#120 雨の日は嫌い
僕は雨が嫌いだ。
ジメジメするし、洗濯物は乾かないし、靴とズボンの裾は濡れるし、傘の荷物増えるし。
傘なんて忘れ物になるもの第一位だろう。靴箱にある傘立てには忘れ去られた傘が何十本とある。
学校までの数十分。雨に打たれながら歩かなくちゃいけない。時々通り過ぎる車。水溜りの上を通り過ぎると、決まって水が飛ぶ。
それを毎回回避しなくちゃいけない。
本当に雨の日は色々面倒くさくなる。
まあ、運動部の友人は外練の日に雨が降ると中練もしくは部活が休みなるから喜ぶ。
文化部の僕には関係ないことだ。
あと、雨だと一番嫌なのは……。
「おはよう、雨野くん」
こいつの存在だ。
「……おはよう、
幼馴染の晴見。こいつは雨が好きという一風変わった価値観を持っている。
雨の日のどこがいいのか、僕にはさっぱりわからない。
「今日もいい雨だね」
「……どこが」
「だって雨ってなんだか神秘的だと思わない? 雨の日の独特の匂い。草木から滴る水の美しさ。どれも芸術のように美しいんだよ」
「僕にはその感性がわからないね」
「残念だよ。雨野くんにはわかって欲しいのに」
演劇部に所属しているから声がでかいし、なんでか僕の前だと芝居くさく喋る。
そんな晴見は真っ赤な傘を持っている。
暗くどんよりとした視界の中でも、一際目立つ真っ赤な傘。
「そうだ、今日は放課後暇かな?」
「……暇じゃない」
「暇でしょ。雨野くんは雨の日は家に籠るって決まってるからね」
「知ってるなら聞くなよ」
「決まり文句みたいなものだよ。それでいつも通り遊ぼうよ」
「……まあ、いいけど」
「やったー。じゃあ、雨野くんの部屋でいいよね?」
「……いいよ」
「よっし、今日は何やろうかなー」
にっこりと笑顔を浮かべて喜ぶ晴見。
それが可愛いんだけど、言うと絶対に面倒くさいことになるから絶対に言わない。
(……誘ってくれるってことは、期待してもいいのかな)
そう思ったところで慌てて頭を振る。
そんなことはない。期待しても意味はない。きっと晴見は『友達』として僕を見ているはず。なら変な期待はせずに、友達として付き合っていけばいい。
…………いいけど、それはそれで釈然としない。
「ねえ」
「ん? 何?」
「………………いや、なんでもない」
「えー? 気になるー」
「なんでもないったらんなんでもない!」
なんか変な軌跡でも起きて、この恋が実らないかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます