第14話 魔人の国の使者
ユークレイスとアクアはシウン大将と共に、人間の国へと向かったのだ。
サイレイ王国の城に到着すると、ブラックからの親書をシウン大将から王に渡してもらい、魔人達は王の元に伺う事ができたのだ。
オウギ王の執務室に立ち入りを許可されると、シウン大将に続き二人の魔人も中に入った。
部屋の中では、オウギ王が先程渡してもらった親書に目を通している最中であった。
「なるほど。
魔人の王は、すでにその黒い影はこの世界にも存在しているのではと懸念しておるのだな・・・」
ユークレイスは一礼すると、今回の黒い影についてと魔人の王であるブラックの考えを伝えたのだ。
オウギ王はとても聡明であり、威厳のある王であった。
しかし気さくな王でもあり、臣下からの意見を重要に考えていたのだ。
その為、薬師の取りまとめのヨクや軍総大将のシウンなどに、国の大事に関わる事は必ず意見を聞いていたのだ。
「シウン、まだあの洞窟を行き来出来る者は限られていたはずだな?」
「はい、仰せの通りです。
城に従事する者と、商人でも国から通行証を発行している限られた者達だけであります。
その者達のここ数ヶ月の行動、安否や体調など、不審な事がなかったか確認を取るようにいたしますか?」
オウギ王の考えがわかっているかのように、シウン大将はテキパキと答えたのだ。
「ああ、そうしてくれ。
早急にな。」
シウン大将は頭を下げると、すぐに執務室を出て仕事に取りかかったのだ。
「お二方、わざわざ来ていただけるとは、大変ありがたい事ですぞ。
この後、薬師の知恵者達と黒い影からの侵食を避けるべく対策を練ってみます。
魔人の王にもよろしくお伝えください。」
オウギ王は対策が決まり次第、魔人の国に知らせを出すとの事であった。
二人は王に挨拶をすると城を出たのだ。
「前も思ったがあの人間の王・・・他の人間と違って威圧感が凄いというか侮れない気がするな・・・」
アクアは疲れたように首を回しながらそう言うと、ユークレイスはあきれたように話した。
「この国の王は昔から聡明な方が多かったのだよ。
だからブラック様も以前から上手く共存をして行こうと思われていた。
シウン殿や舞殿もそうだが、人間の中にも我々が一目置く方もたくさんいる。
ブラック様が以前言った通り、持って生まれた魔人の力に驕る事はあってはならないのだ。
さすがはブラック様はよくわかっていらっしゃるのだ。」
ユークレイスはそう言って、ブラックの事を称賛したのだ。
以前からユークレイスはとてもブラックの事を崇拝しているので、何かにつけてブラックを褒める事にアクアは飽き飽きとしていたのだ。
アクアはまた始まったかと思い、ため息をついた時である。
ユークレイスとアクアは嫌な気配を感じ取り、顔を見合わせたのだ。
それは明らかにあの黒い影の集団の気配だったのだ。
その気配は城に隣接する建物から感じ取れたのだ。
とにかく、ユークレイスとアクアはその建物の中に急いだのだ。
そして、向かう途中でアクアの額にある石が光ったのだ。
「あれ?もしかして舞がいる?
ブラックは何も言ってなかったはずだが・・・」
アクアの額にある綺麗な石と舞のペンダントはブラックが作り出しているので、お互いが近くにあると反応し合うようなのだ。
かつて、アクアがブラックの言う事を聞かず、やりたい放題していた時に、ブラックから額の石をつけられた事で城から出れないように契約させられたのだ。
今はその契約も無いのだが、石はそのまま額に存在しているのだ。
そのおかげで、三人はある意味いつでも繋がっている関係でもあるのだ。
「確かに・・・アクア、気のせいではないな。
嫌な気配のある方に舞殿の気配が感じられるな。」
ユークレイスはそう言って辺りを警戒しながら走ったのだ。
魔人といえども、一度も行った事がない場所は空間把握ができていない為、瞬時に移動は無理なのだ。
「舞はいつも問題の最中にいると思わないかい?
何でだろうな?
まあ、ブラックのペンダントがあるから、問題はないだろうけどな。」
そう言いながら、アクアは久しぶりに舞に会えるのが嬉しかったのだ。
舞がブラックを慕っている事は知っていたが、それでもアクアはまだまだ子供のように舞に会うのが楽しみだったのだ。
もちろん、今は舞よりも背が高い青年の姿では、以前の子供の姿の時と同じように舞にくっつく事は出来ないのはわかっているのだ。
アクアは身体だけでなく、心も少しずつだが成長はしていたのだ。
二人は嫌な気配のある場所をつきとめると、バタンと躊躇なく扉を開けたのだ。
そこには予想通り黒い影の集団が、一人の人間の女性を侵食し存在していた。
そして、その部屋にいる人間達はパニックを起こしている状況だったのだ。
ユークレイスはすぐにその女性と影の集団を結界で隔離させた後、青い目を光らせこの部屋にいる人たち全員に精神操作を施したのだ。
そして、全ての人にその場に静かに止まるように指示をしたのだ。
だが、静かになって誰も動かなくなった部屋に、綺麗な青い光に包まれた者がいたのだ。
魔人の二人以外はその者のみが動く事が出来た訳で、それは予想通り舞であったのだ。
二人の魔人は、やっぱりと顔を見合わせて、顔を緩めたのだ。
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