幕間 魔女討伐隊

 魔女は、ありったけの愛を男の子に与えました。

 魔獣まじゅうは、男の子から片時かたとき(ほんのわずかな時間)も離れず、良き遊び友達となりました。

 知恵のある魔の者まのものは、勉強と音楽を男の子に教えました。

 男の子は、三人に笑顔をもたらしました。

 四人は、楽しく穏やかで幸せな日々を過ごしていました。


 ですが、人間の世界は違いました。

 知恵のある魔の者が、直接手ちょくせつてくださずとも、着実ちゃくじつほろびの道へと歩みを進めています。

 国の権力者達けんりょくしゃがいがみ合い、制裁せいさいし、戦争へと仕向けています。

 多大ただいな被害をこうむるのは、民間人みんかんじんばかり。

 人々は怒りをつのらせ、「悪政あくせい(人民の意思を無視し、人民を苦しめる政治)を許すなっ!」と、抗議こうぎの声を張り上げています。

 老若男女、子供さえも巻き込んで、多くの人々が抗議活動を続けています。

 治安ちあんは悪くなる一方で、罪を犯す者も増えました。

 公衆衛生こうしゅうえいせい悪化あっかし、致死率ちしりつの高い感染病かんせんしょう蔓延まんえん

 たくさんの人々が感染し、亡くなってしまいました。

 感染者が、感染が広がっていない地域へ避難ひなんし、そこで感染を広げる悪循環あくじゅんかん

 感染対策かんせんたいさくも間に合わず、感染は爆発的に拡大しています。

 そんなある日、ひとりの人間が「悪政も感染症も、何もかも魔女の仕業しわざだ!」と、騒ぎ立てました。

 それは、ただの妄言もうげん(事実ではない、でたらめな言葉)に過ぎません。

「悪いことは全部、魔女になすりつけよう」という、策略さくりゃく(自分の目的を達成する為に、相手をおとしいれようとする悪い計画)でした。

 ですが、多くの人間達は、そのいい加減な妄言を信じてしまいました。

 人間は元々、「魔の者」を毛嫌けぎらい(理由もなく嫌う)しています。

 妄言に賛同さんどう(賛成して同意する)する者は、どんどん増えていきました。

 抗議の声は、「打倒悪政だとうあくせい」から「打倒魔女だとうまじょ」へと変わっていきました。

 これが、最初に妄言を言った人間の狙いでした。

「政治批判」を恐れた人間が、魔女へと標的を変えさせる為に仕向けたのです。

 そして、「諸悪しょあく根源こんげん(全ての悪いことを生み出す原因となる存在)である魔女を倒せば、世界は救われるに違いない」と、間違った正義感せいぎかんを振りかざす人間達も現れました。

 そこで国は、魔女を倒す勇者をつのりました。

 英雄えいゆうを夢見る自称勇者達は「我も我も」と、続々と名乗りを上げました。

 最終的に、集まった自称勇者達は百名を超えました。

 たくさん集まったので、「魔女討伐隊まじょとうばつたい」を編成へんせい(集めて組織を作る)しました。

「魔女討伐隊」はいさましく、「魔の森」へと足を踏み入れるでした。

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