魔女と看板娘と酔い覚ましの手錠
どこかの町にひっそりとある小さなお店の店内で、気だるげな女性が机に頬杖をついて店番をしていた。
とんがり帽子を被り、体をすっぽりと覆うローブを着たその女性は退屈そうに欠伸をしている。
店内はきちんと整頓されており、同じような物が机の上に並べられている。
そんな店に訪れるのは魔道具を求める者たちだ。
今日も一人の少女がその店の扉を開く。
「おや、居酒屋の娘が何の用だい?」
「ちょっと欲しい物があってね」
気の強そうな短髪の少女は、無い胸を張って気だるげな女性を見下ろす。
「酒を飲んだら酔っちまうけどさ、その酔いをすぐに醒ます物ってないかい?」
「まあ、あるっちゃあるけどねぇ。どういう時に使うんだい?」
「酔いつぶれた迷惑客に使ってすぐに帰ってもらおうと思ってね」
「なるほどねぇ。じゃあ、すぐに取り外しができる物の方が良いさね」
気だるげな女性が杖を振ると、彼女の後ろに会った大きな棚の一番下の引き出しの一つが開いて、中から小さな手錠が出てきた。
「……何でそんな見た目なのさ」
「つけやすいからとかじゃないか? 私はコレが作られた時にその場にいなかったから知らないよ」
少し眉を顰めて、むっとした表情の店員を、不思議そうに見る少女は、結局使いやすさを重視して『酔い覚ましの手錠』と名付けられたその魔道具を購入していった。
後日、魔道具を使ってもちっとも客が帰らないと愚痴を言いに来た少女を、気だるげな女性は魔法を使って追い出していた。
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