#12 神の遊び

「飽きた」


 と、唐突に神は言った。

 神に仕える天使は言う。


「何にですか?」

「転生遊びに」


 天使は呆れた。ああ、「飽き」が来てしまったかと。

 この神、仕事はできるが性格に難がある。そのうちの一つが、下界で生活している人間たちを使った遊びだった。転生というものに娯楽の属性を付加させ、これまで幾度となくやってきた。

 本来転生とは、良き魂を次の世界へと送り出すこと。魂のバランスを調整して行うものだ。それなのに、この神の気まぐれで「前世の記憶を引き継いだまま行ってみよう」や「どうせなら平凡な世界からファンタジー世界に飛ばしてみよう」など、神として好き勝手やってきた。そのせいで各世界における魂のバランスが崩れかけというのに。一体そのバランスを保つために、天使と死神がどれだけ動いたか。

 吐き出したくなる言葉を飲み込み、天使は神を見る。


「最初は面白いと思ったんだけどねー。けど、みんな転生の特典でチート能力選びすぎ。それの一体何が楽しんだか」


 特典を与えようと提案したのはあなたでしょ、と天使は言葉を飲み込んだ。


「では、転生サイクルは元に戻してよろしいでしょうか」

「そうだな……」


 天使の提案にどこか思うところがあるのか、神を肘をついて考える。

 ああ、これは絶対に碌なことにならない、と天使は思った。

 そして神は、いいことを思いついたようだ。


「そうだ。転生サイクルはこのままにしよう。ただ、転生先を変えるんだ」

「?」

「実はこの前、人間界に遊びに行ってきてねぇ。その時面白いゲームを買ったんだよ。このゲームの世界に、今度来た魂を転生させてみよう」


 ああ、それは今まで以上にバランス管理が大変になる。ただでさえ、本来は真っ白にして転生させる魂をそのまま転生させているのだ。

 今度はそれを、ゲームの中のキャラクターにしようとしているのだ。本来存在している魂に、別の魂を上書きさせる。元の魂が消えてしまう。

 それをこの神はなんとも思っていない。天使と悪魔じぶんたちがそれを補えばいいと思っているのだ。

 

「…………」


 そろそろ神殺しのとこに行こうかな、と思う天使だった。

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