魔女と主婦と沸騰魔石

 とんがり帽子をかぶった女性は気だるげな表情で近所の主婦たちの相手をしていた。

 旦那の愚痴から始まりいろいろな話を聴き流している様子で爪を磨いている女性を気にしたそぶりもなく、主婦たちは騒がしい。


「それで洗濯物を持ってきて、洗っとけっていうのよ。洗い物が終わった後に」

「自分で洗えばいいのにねぇ。今の時期は手が冷たくて仕方ないわ」


 そんな愚痴に反応してとんがり帽子をかぶった女性は顔を上げた。


「それなら、沸騰魔石を買えばいいんじゃないかい?」

「どんな物なの?」


 女性が杖を振ると背後の棚が勝手に開いて、小さな小瓶が出てきた。


「この中に入っている魔石に、水を沸騰させる魔法が付与されていてね。水の中に入れてすぐにお湯ができあがるのさ。ただ、入れっぱなしにしてるといつまでも冷めないから袋か何かに入れて使うといいさ。あとはいい感じに水を混ぜて冷ませば洗濯や料理に使えるって感じさ」


 そこそこの値段がするので、主婦たちは折半して共同で使う事にしたらしい。




 後日、料理をしていた際に、夫と喧嘩した主婦がやけど直しを買いに来た。「沸騰魔石を入れていたのを失念していたよ」と言っていたが口元は笑っていた。

 その話をどこかで聞いたのか、拷問官も買いに来た。

 女性は特に気にせず、沸騰魔石を売った。

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