5話 欺瞞工作なのか
部屋に入ると、目にゴーグル(人工眼)をつけ、ただただ部屋を機械的に歩き回っている人がいた。20歳の私にとって、初めて会う異常な人物という印象だった。
「ムリフェイン・ディスケレと申します。今回は、第3艦隊の参謀として配属されました。シリウス・レナトゥス大将、いくつか質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
その人物は、突然止まったと思えば、椅子に座って話し始めた。
「あー、すいません。私、軍隊の序列や階級がとても嫌いなもので、階級は呼ばないでもらって結構です。そもそも、軍の正式な学校で育てられていませんし、どうかおご配慮願います。で、質問とは何でしょうか?」
「えー、レナトゥスさん、1つ目です。艦隊の再編から、艦隊の99%が準備されるまでを、公開していましたが、どのような欺瞞工作なのでしょうか?」
「いやいや、あれはすべて事実だ。私は事実を公開し、現実を知ってほしかったんですよ。」
「冗談を言わないでください、艦隊の補助艦艇、主力艦ともに、従来の10倍の航行速度を持っているのは、明らかに嘘(フェイク)です。また、主兵装に、高出力光学兵器を搭載していないなんて、そんな戦艦がどこにあるんでしょうか?」
その男は、笑い出して、こう言った。
「言ってる通りですよ、その航行速度で動けるし、兵装に高出力光学兵器はいらない。もし、この艦隊で戦うことになれば、それを証明しますよ。どんな戦力差でも、従来の艦隊なら、すべて消して見せましょう。」
私は思った、こいつは異常者だ、と。しかし同時に、この男は元帥(アダラ・マギステル)が、採用した異例の人物だ。
「では、2つ目の質問です。あなたは元帥から、どうやって採用されましたか?」
「元帥の会戦は、最適解ではないと主張した。ただ、それだけだよ。」
「そんなべらぼうな嘘を言わないでください。あの会戦は、近年では近年稀に見ない程のAIのシミュレーションとの一致率、99.99%を出したんですよ、それを超える答えなんてある訳がない。」
彼は、また笑ってこう言った。
「AIなんてただの道具だよ、人間が目的を達成するために作った手段に過ぎない。にもかかわらず、最近では道具であるAIをあたかも神のように、そう、絶対的な答えが返ってくると信じているだけさ。最低限、マギステルさんと私の見解はそれで一致している。」
こいつはただの狂った人間だ、そう思った。
「馬鹿なことを言わないでください、AIには歴史が始まって以来、2000年頃に、ボードゲームで負け、それから人間はあらゆる分野で、AIに負けています。」
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