その6.2 ぱわーあっぷはお手軽に

 わけわからん会話が長ったらしく続きましたが、これから桃太郎一行の過酷なトレーニングが始まります。

「じゃあ、まず始めに言っておく。これから二十日間、武器は使わない」

「どうしてですかぁ?」

「昔テレビでそんな特訓やってた」

「そんなんでいいのか、モモ」

「いや、実際効果はあるはずだ。まず全員の基礎体力の向上を図る。鬼は強いらしいからな。各自の基礎ポテンシャルを上げておくべきだ」

「なるほど。もっともです」

「武器の扱いについてはその後だ。基礎あっての武器だからな」

「は~い」

「うむ。そういうことなら」

「おし!じゃあまずは山中ランニングから始めるか」

 ってなわけでみんな走っています。

 

――三十分後

「(桃太郎)飽きたな」

「(その他)え~!?」

 桃太郎さん、いきなり何言い出すんでしょうね。思わずみんなキャラ壊れちゃいましたよ。

「ただ走ってるだけなんて芸がないな」

「基礎鍛錬なんだから仕方ないだろうに」

「なんつーか絵にならないな」

「それはまあ、ただ走っているだけですからね」

「よし、もう走るのも飽きたし、みんなそれぞれ武器使ってみようか」

「ちょっと待て!二十日間は武器を手に取らないんじゃなかったのか!?」

「いや、ただ走ってるだけじゃつまんないから変化を持たせようと思って」

「ならせめて筋肉を鍛えるとか、そういうことを」

「地味じゃん」

「それだけで却下かよ!?」

「しかし桃太郎さん。そうなると基礎体力の向上は望めません。鬼に対抗するためにどうするつもりなんですか?」

「おう、そうだそうだ」

「ここにキビ団子がある」

 桃太郎は懐から包を取り出しました。

「あ、それは以前貰ったものですよね?」

「いや、あれとは別物だ」

 桃太郎は人差し指を立てて説明に入ります。

「これはプロテインやらキトサンから東洋のあんまり聞きたくない薬剤や違法薬物までをいろいろ混ぜてとあるちびっ子に練成してもらった特性のキビ団子だ」

「具体的にはどう違うのですか?」

「簡単に言えば、食えばパワーアップ」

「胡散臭いな」

「あと、血行が促進されて血もさらさらになる。さらに血中コレステロールの上昇を抑えてくれるし、余計な塩分の排出にも一役かってくれる。それに、腸の動きの活性化も促し、便秘や下痢にも有効だ」

「すごい健康食品ですね」

「適当にごたくを並べてるだけに聞こえるのは気のせいか?」

「なら、試しに食ってみろ」

 桃太郎は源八朗に団子をひとつ渡しました。

「なんか変な臭いしないか…?」

「そりゃ東洋の神秘が原料だからな」

「ったく…」

 源八朗は団子を口に放りました。

「あんまり美味くないな」

「良薬口に苦しって言うだろ?」

 ゴクン。なんとか喉を通過させました。

「ちなみに、一体東洋の神秘とは何が入っているのですか?」

「ああ。たしかヤギの睾丸に豚の睾丸にサルの睾丸に牛の睾丸に…」

「おい待てやこらぁぁぁ!なんてもんをてめぇはぁぁぁ!」

「あと、うら若き美少女の…」

「何っ!?美少女ぉ!?」

「股間に…」

「ぬおぉぉぉ!もっとその団子よこせぇぇぇ!」

「妄想を廻らせていたおっさんの睾丸」

「またそれかぁぁぁ!」

「あの、僕たちもそれを食べなければならないんですか?」

「安心しろ。俺と宗佑とリンにはこっちの未来の世界特製、美味くて基礎体力アップが確実なこの錠剤を用意してある」

「なら俺にもそっちよこせやぁぁぁ!」

「いや、お前いじり甲斐があるんだよ」

「やられる方の身にもなってみろぉぉぉ!」

「さて、こいつはほっといて、宗佑。これ飲んどけ」

 桃太郎は錠剤を宗佑に渡しました。

「では、いただきます」

 ゴクン。

「どうだ?」

「ちょっと酸っぱいですね。でも、おいしい部類ですが」

「どれどれ」

 桃太郎も錠剤を一粒口に放り込みました。

「うん。なんかビタミン剤みたいだ」

「これで基礎体力が向上するのですか?」

「ああ。毎日一粒ずつ飲むんだ。一度に飲むと体内のホルモンバランスに支障をきたすからな。これを約二十日間続ければ、基礎体力はなんと従来の三倍になる」

「三倍ですか?すごいですね」

「実は一.三倍なんだけどね」

「なら最初からそう言ってください」

「いや、だって一回言ってみたかったんだよ。通常の三倍って」

「いや、そう言われても」

「まあ、その話は置いとこう。リン、お前も飲んどけ」

 桃太郎は振り返ってリンに言いました。

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