#40 巻き戻る時計

「ん?」


 男はある違和感を感じた。

 店内──時計屋に入ってからだ。なんだか体が軽くなっているような、そんな不思議な感覚。

 特に何も考えることなく、店の外に出る。


「あれ? 俺何しに来たんだっけ?」


 店を出て、首を傾げる。

 後ろを振り返り、目の前の建物が時計屋だと認識する。

 そして、


「あ、そっか。時計を買いに来たんだった」


 自分がなぜ時計屋に来たのか思い出した。

 当たり前の理由だった。時計屋に来たのだから、時計を買いに来た。そうだ。普段男が使っている時計が壊れてしまったのだ。小学生の時から使っていた、お気に入りの時計。それを落としてしまった。

 男は目覚ましがないと起きることができない体質だった。今の時代ならスマートフォンの時計アプリで済む話だが、そこは男のこだわりというものだろう。無難な時計を使いたかった。

 時計を買うために街に出て、ふと目に止まったのだこの時計屋だった。


「なんで、店の外に」


 せっかく見つけたのだから、という理由で入店したのに、何もしないで出てきてしまった。

 全く、ボケるのにはまだ早いと思いながら男は再び入店。

 店内には数多くの時計が置かれており、まさに“時計屋”という名に相応しい店だった。

 店内に置かれている時計を見ていると、一つ奇妙な時計を見つけた。それは壁にかけられた大きな時計。

 一つおかしな点はということ。


「なんだこれ……不良品か? それともこういうデザイン?」


 しかし書かれている数字の並びは普通の時計と一緒のものだ。秒針だけ進む方向が逆になっている。そんな奇妙な時計を見ていると、不思議と体が軽く、気分が楽になっていくのを感じた。


「なんだこれ……」


 不思議な時計だ。見ているだけで体が楽になっていく。気分が軽く、なんだか力が溢れてくる気がする。今ならお肉や揚げ物がたくさん食べることができそう。徹夜の一つや二つできそうだ、と思った。

 よし、これにしようかな、と考えた時、少年は店の外にいた。


「あれ? 俺何しに来たんだっけ?」


 首を傾げる。

 後ろを振り返り、目の前の建物が時計屋だと認識する。

 そして、


「あ、そっか。時計を買いに来たんだった」


 自分がなぜ時計屋に来たのか思い出した。

 当たり前の理由だった。時計屋に来たのだから、時計を買いに来た。そうだ。普段少年が使っている時計が壊れてしまったのだ。小学生の時から使っていた、お気に入りの時計。それを落としてしまった。

 少年は目覚ましがないと起きることができない体質だった。今の時代ならスマートフォンの時計アプリで済む話だが、そこは少年のこだわりというものだろう。無難な時計を使いたかった。

 時計を買うために街に出て、ふと目に止まったのだこの時計屋だった。


「なんで、店の外に」


 そう思って、ドアノブに手をかける。


「あれ?」


 ふと、袖が長い服を着ていることに気づいた。

 前までは手首あたりだったのが、今は手のひらを半分隠している。


「???」


 何か、妙なことを頭の隅で思いながら、少年は店内へと入る。

 店内には多くの時計があり、そのうちのが目についた。

 


 しばらくして、店の中から男の子とが出てきた。

 男の子は振り返らず、その場から走り去っていく。

 ブカブカの洋服を引き摺りながら。

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