#41 悪友のその後
あくびを噛み殺して、教室のドアに手をかける。
ふと。嫌な予感。
ガラッと一気に開けるのと同時、体を右に逸らす。
「死にさらせぇ!! っておわ!?」
真横を通り過ぎていく悪友の姿。躱されるとは思っていなかったのだろう。壮大に背中を打って、悶えている。
そんな悪友に向けて、俺は一言。
「……おい、朝一番に人を殺す気か?」
「うるせえ! お前は俺の必死の叫びを2度も無視したんだ! これぐらいは当然の権利だろ!」
「必死の叫び?」
「ああそうだ。俺が必死で逃げて逃げて逃げて、なんとか送った『助けて』のメッセージをお前は無視しただろ! それと! 秘密基地に来いってメッセージもだ! そのせいで俺がどんな目に遭ってたか……」
シクシク、と泣き真似をする悪友。
その傍で、俺は悪友が言う『メッセージ』がなんなのかを思い返しみてる。確か『助けて』と『秘密基地に来い』ってやつか……ああ、そういえばそんなメッセージが来ていたな。
「あ、忘れてた」
「お前!!」
悪友からの襲撃。再度それを躱す。
「どうせ彼女から逃げてたんだろ? 羨ましいご身分だな」
「バカを言うな! いいか、そもそも普通の彼氏彼女なら逃げる必要なんてない。けど俺は逃げなくちゃいけない。なぜかって? 俺の命に関わるからだ。お前にわかるか? ある日、目が覚めらた彼女が自分の部屋にいた時の恐怖を! ある時は手錠で拘束されて! またある時は檻の中に入れられたことを!」
「……すまん、俺の知ってる彼氏彼女関係から逸脱し過ぎて感想がない」
「…………だよな。自分で言ってて訳わからなくなってきたわ」
遠い目をする悪友には、さすがに同情をせざるを得ない。
「まあ、なんだ。忘れてたのは俺が悪い。そこは謝罪をしよう」
「お、おう」
「しかし、なんでまたそんな事態になったんだ? お前だって日々気をつけてるのに」
「それがよ。今度のテストで俺の方が合計点低かったらいよいよ婚姻届にさい──」
ヒュン、と風が走った。
「…………」
目の前から悪友が消えた。
直前になびく黒い長髪が視界に映った気がするが、これは完全に触らぬ神に祟りなし、と言うやつだ。
理由がわからないが、関わると面倒&俺の命も危ない。
『ふふ、他言無用と言ったはずですよ?』
『いや、違うぞ、俺はまだ言ってないからな!!』
『ふふふ』
『や、やめろ……何それ、それをどうする、あぎゃあああああ!!』
「……今度、昼飯奢ってやるか」
もちろん、命があったらの話だが。
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