第9話 母への想い
どこかで母を、許しきれない自分がいる。
母を、愛しきれない自分がいる。
母は高齢で、にもかかわらず、随分自分に良くしてくれている。
しかし、私は母を心から愛することが出来ず、実家へ行っても、何となく居心地が悪く、母と外食しても、終わったらそそくさと帰りたくなる。
「そして日々は続く」というエッセイに書いたのだが、私が不安神経症なのも、一流企業に勤められず、職を転々とすることになったのも、家族に金の苦労をさせたのも、人前に出るのが苦手で引っ込み思案なのも、つまり高校退学以降こういう人生を送る羽目になったことを、母はついに一切親の影響を認めず、『あなたが選んだのよ』と言い放った。私はそうだね、と答えた。
辛かった。
でも母も高齢だ。ずっとそういう認識を押し通してきて、今更あとに引くことは絶対ない。私も、勿論今更私の傷を舐めてくれとは母に言うはずもない。
母には色々してあげなければいけないと思う。
親孝行しなきゃいけないと思う。
しかし、それをしてもどこかで、イヤイヤやっている自分がいる。
父とは分かり合えなかったが、母とも分かり合えないまま、たぶん母は逝くだろう。
お父さん、お母さん、もちろんこんな歳になって、あなたたちを恨んでなんかいないからね。
ただ、もう少しだけわかってもらえたら、もっと嬉しかった。あなたたちを心から愛せたと思う。
それだけの、超我がままな、独り言です。
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