その4 ふたり目の仲間ができました
桃太郎とリンは、さらなる仲間を求めて再び町を歩いています。
「やっぱり強い人がいいですよねぇ。わたし、戦力になりませんから」
「そうだなー。あと二人はほしいところだ」
すると、とある店先で人だかりができているのを発見しました。
「また辻斬りだってよ。こんどはなんと道場の師範がやられたらしい」
桃太郎は人だかりに近づき、なにやら話している内容を聞きました。
「へえ、もう八人もやられてんだなー。しかもみんな腕利きばっか」
「すごいんですねえ。でも怖いです~」
「よし、決めた!」
「どうしたんですかぁ?」
「そいつを仲間にする」
「え~~!?」
「なんだよ、強いやつがいいんだろ?」
「で、でも、さすがに辻斬りは…」
「いいじゃん、強そうで」
「いや、そうじゃなくて、一応犯罪者ですよぅ?」
「鬼を退治すれば恩赦で無罪だ」
「そういう問題ですかぁ?」
「そういう問題だ」
というわけで、その夜、桃太郎とリンは辻斬りを待ち伏せするために、人通りが少ない路地で時を待っていました。今夜は月が出ているものの、雲に隠れてばかりいて絶好の辻斬り日和です。絶対にくるはずです。
すると、案の定現れました。男性の悲鳴が聞こえました。辻斬りです。桃太郎とリンは走り出しました。すると、目の前に血だらけで死んでいる侍と、そのそばに立つもう一人の侍にでくわしました。間違いありません、辻斬りです。これが辻斬りでなくてなんだというのでしょうか。しかもその辻斬りの顔、めっちゃこわいじゃないですか。
「おい、お前!」
桃太郎が声をかけると、辻斬りは走って逃げてしまいました。
「追うぞ」
桃太郎は走り出し、リンもそれに続きます。すると
「うあぁぁ!」
またも男性の悲鳴が聞こえました。桃太郎的にはそろそろ女性の悲鳴を聞いてみたかったところではありますが、とにかくその声のする方向へ行ってみました。
さっきの辻斬りと同じ光景がそこにはありました。しかし、大きく違うのが、斬られているのはさっきの辻斬りで、今度は別の侍が立っているということです。
侍は刀の血を払うと、桃太郎たちに気づいた様子で二人を見ました。
「あ、正当防衛ですよ。この人が勝手に斬りかかってきて」
そのとき、雲が晴れて月明かりが侍を照らしました。
その侍は柔和な、言い換えれば無茶苦茶うさんくさい爽やかスマイルを浮かべた好青年に見えます。そして、さっきの辻斬りと照らし合わせると、この侍は鞘を持っておらず、彼が握っている刀は辻斬りのものであるとわかりました。
「あんた、侍か?」
桃太郎が訊くと、青年は笑みを崩さず答えました。
「その答えでは不適当ですね。正確には、侍から刀を取った人、ってかんじですかね」
「刀ないのか?」
「ええ」
「なんで?」
「ところで、なにか食べ物を持っていませんか?昨日から何も食べていなくて」
「つまり金がないんだな」
桃太郎は懐からキビ団子を取り出して青年に差し出しました。青年は笑みを崩さずにその団子を食べました。
「ありがとうございます。とてもおいしかったです」
「いや、礼はいい。それにしても、お前強いな」
「そうですか?」
「そんなに腕がいいなら誰か雇ってくれるだろ?なんでそんなに貧困なんだ?」
「いえ、実はですね。僕は生まれてこのかた刀と言われるものを持ったことがないんですよ。さっきのが初めてです」
「一応侍なんだろ?」
「はい」
「竹刀とか木刀とかは?」
「それも持ったことないですね」
桃太郎は考えました。いけるんじゃねえか、こいつ。
「お前、行くあてとかあるのか?」
「いえ、特には」
「じゃあ、俺たちと一緒に来ないか?鬼退治に行くんだ」
「僕でいいんですか?」
「ああ。ちゃんと三食飯が食えるし、刀も用意してやるよ」
「それは有難いですね。では、お供させていただきます」
「ところで、その刀はいいのか?」
「別に銘が入ってるわけでもないですし、それに、刀はあなたが用意してくれるのでしょう?」
「まあな。じゃ、行くか」
「はい」
「はい~」
こうして、桃太郎とリン、そして新たに加わった侍、…………
「お前、名前なんていうんだ?」
「やっと聞いてくれましたね」
「すっかり忘れてた」
「僕は
「桃太郎だ。よろしく頼む」
「わたし、リンですぅ。よろしくお願いします~」
こうして、桃太郎とリン、そして宗佑は新たな仲間を求め歩き出した。
剣士の宗佑が仲間になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます