魔女と青い花と枯れない花瓶
物が溢れかえっている店内で、気だるげに座っていた女性がいた。
とんがり帽子を目深に被り、あまり表情がうかがえない。
店内にはほとんど客がおらず、退屈そうにしていた彼女だったが、ふと何かに気づいて顔をあげた。
視線の先にはそばかすが目立つ女の子が店内に誰かいないか警戒しながら入ってくるところだった。
「あら……近所の娘さんが、今日は何の用だい?」
「あの、この前の、アレのお礼……」
「……ああ、例のアレか」
とんがり帽子を被った女性が、以前買われていった脱毛タオルの事を思い出すと、少女は再度お礼を言って持っていた一輪の花を彼女に押し付ける。
「これ、貰ってください」
「ふーん。……有難く貰っておこうかね」
そばかすの少女がぺこりと頭を下げて、店から出て行くのを見届けてから、とんがり帽子の女性は渡された花を見る。
ここら辺では取れない珍しい種の青い花だった。
回復薬にも使われる事があるその花の値打ちを知っていた女性は、どうしたものか、と数秒考えた。
「確か、アレがあったね」
女性が杖を振ると、背後にあった大きな棚の大きな引き出しが開き、中から真っ白な花瓶が出てきた。
ふわふわと浮いて移動する花瓶だったが、女性の前にそっと着地する。
魔石を花瓶の中に入れて、待つ事数分。花瓶の中に水が溜まっていた。
「これでいいか。どれぐらい持つかねぇ」
貰った花をそのまま花瓶の中に入れてカウンターに飾る。
それは一カ月以上経っても、枯れる事無く咲き続けた。
その事に気づいたある商人が、同じ魔道具を大量に買い、街中に広まった。
結果、観賞用の花が枯れず、花が売れない事に腹を立てた商人が文句を言ってきたが、気だるげな女性は相手をせずに追い出した。
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