第13話 黒い影達の意図

 アクアとスピネルは城に戻ると、ブラックのいる王の執務室に急いだ。

 そしてノックもせず扉を勢いよく開けたのだ。


「ブラック、大変だ。」


「ブラック、我々はすごいものを見たぞ。」


 スピネルとアクアは興奮してそれぞれ話し始めた。  


「二人とも落ち着きなさい。

 それに来客中ですよ。」


 ブラックは二人に落ち着くように話した。

 そこには人間の国の軍部総大将であるシウン=ガンが、幹部であるトルマやユークレイスと一緒に話し合っていたのだ。


「これは、お二人ともご無沙汰しております。

 ちょうど、トルマ殿と手合わせをお願いしに来ていたもので。

 今、黒い影の話を魔人の王より伺っていたところです。」


 鋭い目つきで引き締まった身体のシウンは、軍人らしくビシッと敬礼した後、挨拶したのだ。

 人間離れした身体能力や素晴らしい武術の腕を持っており、幹部のトルマと気が合い一緒に訓練などを行なっている仲なのだ。

 

「ああ、ブラック悪かったね。

 シウン殿、久しぶりだね。

 実はその影についてなんだが、僕とアクアであるものを見たんだよ。」


 スピネルは黒い影達が人間へ侵食をしようとしていた事や、砂漠の消えた穴について見たことを話したのだ。

 話を終えると、ブラックが神妙な顔で口を開いたのだ。


「ユークレイス、シウン殿と一緒に人間の王の元に行き詳細を話してきてくれないか?

 そうだ、アクアも今回は行ってきなさい。

 そろそろ遊んでばかりで無く、仕事もちゃんとしてもらいたいからね。」


「え?ユークレイスと一緒なのか?」


 それを聞いたアクアはとても嫌な顔をしたのだが、ユークレイスの冷たい青い目に睨まれると、それ以上不服を申し出る事は出来なかった。

 そしてユークレイスとアクアはシウン大将と共に人間の国に向かったのだ。

             

              ○


              ○


              ○


 

 ブラックは皆に今後の指示をした後、執務室で一人考えていた。


 心配は今後の事だけでは無いのだ。

 スピネルが見た事がすでに行われていたとしたら・・・

 この国でただ黒い影の集団がエネルギーを吸い取るのであれば、すでに何かしらの報告が来ているはずなのだ。

 それが来ていない事を考えると、人間を侵食して操っている可能性があるのだ。

 私は以前操られた、黒翼人の王子であるクロルを思い出したのだ。

 舞の薬で黒い影を追い出す事が出来たが、結局は悲しい結果になったのだ。

 あの時の黒い影の目的は何であったのだろう。

 以前に比べ、黒い影達の知恵が格段に上がっているのか・・・

 もしくは目的を持って指示している者がいるのか・・・

 洞窟を行き来している人間は管理されているとはいえ、少なくは無いのだ。

 そう思うと、すでに人間の世界に入り込んでいてもおかしく無いはず。

 事は急がなくてはならないと思ったのだ。

 

 それに二人が見た砂漠の黒い穴・・・

 もしかすると転移の魔法陣のようなものなのかもしれない。

 だから、すぐに消えてしまったのでは・・・

 森の精霊も、この黒い影達が何処から現れるかはわからないと言っていたはず。

 異世界からの襲撃なのだろうか・・・

 何にせよ、魔人や人間にとって見過ごせない事であるのは確かなのだ。

 

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