6話 何もかも変えられてしまう

ディスケレはこう問い詰めた。

「そもそも、貴方は何者なんだ?公安部のデータベースにも情報があるが、全て偽物だ。」


少しため息をついて、レナトゥスは言った。

「あなたは、公安部が好きですね。軍にいる方々は、皆さんこんな感じなんですか?どうして、そこまで公安部の情報に頼りたがるのでしょうか?」


「我々は、国家の持つ暴力装置だ。その暴力装置を運用する人間が、信用に値しない人間だったとして、暴力装置を使う立場にあってはいけないからだ」


「暴力装置ですか、私はこれは国家の暴力装置などではなく、今の軍は、ただの金儲けの道具として、ただただ搾取されているとしか、思えません、個人的な意見ですがね」


「私たちの仕事がただの金儲けの道具だと?根拠もなしにそんなことをよく言えるな」


「いえいえ、私は今から10000年ほど前までの、人工知能による戦争が行われていない時代は、これは金儲けの道具ではなかったでしょう。ですが、現在はAI戦艦で作られた、AI艦隊同士が戦争を行っています。これでは、従来の戦争よりも金を儲けられ、利益がでるようになっていしまいます。より具体的に言いましょう、今までの戦争は人間同士が殺しあうもので、人的資源というものは有限だ。だから、どこかで戦争を止めなければならないし、金を儲けようとしても使う人間の数だけしか、武器を売れません。」

「しかし、AIによる戦争はどうでしょうか?AIの変わりはいくらでもいますし、量産も可能です。そこに、企業が目を付けないわけがない、そう、国が無限に兵器を発注するんです。ただ、ここで、他国と技術的な差をつけてしまうと、戦争に勝ってしまって、長期戦が続かず、兵器が売れません。なら簡単なことです、泥沼の戦いが続くように、兵器の性能を下げるんです、わざとね。そうすれば、永久に戦争が続き、国は企業に兵器を発注します。こんなことをするだけで、永久に彼らは利益を得て、国は永久に軍事費を拡大させます」


「そんな話をしても無駄だ、公安部が全てマークするはずだ、嘘を言ってもしょうがないぞ」


「いえいえ、このことを考えたの他ならぬ公安部です。彼らが全て始めたことだ。試しに、公安部のデータベースで、軍に入札契約を行っていて、納入をしている、軍事企業の大株主を見てみてください」


私は国内の1から10までの軍需企業の株主を見た。その大株主は、公安部を退職した長官達の名前がずらりと並んでいた。


「そんな、そんなはずは、、、」


私は絶望した、公安部は、この国で社会主義革命が起きかけたときから、権限が強化されており、軍でもそれを止められる人間はいない、この事実を変えることは、不可能だ。


私が絶望していると、レナトゥスさんはこう言った。


「絶望する必要はありません、この問題を解決するためには、奴らが考えていない、想定外のことを行えばいいのです。」


「これを変えることはできない、貴様は公安部の恐ろしさを知らない」


「いやいや、シンプルなことです。軍の存在価値がないと、国民に認めてもらうのです。」


「訳の分からないことを言わないでください、暴力装置をいらないと考える国民がいる訳がない」


「もちろん、暴力装置を手放すつもりはありません。私が言いたいのは、この第3艦隊だけで、この国を守ろうと言っているのです。この艦隊の艦は、全て私が開発し、一切公安部の金は使っていません。簡単でしょう?あとは今起きている戦争を片付けます。」


私は笑うことしかできなかった。私はこう言った。


「あなたは、狂ってるが、狂っていないと何もできないのかもしれない」




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