#121 雨の日は好き

 私は雨の日が好き。

 みんなジメジメしてるとか、外で遊べないとか、服が濡れるとか。

 もちろん、私も湿気で髪がぼさっとするし、服が濡れるのは嫌だけど、それを踏まえて雨の日が好きだ。

 お気に入りの真っ赤な傘が使えるし、水溜りを踏んだ時の水の弾ける具合が好き。雨の匂いが好き。私が雨の日に生まれたから、もしかしてその影響もあるのかな?

 なんて思っていると、彼が見えてきた。

 私が雨の日が好きな理由の一つ。


「おはよう、雨野くん」


 雨野くん。私の幼馴染の男の子。私と違って雨の日が嫌いな子。

 そして私の好きな人。雨野くんは私のこと好きなのかな?


「今日もいい雨だね」

「……どこが」

「だって雨ってなんだか神秘的だと思わない? 雨の日の独特の匂い。草木から滴る水の美しさ。どれも芸術のように美しいんだよ」

「僕にはその感性がわからないね」

「残念だよ。雨野くんにはわかって欲しいのに」


 私は雨野くんに雨の日の良い点を教えてあげてるのに、これっぽっちも理解を示してくれない。

 うーん、私としては一緒に雨の日を好きになってくれるといいのにな。

 それに、そろそろ雨野くんとの関係を一歩進めたい。

 よし、ここはいつも通りにいこう。


「そうだ、今日は放課後暇かな?」

「……暇じゃない」

「暇でしょ。雨野くんは雨の日は家に籠るって決まってるからね」

「知ってるなら聞くなよ」

「決まり文句みたいなものだよ。それでいつも通り遊ぼうよ」

「……まあ、いいけど」

「やったー。じゃあ、雨野くんの部屋でいいよね?」

「……いいよ」

「よっし、今日は何やろうかなー」


 ふふふ、知ってるもん。雨野くんは雨の日、絶対に外に出たがらないから暇してるって。

 だから雨の日はアピールができる。攻めることができる。

 ふふふ、今日はどうしようかな。


「ねえ」

「ん? 何?」

「………………いや、なんでもない」

「えー? 気になるー」

「なんでもないったらんなんでもない!」


 なんだろ? 雨野くんは何を聞きたいんだろ? 

 もしかして私の気持ちに気づいてくれた!? 

 ……そんなわけないよね。雨野くん鈍感だもん。

 でも、いつか振り向かせてみせるんだから!

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