魔女と子どもとなくならない飴

 物が乱雑に置かれた店内に、箱を漁る女性がいた。とんがり帽子をかぶり、気怠げな様子で色々な物が詰め込まれた箱をガサゴソガサゴソ。

 彼女はしばらくそうしていたが、ふと入り口を見る。

 少ししてから扉が開き、薄汚れた服を着た幼い女の子が姿を見せた。


「ゴミ漁りの子どもが、こんな所に何の用だい?」

「あしたはあめがふるよ。あめもらえる?」

「それが本当なら飴をあげよう。明日、またおいで」


 しばらくして、さっきよりも少し大きな子がやってきた。

 口に何やら棒のような物を咥えている。


「甘くなくなったんだけど」


 彼が口に咥えていた物を出すと、棒のような物の先は小さな鉄球がついていた。


「じゃあ何か情報をよこしなさいな」

「なんか偉そうな人たちが教会に来てたよ」

「そう。それなら二日分くらいさね」

「もっとくれよ!」

「その程度の話、て事さ」


 少年から棒付きの鉄球を預かると女性は部屋の奥に消え、しばらくしてから戻ってきて子どもに返した。

 夕方頃、小さな女の子を連れた男の子がやってきた。


「なくならないあめがあるってホント?」

「ええ、あるわ。お金で払うか、情報で払うか……聞くまでもないわねぇ」

「おかあさんがきょう、おとうさんとけんかしてた」

「うわきしてたんだって」


 女の子の話を捕捉するように、男の子が答える。

 女性は、両親の名前と住まいを聞き、『なくならない飴』と適当に名付けられた商品を渡した。


「三つ気をつける事があるわ。一つ目は、期限を過ぎない事。過ぎたらただの鉄になるから、また何か話をしにきなさいな。二つ目は、舐め過ぎない事。魔力を使って甘味を感じさせてるから、舐めすぎると魔力切れで倒れるわ。三つ目は他の人にあげない事。その人がひどい目に遭うわ。ここで情報を売るか、お金を払えば買えることを伝えなさいな」




 数日後、人相の悪い男がやってきた。

 なくならない飴を舐めたら舌を火傷した、と文句を言っていたが彼女は何も言わずに追い出した。

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