第4話  いきつけの飯屋

「ギャハハハハハ!!」

「おい! お前も飲めよ! あん? 禁酒中だって? そんな…」


こらこら。無理やり飲ませるのは良くないぞ… あ、暴力でやめさせなくても…

普段ならうるさいとか思ったりするんだが…

今回ばっかりはここに来て良かったな。 なんだかんだ付き合い長いしな…


「おう! 何しけたつらしてやがんだよ、サム! ‘’英雄様‘’も不調ってか?

珍しいこともあるもんだなぁ!」


こいつのうるささだけは… 我慢ならんな。

見た目は渋いイケオジのくせに喋るとこれだ… まぁ世話になってるしな。


「うるさいぞ、ガルフ。 俺は今傷ついているんだ。 

 黙ってうまい飯を出してくれ。 あれだ、Tボーンレックスとエール。」


「お、おう… お前普通にしてるとほんとにモブだな。

 まぁなんか知らんが俺のうまい飯を食っときゃ

 そんな悩みは…   一口で吹き飛ぶ!! ガハハハハハッ!!!」


「も~ お父さん! サムさんが好きだからっていじめないの!

 傷ついている人には優しくしないとでしょ!!」


「ごめんね…サムさん。 うちのお父さんが迷惑かけちゃって。

 はい、これ。 エールと常連さんにサービスのナッツだよ!」


あぁ、アリアも大きく立派になって… 

ガルフに似なくて良かったな…  長身なのは一緒だが優しい眼だ。

綺麗だがまだどこかあどけなさが残る… まぁまだ子どもだな。


                 ‘’幾次元守護‘


魔法だろうと物理だろうと跳ね返す魔法だ… ガルフのやつは… 強いからいいだろう。王都の治安は良いが、ここは飲み屋だからな…

酔っぱらったやつが何をするかわからん

しかし、俺がこの‘’旺府‘’(オウフー)に初めてきたのは… 

そうか、ガキの頃にガルフに飯を食わせてもらったんだな… 食わせてもらったのか

あの時はまだなんの力もないガキで… 門番になれて本当に良か…


「なんだと! もう一回行ってみろ! 貴様! 

 私たちは正当に依頼をこなしてきた冒険者パーティー‘’緑の使徒‘’だ!

 誰がギルドの男に取り入って…」


「ギャハハハハハ!!! ‘’緑の使徒‘’だってよ! 聞いたことあるかよお前ら

 どこの田舎のパーティーだよ。 聞いたことねえなあ!!

王都の新鋭の俺たち‘’牙狼の月‘’が指導してやるって言ってんのによぉ!!!」


あの獣人… ああ、見たことあるな。

前にワイバーンと討伐したかなんかで凱旋してたやつか…

実力があるのはいいんだが、どうしてこう力を得るとああなる奴らが出てくるのか。


「おい、あの子たちやばくないか。止めた方が…」

「おい! 気持ちはわかるがやめとけよ。 あいつら‘’牙狼の月‘’だろ?

 この間、‘’白金級‘’(プラチナ)になった冒険者パーティーだ」

「白金級⁉ 最高ランクじゃねえか! 弱ったな…」


あいつら… 白金級までいったのか…

黒狼族は身体能力がずば抜けているしな… ガルフは… 

一人ならいけそうだが、さすがに3人いると無理か… どうするか…


「お客さん!!! お店の中でもめ事はやめてください! 飲みすぎです!

 女性の冒険者様も怖がってます!! これ以上暴れるなら…」


アリア… 前までは酔っぱらったただの客ですら苦手だったのに、強くなったな。

だが、あいつら少し飲みすぎだな… 可愛いアリアを怖がらせやがって…


「おうおう、なんだウェイトレスの姉ちゃん。 

俺たちは先輩冒険者としてのイロハを後輩に教えてやろうとしただけでな?

そんな揉めごとって程じゃねえんだ。」


「嘘です! 私聞いてました!! あなたたちが執拗に彼女たちに迫っているの!

 さっきも彼女が嫌だって断ってたじゃないですか!」


いいぞ、アリア。 そいつらに言い返せるならもう怖いものは無いな。

手を貸そうか迷ったが… 大丈夫そうかな。


「すまない。 ウェイトレスの方… だが私たちなら大丈夫…」

「大丈夫じゃない!! 震えてるじゃないですか!!

 お兄さんたち、もうやめてくだ…」


「ああ、もう、騒ぎにしやがって。

 ここの飯はうめえから気に入ってたんだが… 仕方ねエナァァァ!!!」


これは… 駄目だな。 やりすぎだ。 


              ‘’凍える世界‘’


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