魔女と解体屋とチューチュードレイン

 物が散乱している店内で、とんがり帽子を目深にかぶった女性は、ギルドで解体屋をしている男性の話を気だるそうに聞いていた。


「つまり、肉の臭みを抑えるためにも、少しでも早く血を抜く事が重要なんだ。ただ、大きな魔物になるとそれだけ血を抜くのに時間がかかるんだ。血を抜くのを早める魔道具とかあるか?」

「……まあ、ある事にはあるわね」


 女性が杖を振ると、棚の中でも小さな戸が開いて、中から細長い物が出てきた。

 鉄製のそれは先の方が細く尖っていて、途中から一定の太さになっている。中が空洞になっていて、彼女が飲みかけのカップにさすと紅茶が太いほうの先から噴き出した。


「チューチュードレイン、とかなんとかだったかねぇ。魔物に刺せば血を吸い上げてくれるだろうよ。ただ、間違えて人に刺したら死ぬだろうし、気を付けるんだね」


 代金を受け取りつつ、男性に忠告する女性。

 男性は話をしっかり聞いていたようで、丁重に扱っているらしく、クレームとか何もなかった。むしろ口コミが広がり、わざわざ別の街から解体屋をしている人が買いに来るほどだった。

 女性はその客たちに「在庫がない」と伝えて追い出したが、今も入荷していないかの問い合わせが来るという。

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