魔女と無能力の子

橋元 宏平

序章

 今でない時、ここでない場所。

 この世界には、「人間」と「魔の者まのもの」と呼ばれる種族しゅぞくがいました。

 人間と魔の者は、とても仲が悪く、対立し合う間柄あいだがらでした。

 この世界の人間は、生まれながらに必ずひとつ「奇跡きせきの力」を持っています。

 誰もが三歳の誕生日を迎えると、「能力鑑定所のうりょくかんていじょ」へ行くことが義務付ぎむづけられています。

 人それぞれ、生まれつき持っている力の特性が違いました。

 その子が、どのような特性を持っているのかを、鑑定してもらうのです。

 ところが、ある日のこと。

 ひとりの男の子が「無能力者むのうりょくしゃ」と、鑑定されてしまいました。

 この世界の人間は「奇跡の力」を持っているのが、当たり前。

 持っていない人間は、ひとりもいません。

 前例のない「無能力者」を、両親さえも拒絶きょぜつし、男の子を捨ててしまいました。

「無能力のお前は、人間ではない」と、誰もが突き放しました。

 男の子は、食べ物も満足に与えられず、いつもひとりぼっちでした。

 街外れには、魔の者達がんでいる大きな森がありました。

「森には、邪悪な魔女がいる」という噂があり、人間はあまり近付きません。

 しかし、街から追放された男の子は、恐ろしい魔女がいることを知りながら、森へ行くしかありませんでした。

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