#13 彼女からある山に埋蔵金があると言われて僕は堀に向かった。

「──って言ったら本気で信じてさぁあ! 『僕、インちゃんのために絶対に掘り当てて見せるね』って言ってやがったの!」


 とある酒場。

 入り口から見ると奥にある席。そこから豪快な笑い声が聞こえる。

 まんまと自分のついた嘘を信じた哀れな男を思い浮かべながら、豪快に笑っている声だ。


「うっわ〜かわいそう〜」


 とは言っているが、同席している女性の顔も笑っている。


「ちょっと、まるで私が悪者みたいじゃないの〜。ちゃんと言ったのよー。『信憑性は薄いけど、けど、そんな話があるの』って」

「瞳を潤ませて、上目遣いに?」

「そう」

「あはははっ、あんたがそれやったら世の男はイチコロじゃないの!」

「だからこそよ。あいつとはそろそろ切り時だったし、最後に夢見せてあげてんのよ」


 人を騙したことに対して何も思っていない。

 むしろ、当然のことだと思っているように見える。


「あそこ掘ったって何も出ないのに、今頃一生懸命掘ってるんだろうね〜」

「最初は尻尾振る犬みたいで可愛かったけど、ちょっと軟弱すぎて無理になっちゃった」


 しかも、今日はあいにくの大雨だった。

 土砂降りの中、必死に土を掘っている姿を思い浮かべるだけで、笑いが止まらないのだろう。滑稽すぎだ。

 女はテーブルに置いた写真を手に取る。

 

「さーて、次はどの男の子にしようかな〜」

「はー懲りないね、あんた。あたしがいうのもなんだけど、痛い目に合わないようにね」

「はいはい」


 悪気は全くないようだ。

 ──うん、よかった。これなら心置きなく行ける。






「次のニュースです。昨夜未明、〇〇町の酒場にて殺人事件がありました。被害者は篝火家かがりびやイリンさん。死因は鈍器による頭部殴打によるものです。また、現場に居合わせていた留大藁とめだわら隆他りゅうた被告を殺人容疑で逮捕。被告は『この女が悪いんだ。僕を弄んで……当然の報いだ』などと供述しており、容疑を認めているようです」

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