その11 ボス鬼はもっとつよかった
「(宗佑)ところで、ほんとに鬼が来てますが」
「(桃太郎)さすがにこっちの都合には合わせてくれないか」
「(リン)まずは隊長さんを探せばいいんですね」
「(源八朗)だいたい、みんな同じようなカッコの鬼で誰か指揮をとってるかなんてわかるわけがないだろう。自分で言い出しておいてなんだが」
「(桃太郎)いや、あれを見ろ」
一同桃太郎が指差した方向を見ます。
「(桃太郎)間違いない。あれが指揮官だ」
「(宗佑)なるほど。確かにそれっぽいですね」
「(リン)確かに一味違いそうですね」
「(源八朗)ああ。見た目だけな」
四人の視線の先にいるのは、ある一匹の鬼でした。一応今更ですが、鬼の特徴について述べておきましょう。これまで見てきた鬼は赤鬼と青鬼で、それぞれ頭に角が一つと二つ。それに腰には恒例の鬼パンツです。
しかし、視線の先にいる鬼はそのどちらの鬼にも該当しません。なぜなら、その鬼の体は赤くも青くもない、黄色だったのです。
「(桃太郎)このカラーリングから信号機ってできたんかな」
桃太郎の発言は無視して、さらにその鬼には別の相違点がありました。
角が三本あったのです。
「(源八朗)んな安直な…」
「(宗佑)やっぱり隊長は一味違いますねえ」
「(リン)まさか三本あるなんて…」
「(桃太郎)さすが隊長だ。やはり角は隊長機の象徴だな」
一通り会話を終えると、桃太郎は鬼の大群に向かって走り出しました。その間、大量の鬼に邪魔されましたが、そんな鬼たちは桃太郎を捉えることなく斬り捨てられます。それから二分後、黄色い鬼の頭を抱えた桃太郎が
「獲ったどぉぉぉ!」
と叫び、それから鬼の首を大きく掲げました。それを見た他の鬼たちは恐れをなし……なんてことなく「うぉぉぉ!!」と士気高らかに叫び、棍棒を振り上げています。
「(源八朗)隊長じゃなかったのか」
「(宗佑)もしくは、もとよりそんな指揮系統はないか」
「(リン)そんな呑気なこと言ってないで、どうにかしましょうよぉ。こっちに向かってくる鬼」
「(宗佑)そうですね。では、手短にいきましょう」
「(リン)あ、ちょっとわたしに考えがあるんでそれ実行しましょう」
「(源八朗)どうすればいいんだ?」
「(リン)向こうの扉まで逃げましょう」
「(源八朗)逃げるのか?」
「(宗佑)彼女が考えがあると言っているんです。従いましょう」
宗佑は桃太郎にサインを送り、確認のサインもすぐに返ってきました。桃太郎はすぐに走り出し、宗佑たち三人も鬼たちの間を駆け抜けます。進路上の鬼を斬り伏せ、撃ちぬきながら、ようやく入ってきたのとは別の扉へと辿り着きました。
大きな鉄の扉をなんとか閉じ、四人はほっと一息つきました。
「(宗佑)で、どうするんですか、リンさん」
宗佑が訊くと、リンは何かを呟いているばかりで、答えは返ってきませんでした。
「(源八朗)リンちゃん?」
「(リン)ごぉ、よん、さん、にい、……来ます!」
「(源八朗)へ?」
源八朗がアホ面した瞬間、分厚い鉄の扉がベコンと大きく反りました。同時に扉の中から低い爆音が腹に響き、内部が劫火に焼かれているのか、扉もほんのりあったかい気もします。
「(桃太郎)今度はどんな新兵器だ?」
「(リン)はい~。これは火炎瓶と手榴弾を組み合わせてさらに改良したもので、爆発すれば半径五メートルは完全に焼かれちゃいますぅ。それを五個くらい部屋にばらまいてきたので、おそらく誰も生き残ってないのでは?」
「(源八朗)さらっと恐ろしいこと言うなぁ」
「(宗佑)なるほど。さっきこの扉に向かって走っているときに部屋にばらまき、さっきまでぶつぶつ言っていたのは爆発するまでのカウントダウンですか。納得です」
「(桃太郎)俺は江戸の世でさらっとSI単位を使ってるところに納得がいかないがな」
もっとも、さっきからこいつらは平気で横文字を使っているわけですが、それもこのさい愛嬌ってことで、気にするのはやめましょう。
さて、もうそろそろラスボスに辿り着きたい桃太郎一行は、またも大きな扉の前に立っています。ぶっちゃけ、今度も鬼がいっぱいだったら帰っちゃおうか、なんてことも考えちゃったりしてます。
ゴゴゴゴゴ……
扉が開きました。すると、中はかなりだだっ広い部屋で、その最奥部には大きなイス。そしてそこに座るは大きな鬼。
「(桃太郎)あんたラスボスかぁ~?」
桃太郎は大声で訊きました。
「(鬼)おー!まさしく俺はここのラスボスだぁー!」
どうやら本物みたいです。
桃太郎たちはラスボスの大鬼に向かっていきました。
しかし、桃太郎の連結刃も宗佑の蒼穹も、鬼の体を傷つけることができませんでした。さらに、機関銃も散弾銃も突撃銃も効きませんでした。源八朗なんか斬馬刀折られた上に一人だけボコボコにされて床でヒクヒクしています。
「(桃太郎)なんか反則的に強くねえか?」
「(宗佑)さすがラスボスですねぇ」
「(リン)さすがですぅ」
「(桃太郎)こうなったら、あれを使うしかないようだな…。リン、あれは今どこだ?」
「(リン)あれって、どれですかぁ?」
「(桃太郎)昨日作ったでっけぇあれだよ」
「(リン)ああ!あれなら携帯に困難なのであの村に置いてきちゃいました」
「(桃太郎)そうか。じゃあ取りに行ってくる。おい、大鬼ぃ!」
「(鬼)なんだぁ?」
「(桃太郎)お前を倒せる武器持ってくるからちょっと待っててくれぇ!」
「(リン)無理ですよぉ。そんな風に言ったって待ってるわけが…」
「(鬼)わかった!早く行ってこぉい!」
「(リン)い、いいのぉ!?」
というわけで、桃太郎は大急ぎで部屋から飛び出して村まで武器を取りに帰っていきました。
「(鬼)おい、お前ら」
急に鬼が声をかけてきました。リンはびくっとして身をすくませ、宗佑は刀を構えました。この状況は、あまりよろしくないでしょう。四人がかりで倒せない敵を前に、今は三人。ヒクヒクしてるおっさんを除けば実質二人です。今攻められたら終わりです。
「(宗佑)なんでしょうか」
一気に部屋の空気が緊張で張り詰めていきます。鬼は言いました。
「(鬼)あの飛び出していった兄ちゃん、どれくらいでここへ戻ってくると思う?」
「(宗佑)さあ、それはわかりません。僕には桃太郎さんとリンさんが話していた武器がなんなのか見当がつきませんし、携帯できないということなので、それなりに時間がかかる、としか予想できません」
「(鬼)そうか」
「(宗佑)でも、彼は必ず戻ってきますよ」
「(鬼)ほう」
「(宗佑)必ずね」
宗佑が言うと、鬼は顎に手を当てて「ほう」とか「ふうん」とか言っていましたが、意を決したかのように真剣な目つきになり、言いました。
「(鬼)茶でも飲むか?」
「(宗佑)は?」
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