第4話 絵本


君はその名だたるコンテストであれよ、あれよと最終候補になり、世界中に配信され、公開されるオーディションで辛口の審査委員の絶賛を浴び、大賞へと輝いた。


 しかも、審査委員特別賞と次世代大賞の三冠をオーディションが始まって以来、初めて獲得した。


 その審査結果が発表された一秒もなく、ネット上では賞賛の嵐となり、同時に嫉妬も飛び交った。


 しかし、その嫉妬も数秒で立ち消えになり、アンチファンだった人も君の人柄に惚れ込むようなコメントを多く残した。


 


 審査委員の会見で君は好きな童話について語った。


 それはピーターラビットの大型の絵本についてだった。


 別れた父から送られたピータラビットの絵本について君は緊張しながらも会見する姿が、可愛すぎる、と絶賛され、僕もまたネットで生配信を見ていた。


 君が大事に持っていたピータラビットの絵本を僕も見せてもらったことはある。


 


 その絵本はピータラビットたちが住む大きなお家を何と紙で再現し、開けばそのお屋敷が現れるドールハウスのような大きな絵本だった。


 


 子供の頃、僕らは何度もその絵本で日が暮れるまで遊んだ。


 そのエピソードを披露すると、全世代から好感を持たれ、君は十七歳ながらヒット作の漫画の初主演を飾り、その迫力ある演技に僕もまた、圧倒された。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る