
──と、考えてみるが、彼女には『邪』はないのだから、きっと単純にお昼を一緒に食べたいのだろう。
僕は一応、遠い国から来たことになっている。名前は
話を戻そう。
そんな人間だから、加えて一人でいることの多い彼女は、僕に気を遣って声を変えてくれているのだろう。なんていい人なんだ。もし僕が地球人ならこのまま惚れている──のだろうか。地球人の観察はしているが、この感覚はわからない。
おっと、せっかく声をかけてくれたのだから返事をしなくては。
「いいよ。ありがたくその提案に乗ろう」
「やった。黒君は前から話してみたかったんだよね」
拳を握る彼女は、きっと本心で喜んでいる。
うむ、人間観察をしていると、こういった女の子をあざといと評価する人間もいるのだが……よし、いい機会だ。この際、彼女が本当に白い人間なのか調べてみよう。
「ん? 何か言った?」
「うん、なんでもない。さ、一緒に食べよう」
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