魔女と少女と脱毛タオル

 とんがり帽子を目深に被った女性が、気だるそうに店番をしている。

 店内は乱雑に物が置かれ、あちこちによく分からない物がたくさんあった。

 どれも高価な魔道具のため、店内の客たちはうっかり落として壊さないように慎重に移動していく。

 そばかすが目立つ女の子もその内の一人だった。


「あの……」

「近所の娘さんが、何の用だい?」

「その……処理が簡単にできるのがあるって……」

「何の処理か分からない事には、出しようがないんだけどねぇ」

「……け………です……」


 顔を真っ赤にしながらか細い声で言う少女。

 とんがり帽子を被った気だるげな女性は納得して頷き、杖を振った。

 少女の背後に一塊にして置かれていた布の山から一枚、タオルが浮いてカウンターの上に飛んできた。


「これが……?」

「そう、例の物さ。使う時は気を付けるんだよ。間違っても、頭に使わないように、ね」

「はい!」


 少女は代金を支払うとすぐにタオルを鞄に押し込み、店を出て行った。




 数日後、親子喧嘩の際に父親の頭に擦りつけられて大惨事になったと父親が泣きついてきたが、気だるげな女性は相手をせずに追い出した。

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