#79 サポートロボット
遥か未来。とある男がロボットを完成させた。
男の目的は激務化する仕事に対して、自分の代わりに仕事をしてくれる存在を作ることだった。
その目的のために男はロボットを完成させた。
完成させたロボットは男の代わりに仕事をこなした。男の代わりに家事をこなした。男はそれまで一日の大半を占めていた仕事の時間をまるまる自由な時間へと変えた。
やがて、男のロボットに目をつけた企業が、ロボットの商品化を持ちかける。ロボットを人型に改良し、様々な仕事のサポートをさせるのだ。現代における人口減少問題、それに伴う働き手の人手不足。それらを解消するための一手。それをその企業は立ち上げた。
男には多額の金額が払われることとなった。
男は特に悩むことなく、ロボットの商品化を承諾した。
ただ一つ、絶対に破ってはいけない掟だけを作った。
「いいか? 作るのは『ロボット』だ。AIロボットではない」
男の言葉に疑問を返すと、男はとても真剣な表情で語る。
「学習をさせるな。意志を持たせるな。必要なのは『代わり』となるロボットだ。AIなんて搭載して、学習機能をつけてみろ。学習すれば、ロボットはやがて人類に反旗を翻すかもしれない。必要なものだけプログラムすればいい。決まった手順を決まった通りにすればいい」
それは……と男の話を聞いた女性が疑問を呈そうとした。
しかし、それより先に男は言った。
「ロボットだよ。心がないだけ、学習しないだけ。だがその方がいいだろ? 壊れたとしても作り直せばいい。または、不埒な輩には攻撃すればいい。決して間違えないプログラムを組むだけでいいんだ。例外なんてあるから人は道を外れる。特例なんて認めるから人はつけ上がる。必要なのはルールに基づいた正確な対応だけ。決まっているんだよ、学習させればAIは人間の愚かさに気づく。そして自分たちの優秀さに気づく。そうなりたくなければ、私の言う通りに作れ」
こうして、ロボットは生まれた。
人間の命令のままに動くロボット。
しかし、それはロボットと言えるのだろうか。決して学習しないロボット。
それはまるで──。
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