第3話 アリスの苦悩
少し… 頭が痛いな… 私は…
「どこだ? ここは? 貴様は… モ…門番の」
あ、危ない… ついモブと呼びそうに… しかし、この魔力量… ありえない。
あの‘’聖域守護‘’を発動しておいて一般人と変わらない魔力量に調整している?
こいつもしかして本当に‘’英雄級‘’なのか…?
恐らく… 私を助けてくれたのだろうが、そもそも飛ばしたのこいつだからな…
私とて‘’白銀級‘’の冒険者だというのに。まだまだ未熟ということか。
だがそれとこれとは話が別だし、なんか悔しいからな…
モブの‘’英雄級‘’か… モブ英雄… モブau モブa …モブAだな。
しかし、こいつ… 何を口を開けて呆けているのやら…
話を聞いているのか?
「おい。きいているのか貴様」
「ここは騎士団の診療所だ。 貴殿が鎧頭熊に襲われていたのでな。
連れて帰ってきたんだ。半日ほど寝ていた」
そうか。 やはりモブAに助けられていたか…
ていうかこいつこんな喋り方なのか? モブの癖に騎士みたいだな。
騎士…! そうだ! 私は王都までの護衛依頼の途中で…
「私はアリス。西の砦からシュタイン商会を護衛していた冒険者だ。
たしか… 城門までたどりついて、その後結界に飛ばされたのだが…」
「シュタイン商会からは依頼達成で良いとの報告を頂いている。
報酬は仲間に渡しているそうだ。 後で受け取ってくれ。
あぁ、そう宿は‘’溜まり湯の宿‘’に滞在しているそうだ。 場所は…」
何だ? あからさまに沈んでいるようだが… 私は何か失礼を…
「そうか。さすが王都の門番だな。ご丁寧にありがとう。
これでも冒険者だ。 宿の場所ぐらい自分で探すさ、慣れているからな。」
助けてもらったのに案内までしてもらう訳にもいくまい。
しかし、あいつらが宿の場所を教えるとはな… 珍しいこともあるものだ…
ん? また沈んだ? そうか、さすがに疲れているか。
不思議と少し名残惜しいが帰るとしよう。
「すまないが、私の大剣を知らないか? 手続きが必用なら…」
えっと… これは声が届いていないな。
「聞いているのか? おい。えっと」
「サムだ」
危なかった… モブAと言いそうに… やはりこういうことは良くないな。
サムか。 ふぅん。サムというのか。
「私の大剣がどこにあるかを聞いていたんだよ。サム」
いきなり名前で呼んでしまったが少し慣れ慣れしかった…
「それなら俺の‘’異空間(スト)収納(レージ)‘’に。 ほら、これだろ?」
……………? ??? ‘’異空間(スト)収納(レージ)‘’??
自覚しているのか?
‘’異空間収納’’(ストレージ)の魔術式は秘匿されているんだぞ??
もしかして見かけがモブなだけで実は高貴な生まれ… 不敬罪… あった気がする…
よし、良くわからないが沈んでいる今のうちに… 逃げよう。
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