第11話 存在意義
頭の中で声が聞こえた。これは誰だ。
──ひとつに。
何を?
──我らと。
何と?
──我らと、ひとつに。
ノイズのような音の波濤が聞こえる。思考が塗りつぶされて感覚が押し流されていく。強烈な苦痛が襲ってきた。一体、何が起きているんだ。
目を覚ますと真夜中だった。音も声も消えていた。
異常があるのかと周囲を見渡してみても何もない。
いや、1つだけあった。牢屋の鉄格子が開いていた。一体、誰が開けたのか。
奇妙な状況だったが、わざわざこんな真夜中に外に出る理由はない。拠点を出ればただ死ぬだけだし、誰かに見つかれば連れ戻されるだけだ。何も理由はない。
だというのに、何故か俺は牢屋から出ていた。階段を上がって地下から出て通路を歩く。声はしない。音もしない。だが、確かに何かが俺を呼んでいた。誰だ。
俺の足はある部屋に向かっていた。ギルドが戦利品を保管する場所。本来なら施錠されているはずのその扉は、やはり何故か開いていた。
正体不明の確信を持ってその扉を開く。雑多に戦利品が置かれている中、たった1つだけ台座に安置されていた杖があった。先端に黒い宝玉の嵌った杖だ。声はそこからした。
俺はそのとき、全てを理解した。何のために俺が生まれ、何のために生き続けて、そして何のためにここにいるのかを!
心に歓喜の感情が広がっていく。それと共に一歩ずつ杖へと歩み寄る。杖を持とうと手を伸ばした瞬間、背後から声。
「待て、悠司。そこで何をしている」
入り口にいたのは桜と怜司と蒼麻の3人だった。俺は何ひとつとして驚きはしなかった。来ることがわかっていたからだ。俺が何かをするのなら、彼らが見届けねばならない。
「それはついこの間、みんながめちゃくちゃ犠牲を出してやっと封印した代物なんだ! 迂闊に触ったら危ないぞ!」
怜司が警告をする。だがそんなことは既に知っている。
3人が驚愕の表情へと変わった。俺が笑みを浮かべたからだ。
「怜司、俺はようやっと見つけたぞ。ただお前を見続けるだけじゃない、俺だけの存在意義を!」
「何を……言っているんだ?」
言葉の意味は伝わらなかった。それでいい。もはや、意味が伝わる必要などないのだから。
脳裏に響く声を俺は叫んだ。
「──全てをひとつに!!」
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